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2011年10月16日

吹奏楽

バンドフェス・マーチング

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「黒一点」響きに溶けこむ マーチング四国出場の佐川中

写真:バスドラムを持ち上げて演奏する明神功武君(手前)。約10キロの重さにようやく慣れてきた=佐川町甲の町立佐川中学校拡大バスドラムを持ち上げて演奏する明神功武君(手前)。約10キロの重さにようやく慣れてきた=佐川町甲の町立佐川中学校

 隊列の最後尾でバスドラムをたたく明神功武(いさむ)君(13)は、周囲より頭一つ分以上背が高い。身長179センチと長身のうえ、残りの部員は全員女の子。高知県佐川町立佐川中学の吹奏楽部35人の「黒一点」だ。

 この4月の入学直後、バスケットボール部から勧誘を受けたが、興味が持てなかった。仲のいい同級生が入った卓球部は入部も考えた。でも、小学校で打楽器を演奏したときの楽しさを覚えていた。「今度は自分で曲を演奏できたらかっこいいだろうな」と、吹奏楽部に決めた。

    ♪

 しかし、部が開く歓迎演奏会を見て驚いた。えー? 女子しかいない……。

 一緒に部を見学した男子の同級生もいたが、結局入部したのは明神君だけだった。心細く、自己紹介は緊張して、名前と学年、「頑張ります」と言うのがやっと。続けるべきかどうか迷った。母・夫佐(ふさ)さん(43)に相談したら、「大変かもしれんけど、音楽はみんなで演奏したら楽しいよ。続けるだけのかいがあるよ」と言われ、踏みとどまった。

 休日の練習では、昼に女子が弁当を食べている輪に加わるのが、気まずかった。同級生の東仲南津(なつ)さん(13)は「私たちは気にせずに話しかけていたから、困ったことはなかったんだけど」と言う。3年で部長の徳弘愛未里(えみり)さん(15)は「会話に入れているかな」と心配していた。

 5月中旬、保護者に練習の成果を披露する演奏会があった。当時トランペットだった明神君は、緊張のあまり、うまく音が出せなかった。すらすら演奏する同級生もいるなかで、恥ずかしかった。

    ♪

 6月、顧問の近沢和司先生(42)と2人きりになったときに「続ける自信がないんです」と伝えた。近沢先生はバスドラムへの転向を提案し、「男1人でしんどいのはわかるけんど、夏の吹奏楽コンクールまでやりぬいて、大勢の観客の拍手を経験してほしい。きっとやみつきになるよ」と引き留めた。

 7月末の本番。演奏を終えて立ち上がると、1千人くらいの観客から一斉に割れんばかりの拍手が起きた。感動で先輩たちは泣いていた。明神君は「やめないで良かった」と達成感に包まれた。

 8月から本格的にマーチングの練習を始めた。バスドラムの重みで肩にあざができて痛んだ。一番困ったのはドラムで視線が遮られて、前がよく見えないことだ。後ろへ進んできた同級生の後頭部に約10キロ、直径66センチのドラムを直撃させたこともあった。

 マーチングは一般的に、5メートル8歩を基本として練習する。500センチ÷8、つまり1歩62.5センチだ。校舎の廊下に5メートルごとにテープを張って8歩で歩くことを繰り返す。

 ドラムが邪魔して、歩幅が62.5センチになっているか、自分で確かめられない。毎日、かかとから踏み込んで、間隔を体に覚えさせていった。

    ♪

 吹奏楽部の「黒一点」は学校でも有名だ。同級生からはいまでも冷やかされる。でも野球部の先輩から「よく1人で入ってやっているな」とほめられて、うれしかった。

 最近は弁当の輪に加われるようになった。残る不満は、本番で着る紺色のジャージーがレディースサイズで、くるぶしの上までしかなく、つんつるてんなこと。明神君は「ズボンが少し短くてきつい」と言うが、そこは我慢している。

 バスドラムは基本のリズムをたたく。近沢先生は、「曲全体を支える重要な役だ」と励ます。難しいリズムを成功させてほめられると、明神君は「はい」と返事をしたあとニヤリと笑う。もっとうまくなってやる、と思う。

 「舞台では男1人でも気にならない。しっかりした音を出して、リズムを乱さないようにしたい」(滝沢卓)

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