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全入時代

母校が消える 学校法人、相次ぐ破綻

2007年05月07日

 「全入時代」の生き残り策として統合・合併にこぎつけられる大学はごく一部。大半の大学にとって、より直面する恐れがあるのは「破綻(はたん)」だ。少子化で受験生が減っているにもかかわらず、4年制大学は短大からのくら替えもあって増え続けてきた。学校法人の倒産、新入生の募集停止・廃校がもたらす混乱は小さくない。

写真卒業式に向かう教え子にビラを配る元教授ら=3月17日、福岡市南区の東和大前で

 キャンパスは閑散としていた。昨年8月に07年度以降は学生を募集しないと発表してから8カ月、東和大(福岡市南区)に入学式のはなやぎはなかった。

 工学部だけの単科大として67年に開校した。運営する学校法人「福田学園」(福岡市)によると05年度に赤字に転落し、06年度は初の定員割れに。昨年末、在校生が卒業する09年度末にも廃校する方針を決めた。

 3月に卒業した男子学生(22)は募集停止をインターネットで知った。大学からの説明は、授業の際にもらった紙一枚だけだった。

 教員が次々と解雇され、残った教員が専門外の授業まで教えた。指導教授がいなくなり、実験室の機材の使い方もわからなくなった。仲間と一緒に街頭で1万人を超える署名を集めて文部科学省に持っていった。

 今月、4年生になった別の男子学生(21)も「まともな授業を受けられない。2、3年時なら別の大学に編入させてほしいと泣きついたけれど……」。

 学園側は「存続に向けて文系学部の新設など学部改編を試みたが、教授会が反発した」と説明する。これまでに半分近い21人の教員を解雇した。うち教授ら13人が学園を相手どって解雇無効を求める仮処分を申請し、「学園の資金は豊富で、実際は赤字ではない」と反論している。

 昨年10月に解雇された元教授(53)は3月中旬の卒業式当日、解雇撤回を求めるビラを配った。受け持っていた4年生の卒業研究は頓挫しかけたが、自宅に学生を呼んで深夜まで指導し、何とか卒業させた。

 「大学は卒業生の再教育の機関でもある。母校が無くなったら、卒業生はつっかえ棒がなくなったような気分にならないだろうか」

●定員割れ、険しい再建の道

 再建を目指す大学も、道のりは険しい。

 山陰地方初の4年制私大として99年に国際情報学部を設けた萩国際大(山口県萩市)は、交通の便の悪さもあり、初年度から入学者が定員300人の7割と苦戦した。05年度には42人に落ち込み、同年6月に民事再生法の適用を申請した。

 建設関連の塩見ホールディングス(塩見HD、広島市)をスポンサーに今年4月「山口福祉文化大」として再出発。が、新設したライフデザイン学部の入学者はわずか24人で、定員140人の2割足らずだった。

 塩見HD出身の村本章治理事長はこの1年、約100の高校を回った。萩国際大は、不祥事ではなく定員割れに伴う経営難で破綻しただけに、自然とその話になる。「ゼロどころかマイナスからのスタートでした」

 山口福祉文化大は、校名通り福祉系の教育に力を入れる。子ども生活学など4コースがあるライフデザイン学部は、社会福祉士を含めて二つ以上の資格の取得を支援する。東京・目黒のスタジオと回線で結び、在京の有名な教授らの講義を萩で受けられる。

 うれしい話もある。地元のある高校で、過去4年は多くて年2人止まりだった同大への進学者が今春は3人になった。進路指導の担当者は資格取得に熱心な点をあげて「資格が取れるなら、経済的な理由から地元大へ、となる」と話す。

◆学生数確保が生き残り左右

 「危ない大学」はどれほどあるのか。

 大学の経営状況を示す代表的な指標は「帰属収支差額比率」だ。収入総額に対する収支差の比率を示す。

 日本私立学校振興・共済事業団(東京)によると、私立大学を運営する504法人のうち、05年度に収支比率が0%以下だったのは138法人(27.4%)。00年度は435法人中69法人(15.9%)で、赤字法人の増え方は急だ。

 事業団は、私立学校の経営状況を悪化の度合いによって「イエローゾーン」と「レッドゾーン」に分ける指標作りを進める。西井泰彦・事業団私学経営相談センター長は「大学のスリム化のほか、とにかく学生を確保することだ」と強調。格付投資情報センター(東京)の下山直人・シニアアナリストも「私立では収入の7〜8割が(授業料や入学金などの)学費収入。格付けで最も重視するのも学生の募集力」と話す。

 大学を受験する18歳人口は、今後10年ほどは120万人前後で比較的安定するが、その後再び本格的に減る見込みだ。「大陸棚の先は海溝」。関係者の間ではこうささやかれている。

■最近の主な大学「破綻」例

1 破綻した大学・短大名(かっこ内は運営法人と所在地)

2 破綻の形態と時期

3 破綻の理由

4 破綻後の対応

1 立志舘大(広島女子商学園、広島県坂町)

2 学生募集停止。04年1月廃校

3 入学者数の低迷

4 約5億円の負債を大学の土地・建物の売却で返済

1 東北文化学園大(東北文化学園大学、仙台市)

2 民事再生法申請。04年6月

3 虚偽申請による大学開設認可が発覚

4 私大や病院を経営する企業がスポンサーになり、再生に着手。

1 萩国際大(萩学園、山口県萩市)

2 民事再生法申請。05年6月

3 定員割れ

4 建設コンサルタント会社がスポンサーに。学校名を変えて今年4月に再出発

1 小樽短大(小樽昭和学園、北海道小樽市)

2 民事再生法申請。06年8月 

3 入学者数の減少

4 予備校運営企業が法人を支援。短大は08年3月に閉校予定

1 東和大(福田学園、福岡市)

2 学生募集停止。10年3月に廃校予定

3 定員割れ

4 教員の半数近くを解雇。集中講義などでやり繰り

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(注)学校法人の民事再生法申請や4年制大学の廃校のケース。法人名など名称は破綻当時

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