話題のモンテッソーリって、どんな教育?

2019.03.25

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斉藤 純江
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将棋の藤井聡太七段(16)や、英国のウィリアム王子の長男・ジョージ王子が幼稚園で受けたことでも注目されるモンテッソーリ教育。日本でも、実践する幼稚園や保育園などが全国にあります。どんな教育なのでしょうか。教師養成も手がける日本モンテッソーリ教育綜合研究所の付属教育施設「子どもの家」(東京都大田区)で、実際の活動を見せてもらいました。

目次

モンテッソーリってこんな教育

モンテッソーリ教育の現場「子どもの家」

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教具を使って「お仕事」に取り組む子どもたち=東京都大田区の日本モンテッソーリ教育綜合研究所付属「子どもの家」

ビルの1フロアに入る子どもの家を平日の午前中に訪れると、2~6歳の約30人が、思い思いの教具を使って「お仕事」と呼ばれる活動に取り組んでいた。五角形や六角形のピースをはめ込むパズルに挑戦する子、ひらがなの木片を組み合わせて単語を作る子、本物の針と糸を使ってフェルトにボタン付けをする子、大きさが少しずつ違う10個の立方体を使ってタワーを作る子……。子どもたちは棚に並んだ教具の中から、自分のやりたいものを自由に選ぶ。1人で取り組んでも、友だちと一緒でもいい。4人の先生が子どもたちの中に入り、教具の使い方の手本を見せたり、言葉をかけたりしていた。

モンテッソーリ教育とは

モンテッソーリ教育はイタリアの医師、マリア・モンテッソーリが、1900年代初めごろに確立した教育法。子どもには生まれつき自分自身を成長させる力が備わっており、大人の役目は子どもの興味や発達段階を正しく理解し、力を引き出せるような環境を整えること、というのが基本的な考え方だ。同研究所によると、現在、140カ国以上で実践されている。日本では義務教育にモンテッソーリ教育を採り入れるのが難しいため、乳幼児期向けの教育と思われがちだが、外国では小学校から大学まで採用しているところもあるという。

敏感期

モンテッソーリ教育では、幼少期に一定のことに対して感受性が特に敏感になる「敏感期 」をとらえ、子どもの成長につなげていく。例えば、いつもの順番通りでなければ嫌がるなど、慣れた秩序や場所、所有物などにこだわる「秩序の敏感期」は、6カ月から3歳ごろに強く表れる。敏感期が訪れると、子どもは興味を持ったことに対して優れた集中力を発揮し、繰り返し経験することで、大きく成長していくという。

【敏感期の種類と時期】

①言語の敏感期
 ・話しことばの敏感期:7カ月の胎児期~3歳前後
 ・文字に対する敏感期:3歳半~5歳半
②秩序の敏感期:6カ月~3歳前後
③感覚の敏感期
 ・感覚印象の探求、ため込み:0~3歳
 ・感覚印象の整理、分類、秩序化:3~6歳
④運動の敏感期
 ・運動機能の発達:0~3歳
 ・洗練、調整された運動:3~6歳
⑤数の敏感期:4~5歳
⑥文化の敏感期:6~9歳
※敏感期には個人差がある。また、研究者によって敏感期の種類や時期のとらえ方に幅がある。
(日本モンテッソーリ教育綜合研究所による)

モンテッソーリの五つの教育分野と「お仕事」

モンテッソーリ教育は、独特の教具を使った「お仕事」と呼ばれる活動が特徴の一つだ。成長の過程に応じた教育環境の柱があり、3歳から6歳までの時期は、「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「算数教育」「文化教育」の五つの分野と、それぞれのお仕事がある。

(1)日常生活の練習
 包丁を使ってキュウリを切る、針と糸でボタンをつける、マッチを擦る、箸を使って小さな玉を容器から別の容器へ移していく、などのお仕事がある。大人のすることを何でもまねしたい「模倣期」と「運動の敏感期」をとらえ、生活の中で使う動きを獲得していく。日常生活の練習は、すべての分野の土台になる。

