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全入時代

現場派の教員養成中 ネットで体験共有/模擬学校/専門学部

2007年09月18日

 「現場」に強い教員を養成しようと、大学で様々な取り組みが広がっている。学生が小学校を訪ねた際の体験を広く共有できるシステムを整えたり、学生自身に「学校」を運営させる仕掛けを施したり。「学校教師学部」と銘打ち、教員養成だけに的を絞った学部の設置を目指す動きも出始めた。

◆「掲示板」に悩みや助言 静岡大

 「子どもと接する時は『先生』の立場でないといけないのに、今日は『遊んでくれるお兄さん』になってしまっていた」(06年10月12日、1年男子)

 「(児童が)どこまで迷惑をかけたら注意する、というタイミングと見通しを持つことが大切だと思った」(同26日、3年女子)

 静岡大教育学部(静岡市駿河区)では、学生が小学校訪問時の体験をネット上の掲示板に書き込んでおり、パソコンにパスワードを入力すればアクセスできる。以前は記録を担当教授に提出していたが、「感想などを気軽に見せ合えるようにする」(菅野文彦教授)狙いで、05年度からネット掲示板を使い始めた。

 訪問活動では、教育実践学教室の学生を中心に40人弱が数カ月間、週1回のペースで学校に赴き、授業の補助やテストの採点をしたり、児童と遊んだりしている。ネット上の活動記録のコーナーには、その際の子どもの様子や反省点などが詳しく書き込まれている。

 他の学生へのアドバイスも書き込める。定期的に開く「振り返りの会」で、書き込みをもとに議論している。4年生の芳賀まゆきさんは「子どものけんかといった事態にどう対応したかは、人によって異なる。色々な対応を知ることができ、改善につながった」と話す。

 取り組みは、文科省が今年度から始めた「教員養成改革モデル事業」に選ばれた。教育実習の改善・充実につながると評価されたからだ。予算が増えたため、参加する学生や訪問先の学校を増やしていく。訪問先にパソコンを置き、いつでも悩みを書き込んだり助言をしてもらったりできるようにする計画だ。

 システム構築などを担当した同学部の益川弘如・情報教育講座准教授は「書き込みをするのは大変だが、それ以上の何かが得られるはず。お互いを高め合う文化をつくってほしい」。菅野教授も「(体験の共有で)新任時から『引き出し』が多い状態で教壇に立てる」と期待する。

◆学生が「学校」運営参加 琉球大

 琉球大教育学部(沖縄県西原町)は、この秋に「プラクティススクール事業」を始めようと準備中だ。

 大学などに「模擬学校」を設け、周辺の小中学校の児童生徒に「入学」してもらうという取り組み。(1)自然体験・運動(2)食(3)自治体を紹介するパンフレット作り(4)国語・算数、をテーマに四つの学校を開く計画だ。

 食の学校では、大学近くの施設を使い、児童にピーナツが材料のジーマミ豆腐作りなどを教える。各学校は4年生を中心とする学生が自ら運営し、土曜などを利用して今年末までに8回前後開く。

 7月下旬に学生向けの説明会を開いた。パンフ作成に6人、それ以外には十数人の学生が参加する予定。小中学生への「入学」呼びかけも始まった。

 学生が先生を務めるだけでなく、学校全体を運営する点がポイントだ。小林稔・教育実践総合センター准教授は「企画・広報のやり方も学生に考えさせたい。これからの教員には、そうした営業的な資質や交渉力も求められる」と狙いを語る。

 中央教育審議会は昨年の答申で「教員に必要な資質と能力の最終的な形成と確認」のため、教職課程に「教職実践演習(仮称)」を必修科目として新設する必要があると提言。琉球大の試みはこの「演習」の試行が狙いで、文科省のモデル事業に採択された。

 「演習」は、学生が教員にふさわしいかどうかを最終的に見極める場にも想定されている。小林准教授は「コミュニケーション力も含めた総合的な力量が備わっているか、最終段階で確認できるシステムにしたい」と話す。

◆学校教師学部を申請 秀明大

 「学校教師学部」――こんな名称の学部の新設を目指しているのが秀明大(千葉県八千代市)。全学生が教員を目指すことをうたった学部で、08年4月の開設に向けて文科省に認可を申請中だ。

 学部の定員は250人で、全寮制。寮生活を通じて対人能力や協調性などを養ってもらう。一方で、1年次から学校現場での実習を行う。同大を運営する秀明学園が設置した中学、高校が実習の受け入れ先となるほか、周辺自治体の協力も仰ぐ予定だ。

 「教育コミュニケーション論」で保護者への対応の仕方を教えるなど、実践的な講義も充実させる。秀明学園の川島幸希理事長は「人物面でも指導面でも即戦力の教師を養成したい。生徒が『あの先生に出会えて良かった』と思えるような教師が目標です」と意気込む。

 〈06年7月の中央教育審議会の答申〉 題は「今後の教員養成・免許制度の在り方について」。教員への信頼を確立する方法として(1)教職課程の質的水準の向上(2)「教職大学院」の創設(3)教員免許更新制の導入、などを挙げた。

 (1)では「教職実践演習(仮称)」の新設・必修化、教育実習の改善・充実、「教職指導」の充実などが必要と指摘した。(2)は来春、各地の大学で誕生する。(3)も09年度からの実施が決まった。

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