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シューカツ2010

〈採用を聞く:1 広瀬道貞・民放連会長〉キー局早期選考、学生も利点

2010年5月6日

写真インタビューに答える日本民間放送連盟会長の広瀬道貞さん=東京都千代田区紀尾井町、林正樹撮影

 採用活動の早期化、長期化で「学業の妨げになっている」といわれる大学生の就職活動。学生は長い就活に疲れ、教員は「勉強に専念できない」と不満を漏らす。現状をどうとらえているのか。適正な採用活動とは何なのか。企業や大学、行政などのトップ、就活を控えた学生らに、それぞれの立場の考えを聞いた。1回目は、「もっとも早く採用活動をスタートさせる業界の一つ」と言われるテレビ業界から。広瀬道貞・日本民間放送連盟会長(テレビ朝日顧問)に聞いた。

    ◇

 ――テレビの在京キー局は、採用時期がとりわけ早いとされます。なぜでしょうか。

 キー局は、アナウンサーは大学3年生の12月ごろ、そのほか記者職種なども3年生の2、3月には試験をします。

 アナウンサー志望の学生の場合、まずキー局を受け、次に大阪、名古屋などの準キー局、最後に地方局を受けるという「流れ」が定着している。キー局が先に採用試験を実施することで学生は複数の企業に挑戦しやすくなっています。

 アナウンサー以外の職種についても、2、3月に採用試験をすれば、大学は春休みなので授業の妨げにはならない。新年度の授業開始後よりもむしろ受けやすく、4年生も卒業前に再挑戦できる時期でもある。テレビ朝日でも、4年生で再受験し内定を得る学生が一定数います。

 ――早くしないと「いい人材」を他の企業にとられる、という意識はありますか。

 全くないとは言えないが、どの学生が「いい人材」かなんて何度面接してもなかなか分かりません。だから、「いい人材」を早くとれるというより、早く内定が決まれば、学生が残りの学生生活を有効に過ごせるメリットの方が大きいと思う。また、なかには自分の適性がよく分からないまま面接に臨む学生もいる。そういう学生には、面接する側がしっかりと緊張感をもって臨むことで、早い段階で向き、不向きを分からせてあげられる機会になると思います。

 ――各キー局も加盟する日本経済団体連合会は、加盟企業に「卒業学年に達しない学生への選考活動を慎む」よう倫理憲章で定めています。

 4年生の4月に、すべての業界が一斉に動き出したら、大変なことになる。複数の業種を受けたい学生も多く、時期が重なれば、挑戦する機会が減ってしまいます。

 テレビ局は公共性の高い企業であり、倫理憲章は最大限守るべき立場にある。それを順守していないことは十分考えるべきだが、繰り返しますが2、3月なら授業への影響は小さい。ということは、「倫理憲章の精神を尊重している」とも言えるのではないでしょうか。

 また、専門性がある多様な人材が必要になっている中、採用方法や時期についても多様に展開する必要があります。

 企業は一昔前は、これといった専門性がなくても名の知れた大学を出ていて、「やる気と根性がある」人材を一気に採用した。しかし、かつては華々しく見えた業種も、その後の低迷ぶりを見れば、必要な人材がとれていなかったのは明らかです。

 今は、企業も、ある程度専門性のある人材をとりたいし、学生も専門性を身につけ、それを生かせるところに行きたい。つまり、決まった時期に新卒をまとめて採用するやり方は通用しなくなっており、倫理憲章の紙1枚ですむ話ではありません。一律に、同じように実施する採用は卒業しなければならない。

 ――しかし、大学側は、専門分野の勉強に本格的に取り組む時期と就活が重なり、専門性が身につかないという不満があるようです。

 大学が、学生に専門性がしっかりと身につく教育をしているのなら、企業側もそういう人材をとりたい。でも、それができていないから、「3年生で採っても4年生で採っても変わりない」と見なされているのではないでしょうか。

 今の日本の大学は、企業が求める人材、国際社会で諸外国と伍(ご)していくために必要な人材を育てる場所になりきれていないと考えています。

 それならばむしろ、4年生になる時には、すでに就職先を決めて、学生最後の年は、各自が自分の進む道に必要な知識や経験を蓄える時期にした方がいい。漠然と勉強するよりも、何を習得すべきかを明確に理解して1年を過ごす意義は大きいと思います。(聞き手・三島あずさ)

    *

 広瀬道貞・日本民間放送連盟(民放連)会長 朝日新聞社専務、テレビ朝日社長、同会長などを経て、2006年から現職。75歳。

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