吹奏楽
2010年10月25日
「吹奏楽の甲子園」とされる東京・普門館で30日に開かれる第58回全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)に、関西代表として豊中市立第十一中学(豊中市西緑丘2丁目)が初出場する。府内の中学が全日本コンに出場するのは5年ぶりの快挙。持ち前のチームワークと練習で培った集中力で、全国の舞台に挑む。
「マーチは表情を忘れんようになー」。16日午後、吹奏楽部顧問の橋本裕行教諭の声が響いた。部員らは真剣にタクトを見つめ、体全体でリズムをとりながら全国大会での課題曲を奏で始めた。
吹奏楽部の全体練習は土曜日のみ。放課後が短い平日は約1時間の自主練習しかできず、橋本教諭は「日本一練習時間の少ない吹奏楽部」と苦笑い。しかし、部長でホルン担当の3年宮本佳美さん(15)は「土曜日の合奏までに完璧(かんぺき)に仕上げようと思って集中して練習する。それで集中力がついた」と胸を張る。
「絶えず笑顔で吹け。表情を付けろ」。橋本教諭がいつも言うせりふだ。リラックスできず緊張して吹いても、いい音が出ないからだ。練習中も冗談が飛び交い、部員らの笑顔は絶えない。
もう一つ、橋本教諭がよく言うのが「音楽でなく芸術をしよう」。芸術は人を感動させないといけないが、そのためにまず自分が感動できる演奏を、と部員に話す。
その成果が8月の関西大会で出た。前の出場校の曲に合わせ、舞台袖で部員らが体でリズムをとり出した。リラックスして臨んだ本番では、多くの部員が感動の涙を流しながらの演奏に。それが観客を魅了し、全国出場につながった。本番中に泣いた宮本さんは「自分が感動すれば人も感動する、と思った」と振り返る。
府内の中学校が同コンクールに出場するのは2005年の市岡中(大阪市港区)以来5年ぶりで、大阪市以外の中学としては史上2校目だ。
全国大会に向けて保護者も動いた。募金を集め、古くて傷だらけだったテューバを新調。副部長でテューバ担当の3年金森晏子さん(15)は「こんなにきれいなんだとびっくりした。新しいのは吹きやすい。買おうと思ってくれたことがうれしくて、その分頑張らないと」と話す。
副部長でクラリネット担当の3年野田佳織さん(15)は「みんながいたからつらいことも乗り越えられた。全国では、心の底から楽しかったという達成感を持ちたいし、人を感動させるような演奏がしたい」と意気込む。(柳谷政人)