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棋士・羽生善治のお母さん ハツさん:3 盤上ではだれにも相談できない

2008年8月19日

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 今年の名人戦は、挑戦者・善治(37)と長年のライバル・森内俊之名人(37)が戦った。善治が勝てば、史上6人目の永世名人有資格者になるという注目の一番だった。

 「天下の一戦」を前に3月末、夫・政治(74)に善治からかかってきた一本の電話が、人生最初の相談だった。

 「ちょっと、田舎に墓参りに行こうかどうか迷っているんだけど、どうかな」

 37年で初めての相談が、墓参りのことである。

    *

 羽生家の墓は、政治の出身地・種子島にある。ハツ(75)を含め、親子3人は鹿児島空港で落ち合い、昼前に種子島に到着。墓に参って親類に会い、午後6時には帰りの飛行機に乗ったという。善治は普段通りで、「時間があるから、宇宙センターに行こう」などと、くつろいだ様子だった。

 善治は、小学6年生で奨励会に入るときも、中学3年でプロになるときも、すべて自分自身で決めてきた。「決めた」というより、迷う必要がないほど圧倒的に強かった。

 ハツにこんな質問をしてみた。

 「善治さんは、人生で迷ったことがないのでしょうか」

 「あの人は、ほんとうに頑固。絶対に迷わない。決めたことはやる。短所があるとすると、親に相談しないこと」

 だからこそ、墓参りの相談に両親は驚いた。相談しても、「行ってくれば」と言われるに決まっているのに。

    *

 ただ、政治はこんなことを言った。

 「善治は一生、誰にも相談できない宿命を背負っているんですよね」

 善治にとって「迷う」とは、縦36センチ、横33センチ、81マスの盤上で、20個の駒をどう動かすか、ということにほかならない。そして、その世界では誰にも相談できない。「人生」なんかで迷ったり相談したりしている場合ではないのである。

 ただ、そんな木の板の世界のすぐ横には、息子を理解し信頼し、判断をいつも尊重してきたハツと政治がいる。

 名人戦という決戦を前に、ちょっとした息抜きとしての現世での「迷い」。そんな墓参り相談だったのかもしれない。(敬称略・石川雅彦)

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