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本物の針と糸を使ってフェルトにボタン付けをする子どもたち
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マッチを擦る練習をする子=いずれも東京都大田区の日本モンテッソーリ教育綜合研究所付属「子どもの家」

(2)感覚教育
 「感覚の敏感期」を利用して、視覚や聴覚、嗅覚(きゅうかく)などの感覚器官を意識的に使う練習をする。代表的な教具「円柱さし」は、木製のブロックにつまみのついた、直径や高さが違う10本の円柱が順番に並ぶ。円柱を大きさに合った穴にはめ込んだり、並び替えたりすることで、大きさの変化を理解する。教具を目で見て、持って、大きさや重さを体験することが、算数教育の理解につながるという。  ほかに、大きさが少しずつ違う10個の立方体を使って量の違いを経験する「ピンクタワー」や、音の違う複数のベルをたたいて同じ音を探したり、音階に並べたりする「音感ベル」などがある。感覚器官を洗練させることが、言語や算数など知的教育分野の能力の獲得につながっていく。

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ピンクタワーに挑戦する子どもたち
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音感ベルを鳴らす子=いずれも東京都大田区の日本モンテッソーリ教育綜合研究所付属「子どもの家」

(3)言語教育
言語教育では、最初のうちは文字の部分に触るとザラザラしている「砂文字板」を指でなぞったり、ひらがななどが書かれた文字カードを組み合わせて単語を作ったりしながら文字に親しむ。発達段階に応じて文字を書いたり、読んだりしながら、最終的には文法を理解するための「お仕事」にも取り組む。

(4)算数教育
 算数教育は、数量が具体的にわかり、手で扱えるような教具から始める。「錘形棒(すいけいぼう)」は、手でつかめる大きさの棒を輪ゴムでくくり、くくった棒の数と同じ数字(0~9まで)の書かれた箱に入れながら、数量の概念の理解を促す。金ビーズの教具は、1、10、100、1000の量を表す金ビーズを使って、量を実感しながら10進法を理解する。算数教育は、具体物から導入し、物量と数字を一致させながら、最終的には頭の中だけで数を操作する教具などを使い、抽象的な理解へと導いていく。

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金ビーズを使って4桁の引き算に挑戦する子どもたち=東京都大田区の日本モンテッソーリ教育綜合研究所付属「子どもの家」
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錘形棒と箱
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埋め込み暗算板

(5)文化教育
 文化教育では、世界各国の国旗や地図パズル、時計などを使って、幅広い分野の子どもの興味に応えていく。

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地図パズル

縦割りクラス

「子どもの家」では、2~6歳の子が同じクラスで生活する。この縦割りクラスもモンテッソーリ教育の特徴だ。大きい子は小さい子の世話をしたり、慈しんだりすることを経験し、小さい子は大きい子の活動を見てあこがれを持つことができる。

モンテッソーリ教育を受けるには

施設ごとに違う採り入れ方

モンテッソーリ教育を実践している幼稚園や保育園などの施設は、日本モンテッソーリ教育綜合研究所が把握しているだけで全国に100カ所以上あるが、正確な数はわからないという。少人数の教室を個人で開いている場合もある。モンテッソーリ教育を掲げていても、採り入れ方の度合いは施設によって違いがあるので、「子どもの家」副園長で研究所の教師養成センター講師も務める櫻井美砂さんは「子どもを通わせる場合は、実際に見学するなどして、信頼できる施設を選ぶことが大切」と話す。

誰でも受けられるモンテッソーリ教育の研修

研究所の教師養成センターでは、通信教育講座や独自の資格試験を実施している。藤井聡太七段がモンテッソーリ教育を受けていたことが話題になってからは、講座の受講希望者が増え、定員がいっぱいになる時期が早まったという。講座は誰でも受講可能で、以前は幼稚園や保育園の先生がほとんどだったが、最近は子どもの親や祖父母、学生なども受講している。

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