東大合格トップ、開成高校長に聞く 「入試改革が開成に追い風」なワケ

2019.04.01

author
阿部 健祐
Main Image

国立大学の合格発表が終了しました。東大の合格者数を出身高校別にみると、開成高校(東京都荒川区)が38年連続で全国1位(週刊朝日3月22日号の速報値から)となりました。 2020年度からの教育改革で、大学入試は大きく変わります。センター試験に代わり共通テストが始まります。マークシート式だけでなく記述式問題も導入され、知識に加えて論理的な思考力や判断力、表現力も測るようになります。英語では従来の「読む、聞く」力に加え、「話す、書く」力も問われます。 開成はどのように、改革に対応していくのでしょうか。今後も東大合格者数1位の座を守り続けるのでしょうか。入試改革への視点や同校の目指す教育について、柳沢幸雄校長に聞きました。

話を伺った人

柳沢 幸雄

開成中学校・高等学校校長

(やなぎさわ・ゆきお) 東大名誉教授。ハーバード大大学院准教授・併任教授などを務める。研究テーマは、空気汚染と健康の関係。2011年度から現職。1947年生まれ。開成高校、東京大学工学部卒業。豊島区で育つ。趣味はゴルフ。

うちの先生は、科目別の受験対策とか、勉強法は教えていないんですよ。生徒のことは見守った上で、放っておきます。もちろん何か聞いてきたら、丁寧に答えます。社会に出れば、何でも教えてくれる先生や親はいませんから。教えすぎないことで、生徒が自ら考えて、学ぶ力が育ち、高校卒業後も才能を伸ばす推進力になります。 

思うに、日本の子どもたちは18歳の時点では世界一優秀ですが、大学4年間でさび付いてしまいます。その理由は、大学受験が厳しい一方、卒業については緩く、企業が大学生を選ぶ基準が不明確なことです。社会に出た後も、企業の教育力は以前に比べて落ちており、日本変革の資源と言える若い人材が輝きを失いかねません。

2017年の高校入試
高校入試を終え、開成高校の校門から出てきた受験生たち。突然の雪が出迎えた=2017年2月、東京都荒川区西日暮里4丁目

入試改革の柱のひとつ、論理性を問うこと

その意味では、今回の入試改革の方向性は理解できます。柱の一つは、英語の4技能をはじめとする実社会でつかえる能力を求めること、もう片方の柱は論理性を問うことです。共通テストに記述式の問題を取り入れるのは論理性を伸ばすためです。

文化の違う相手と意思疎通するには外国語の能力は基本ですが、論理性も大切です。発音が少しくらい悪くても、論理的であれば意図を伝えられます。グローバル化が進む中、今回の改革の流れは当然と言えます。

開成のDNAは、論理力を土台にし、個性を伸ばして、時代の先駆者を育んでいくこと。そのスタンスは昔も今も変わりません。むしろ入試改革が、我々に追いついてきたとも言え、開成には追い風なんです。

開成中学の試験の様子
開成中の試験会場に向かう受験生と保護者=2019年2月、東京都荒川区、諫山卓弥撮影

そもそも私立伝統校の入試は長い間、論理性を求めてきました。開成の中学入試は、理科、社会よりも国語と算数の配点を高く設定しています。記述式問題を配したこの2教科で試しているのは、論理力と表現力です。

知識を詰め込んだだけでは、学力は伸び悩みます。原因と結果を論理的に把握できないと、自分がどのプロセスにいるのかがわからず、次にどう動くべきかも決められません。

うちの生徒が在学中に論理性を高める一つの方法は、生徒が学年を超えて、教えあうことです。開成の名物行事でもある5月の運動会。学年を超えた縦割り組で、高3が中1~高2を指導します。先輩の話を聞くと、後輩は自らの考えの幅を広げることができます。先輩は後輩が分かるように説明することで、それまでの知識を整理し、論理性を高めることが出来るのです。

自由に話せる環境、論理性の芽生えに

こうした力を持ってもらうには、幼い頃からの方向付けも大事です。親御さんには、子どもが小さいうちから自由に話せる環境をつくって欲しいと思います。幼児期であれば、会話は子どもが7~8割、親は2~3割がベスト。話すことは自分の知識を再構築することにつながります。

もし、子どもが何かを「面白かった」と喜んでいたら、5W1Hの疑問詞ごとに質問してみてください。「それはいつ?」「どこで?」と。

これをまとめただけで、体験に対する子どもの立派な感想文になります。そうした子育てが、将来の読解力や論理性につながる出発点になるのです。

dummy
男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること
著者:柳沢 幸雄
朝日新聞出版
価格:1,518円

新着記事