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海外留学する学生数1位の関西外大 手厚すぎる奨学金の中身とは

2019.04.15

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西島 博之
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近年、学生に海外留学を積極的に勧める大学が増えている。語学習得だけでなく、学びたいテーマを見つけてほしい、将来の道を模索してほしい、といった目的がある。海外への留学者数で全国ナンバー1を誇るのが、関西外国語大学(大阪府枚方市)だ。

留学先の生活費も面倒をみる手厚さ

海外留学する学生が多い関西外国語大学。「留学生派遣数」ランキングでは、全国の大学でトップを占める(朝日新聞出版「大学ランキング」調べ)。

関西外大は、開学5年後の1971年、米アーカンソー大学との交換留学制度を開始した。その後各国に協定校を増やし、世界55カ国・地域386大学とのネットワークを持つ(2019年3月末現在)。欧米だけでなく、アジア、アフリカ、南アメリカなどにも協定大学があり、留学先の選択肢は多い。

留学形態も多彩だ。海外の大学で1年間専門・教養科目を学ぶ「リベラルアーツ留学」、1年ずつ二つの国で学ぶ「2カ国留学」、短期間の「語学留学」など、希望に応じて選択できる。

最大の特色は支援の手厚さにある。一定の成績条件をクリアした人に認められる「フルスカラシップ」は、留学先の授業料だけでなく、住居費、食費まで関西外大が面倒を見る。たとえばフルスカラシップを受けて米ニューヨーク州立大学オルバニー校に留学した場合、関西外大の授業料とその他納付金約115万円を納めれば、年間約413万円(1ドル=110円で換算)が免除もしくは支給される計算だ。

「現在約250人の学生が受給しています。枠数に上限を設けていないため、選考試験や資格審査といった基準を満たせば、理論上、希望者全員がフルスカラシップで留学できます」(国際交流部課長・浅野憲史さん)

留学前に、海外からの留学生と同じ授業を受けられるほか、17年4月からは海外の大学で学ぶための英語力を身につけられる「Super IESプログラム」も始まった。ナンバー1の背景には、半世紀にわたって国際教育にこだわってきた関西外大ならではのノウハウがあるようだ。

日本にいながらにして異文化が学べる

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2018年開学の、御殿山キャンパス・。左手の高い建物が、関西外大の学生と留学生が共に暮らす「GLOBAL COMMONS 結-YUI-」(撮影/朝日新聞出版写真部・松永卓也)

日本国内にいながらにして異文化を学べる環境が整っているのも、関西外大の強みだ。2018年4月、「御殿山キャンパス・グローバルタウン」が開学した。石畳の歩道や芝生の広場を囲む2階建ての教室は「VILLA(ヴィッラ)」と名づけられている。イタリアの保養地を模したものだという。

「大学らしくない大学施設をコンセプトに設計しました」(国際交流部・岩上英雄さん)

敷地内には海外約40カ国・地域からの留学生約250人と日本人学生約250人がともに暮らす「GLOBAL COMMONS 結-YUI-」がある。27のユニット(1ユニット23または27の個室)ごとにリビングやキッチン、シャワールームなどが設置され、英語を中心とした外国語が日常的に飛び交う。

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御殿山キャンパス・グローバルタウン内の歩道はレンガ造りで、落ち着いた雰囲気(撮影/松永卓也)
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「GLOBAL COMMONS 結-YUI-」の部屋(撮影/朝日新聞出版写真部・加藤夏子)

そのまとめ役がRA(Resident Assistant)と呼ばれる日本人学生だ。約20人いるRAのひとり、外国語学部英米語学科2年の柳浦帆香さんは言う。

「問題は毎月1回開くミーティングで解決しています」

運営のルール、留学生を巻き込んでのオープンキャンパスのイベント企画、SNSを使った広報活動。すべてRAを中心とした学生の手づくりだ。柳浦さんたちの夢は「結」を世界一の国際交流拠点にすること。学生は留学生と積極的にかかわり、自然と国際的な視点を身につけていく。

CA採用者数でも全国トップ

関西外大はキャビンアテンダント(客室乗務員、CA)の採用者数でも全国トップの実績を誇る。2018年の採用者数は88人で、多い年では100人以上が採用されている。日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)と包括協定を結び、人的交流や教育・研究に関する相互支援などを進めており、複数の航空会社出身の教員や職員が学生の指導にあたっている。

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中宮キャンパス7号館にあるキャリアセンター。予約制で就職相談を受けられるほか、自由に就職情報を収集できるPCや資料閲覧スペースも(撮影/松永卓也)

とりわけキャリアセンターのバックアップ態勢は充実している。同センターでは、3年次の秋から約半年間、CA就職志望者に向けたエアライン受験対策講座を開いている。JAL出身のキャリアカウンセラー、木野本美千代さんはこう話す。

「モックアップと呼ぶ航空機の客室を模した施設も使い、身だしなみやマナーの指導、模擬面接などを行っています」

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キャンパス内のエアライン演習室には、モックアップと呼ばれる航空機の客室や空港のカウンターを模した施設がある

一方、「航空業界は選択肢の一つ」とキャリアセンター課長・大畑年範さんが話すように、CAになるための正課授業が行われているわけではない。学生たちが自主的な勉強会などで学んだ知識や就活資料が学内に蓄積されており、それが航空業界をめざす後輩に受け継がれているのだ。小さいころからCAになる夢を持ち続けてきた学生が入学し、大学でモチベーションをさらに高め、航空業界へと羽ばたいていく。そんな好循環が実績に結びついているという。

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エアライン演習室で、キャリアカウンセラー・木野本さん(中央)から面接対策のアドバイスを受ける就活中の学生たち(撮影/加藤夏子)

前出の木野本さんは、「学生にはまず徹底的に自己分析をし、そのうえで航空業界や航空会社の置かれた状況を掘り下げて考えるようにとアドバイスしています」と話す。どのような業種を志望しようと、こうした「考える力」は就活の基盤になる。卒業生は航空業界のみならず、語学力を生かしたさまざまな分野で活躍している。

(文=AERAムック編集部・西島博之)

メモ

関西外国語大学 1945年、谷本英学院として創立。66年、関西外国語大学を開学。本部所在地は大阪府枚方市。学生数は1万850人(2018年5月1日現在)。「国際社会に貢献する豊かな教養を備えた人材の育成」「公正な世界観に基づき、時代と社会の要請に応えていく実学」を建学の理念とする。2018年4月、「御殿山キャンパス・グローバルタウン」を開学した。

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「大学ランキング2020」から

海外留学する学生が多い大学の上位校は、大学あるいは学部全員が留学必須のところと、学部ごとに留学制度が充実しているが必須ではないところに分かれる。ランキング上位校で、「留学必須」で主な大学は、2位早稲田大(国際教養)、3位近畿大(国際)、4位法政大(国際文化)、5位亜細亜大(国際関係・国際関係学科)など。政府は「日本再興戦略」(閣議決定)で日本人の海外留学の人数を、2010年の6万人から20年までに12万人に倍増する目標を掲げている。

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