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横綱・白鵬のおかあさん ウルジーウタス・タミルさん:4

角界揺れる今こそ謙虚に稽古を

2011年3月1日

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 日本に渡って2年半。ある日、ダヴァー(白鵬の幼少期の呼び名)が突然、帰国しました。日本に行くときは身長170センチそこそこだったのに、190センチを超えていたのです。本当に驚きました。

 私(63)は「厳しい稽古で、体も心も満身創痍(そうい)な日々を過ごしているのでは?」と聞いてみました。ところが本人は「なんともない」ときっぱり言うのです。そればかりか、「帰りの切符も取ってある。日本にすぐ戻る」と。

 5歳のころ、人さし指の爪がはがれるけがをし、「もう相撲がとれないよおー!」と泣き叫ぶダヴァーを、「そんなことはない。大丈夫、大丈夫」と抱きながらあやしたことが脳裏をよぎり、正直なところとても寂しかったです。でもそれほど打ち込んでいたのでしょうし、安心もしました。以後、ダヴァーは一生懸命、横綱への階段を上ってきました。

 私と夫のムンフバト(69)は、日本に行く15歳のダヴァーに話したことをよく覚えています。「ファンの気持ちを決して裏切らないよう心がけなさい。成績が良くなって出世しても、決して天狗(てんぐ)になるな」です。最近、ダヴァーと話したが「あの教えはよく覚えている。場所は開催されないが、今まで以上に稽古に励んでいる」と答えてくれました。

 モンゴル馬は機動力はありますが、サラブレッドより小さい種です。ダヴァーは少年のころから乗馬がとても好きだったが、そのダヴァーを乗せられるモンゴル馬はたぶん、もうおりません。ダヴァーも「自分が乗れる馬はなくなってしまった」と悲しんでいましたが、私はそれで良いと思います。ダヴァーは日本の土俵に立っているのですから。

 人生はまさに旅路。日々コツコツと誠心誠意歩み、応援してくれる人の気持ちに感謝をし、傷つけず、健康で、結果、良い仕事を達成してほしい――。すべての力士の親の祈りであり、夢なのです。

 日本の角界はいま大揺れに揺れ、春場所や巡業も中止せざるをえない残念な状況になっています。今こそ力士の皆さんは、郷里の親に別れを告げて土俵を目指した時の気持ちを、振り返ってほしい。

 そしてダヴァーは、横綱として他の力士たちの範となれるよう、謙虚に、本来の明るい性格で、稽古を続けてほしいと心から願っています。

 (聞き手:羽毛田弘志 通訳:蓮見治雄・東京外大名誉教授)

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