秋田杉を使った図書館で勉強する国際教養大学の学生=9日午後、秋田市
24時間利用できるラウンジは、いつも勉強したりおしゃべりしたりする学生たちの姿がある=東京都小平市の嘉悦大
時間を気にせず、たくさんの書物、文献を周りに置き、大学で研究や勉強に没頭したい。一部の大学院生や4年生は研究室に泊まり込みも可能だろうが、ほとんどの学生は、こんな環境にない。学生たちのやる気と希望に応え、大学が自習室や図書館を24時間開放する動きが広がってきた。(葉山梢)
■国際教養大学
秋田市郊外にある公立国際教養大学(654人)に今年4月、図書館がオープンした。秋田杉をふんだんに使った傘型の屋根が印象的だが、もう一つ特徴がある。365日24時間、学生に開放されていることだ。
この大学の授業は、すべて英語で行われる。相当な自習をしないと授業についていけない。そのため、図書館でも毎日、午前零時で20〜30人、明け方でも数人の学生が勉強している。勝又美智雄館長は「他の学生が勉強に励む姿を見て、自分も頑張ろうという気持ちになる相乗効果があるようだ」と話す。図書館と校舎、学生寮が渡り廊下でつながっているため、外に出ずに行き来できる。
大学は04年の開学当時から、図書館の24時間開館にこだわってきた。初めは、深夜の利用者がどの程度か見当がつかなかったため、午前7時〜同8時半をのぞき、ほぼ終日、職員を置いて対応していた。
しかし、職員が必要な場面は午前1時を過ぎるとほとんどなかったため、昨年から午前0時までの勤務とした。そのかわり、午後10時から警備員が常駐し、学生や教職員もIDカードがないと入館できない。本や、学生の私物がなくなるなどのトラブルはほとんどないという。
■京都大・会津大
「学生に、できるだけ勉強・研究の場を提供したい」という思いは、どの大学も共通だ。一方で、多くの人が出入りするキャンパス内にある図書館を24時間開館するのは盗難や不審者の侵入などの不安がある。
そこで折衷案として、図書館内の自習室だけを24時間開放することにしたのが京都大学だ。開館時間は午前9時〜午後10時。時間延長の要望が多かったため、来年1月に図書館の玄関脇に新設する自習室を24時間使えるようにする。約90席で、飲食できるコーナーも併設する予定だ。
コンピューターを専門的に学ぶ公立会津大(福島県会津若松市)は、パソコンより高性能の「ワークステーション」を計90台置いたコンピューター演習室とハードウエア実験室を24時間自由に使えるのが売りだ。他の部屋も事前に申し出れば使用可能という。演習室がある建物にはIDカードがないと入れないようになっている。
■ラウンジ・学食 サークル活動も宿泊もOK 嘉悦大
嘉悦大学(東京都小平市)は、「24時間キャンパス」と呼ばれる取り組みを今年5月から始めた。当日午後9時までに守衛に届け出れば、ラウンジと学食スペースを24時間利用できる。
昨年改装したラウンジは、据え付けのパソコンのほか、無線LANで自分のパソコンもネットにつなげる。テレビのある「茶の間」のような小上がりや、寝転がったり飲食したりできるコーナーもある。
勉強だけでなく、サークル活動にも利用できる。泊まってもいい。夜の警備員の数を3倍に増やしたため、学内には当初、費用面から反対する意見もあった。しかし、学生たちには好評で、1日平均20人ほどが深夜も残っているという。
同大の学園祭は11月にある。実行委員の経営経済学部3年の松沢幸絵さんは「昨年までは学園祭の準備があっても夜9時には帰らなければならなかった。時間を気にせず活動できるようになって、みんなと、いろいろな話をする余裕ができた」と話す。
同学部1年の早川達也さんは月10回利用することもあるという常連。「宅地建物取引主任者の資格を取るための勉強をしたり、野球部の仲間と話し合ったり。家(横浜市)が遠いので、泊まれるのが助かる」という。
4月に就任した加藤寛学長は「大学は、研究室や教室の光がいつもともっていて、学問の追究が昼夜を問わないことを示す場である」というのが持論だ。慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の初代総合政策学部長時代、95年から学長を務めた千葉商科大学でも「24時間キャンパス」を実施してきた。
加藤さんによると、SFCでは学生が飲酒するなどの問題もあったが、学生たちが自ら倫理委員会を立ち上げ、見回りをするようになった。深夜の食事を確保するため、コンビニ誘致に奮闘する学生も現れたという。加藤さんは「学生が『キャンパスは自分の寝床だ』と思うようになれば、自分で考え、居心地がよくなるよう工夫するようになる」と効果を語る。
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