吹奏楽
2011年9月9日
東京都杉並区の住宅街の一角にそびえ立つ普門館(ふもんかん)。宗教法人・立正佼成会の施設だが、全国の中学・高校の吹奏楽部員にとってもここは「聖地」。毎年秋開かれる「全日本吹奏楽コンクール」の全国大会会場だからだ。
約1万団体の約40万人が参加し、全国大会に進めるのは中高各29校だけ。夏の甲子園を上回る難関だ。普門館では1972年に初めて開催。77年から工事の年以外は毎年開かれてきた。
なぜここが全国大会会場として定着したのか。それはひとえに規模の大きさゆえだ。
ホールは最大5082人収容でき、東京国際フォーラムと並び国内最大級。舞台幅は34メートルあり、舞台上に大型バスが3台並ぶ広さ。駐車場も大型バス45台を収容できる。
全国大会は中学、高校の各部をそれぞれ1日がかりで開く。演奏と入退場を含め1団体15分ずつで、数十人が楽器を持って次々と入れ替わる。
普門館が完成した70年は高度成長期で、吹奏楽人口も激増した。全国から千人規模で集まる吹奏楽部員を一度に収容する広さを持ち、部員や楽器を乗せて来た大型バスを受け入れる駐車場も備える会場は全国でも数少ないといい、「他のホールでの開催はちょっと難しい」と全日本吹奏楽連盟の川田正直事務局長。
出演者の顔が映えるように舞台の床は黒いリノリウム製。2007、08年には床材の黒い小片を記念品として配った。08年の全国大会で金賞に輝いた千葉県習志野市立習志野高の元部長、今西耕平さん(21)も受け取り「甲子園の砂みたいで感激しました」。演奏曲の楽譜とともに、自宅で大事に飾っている。
巨大なうえ音楽専用ホールでないため「音が散ってまとまらない」という評もある一方、「そこも魅力」というファンも多い。普門館を本拠とする「東京佼成ウインドオーケストラ」の小野寺龍一さんは「演奏技術が向上し、各団体とも迫力の音を響かせますね」。岡原良之団長は「子どもたちの夢と希望の場として、その名の通り普(あまね)く門を開く場でありたい」。
全国大会は中学が10月22日、高校が23日。入場券は大変な人気だ。(加賀直樹)
普門館 「普門」は「全ての人に門を開く」という意味で、輪を重ねたような建物デザインは「仏教の教えに基づく」という。1970年のこけら落とし公演は美空ひばりらが舞台に立った。カラヤン指揮のベルリン・フィル公演など大規模な演奏会も開かれた。