女流棋士・里見香奈のお母さん 治美さん:4
2010年3月30日
中学3年生のとき、出雲市主催の「里見香奈さんを励ます会」で
中学1年生でプロになった香奈(18)は、それなりに騒がれたのですが、実力が評価され始めたのは、2006年、中学3年でレディースオープントーナメントの決勝に進出したときでしょうか。
「中学生の25年ぶり公式戦優勝か」などの話題が先行し、本人も緊張したと思います。三番勝負で、当時の矢内理絵子・女流名人に1勝2敗で敗れましたが、大きな自信になったと思います。
プロになってから、それこそ将棋については私(48)はなにもできません。勝っても負けても鍛えられるわけですから、親に出来るのは万全の体調で対局を迎えさせてやることぐらいです。
香奈は、ほんとうに地元・出雲に育てられていると思います。腕を磨くという意味では、研究会などで男性棋士に直接対局していただける東京か大阪が有利でしょうけど、高校に入るときも迷わず島根県立大社高校を選びました。
香奈は香奈なりに、地方というハンディキャップを克服するため、いろんな工夫をしています。ネット対局をしたり、棋譜データベースを活用したりして、最新情報を追いかけています。高校卒業後も大学には進まず、出雲にいます。
攻めの棋風から、「出雲の稲妻」と呼ばれているようですが、本人は終盤の読み合いにも自信を持っているようです。追いつめられても、時間が迫っても、顔色を変えずに逆転を狙うところは、いかにも勝ち気なあの子らしいです。
そんな彼女だからこそ、のんびりした田んぼがあり、山があり、知人が多い出雲が好きなんでしょう。このあいだも、学校から帰る途中に、応援してくださる近所のおばさんに声をかけられ、お茶をごちそうしてもらったそうです。出雲の雰囲気が、香奈を精神的にリラックスさせていることは間違いありません。
思い返せば、12歳でプロに、16歳で「倉敷藤花」を取り、17歳で女流名人。本人は将来の夢を、「女王、名人、王位、王将、倉敷藤花の5冠を取ること」と言っていますが、私にすれば夢のような話です。これからも緊張する対局がつづくことでしょうから、私の夢は、出雲ののんびりした雰囲気を、家庭内にも漂わせたい。それだけでしょうか。(聞き手・石川雅彦)
◇
次回からは、最年少三つ星シェフの岸田周三さんです。