医学部合格をつかもう!

独自入手!小論文入試問題実践講座(前編)順天堂大学

2019.05.08

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長谷川 拓美
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  • 2018年度の「順天堂大学」と「横浜市立大学」の出題問題を解いてみよう!前編は順天堂大学
  • 医学部予備校の人気講師が小論文を解説! 「自分に足りないのは何か」を知ることで道が開ける
  • 「医療系トピックス」「医療以外のテーマ」など医系小論文の出題内容を知ろう

昨今の医学部受験において注目される小論文は、「医師になりたい」という本気度と覚悟を、自分の言葉で伝える試験です。大学側からすれば小論文の採点は大変な労力が必要です。それでも多くの大学が、医学部入試で小論文を実施しているのは、センター試験や一般入試で明らかになる「教科の学力」だけでなく、受験生が「医師にふさわしい資質」をどのくらい持っているかを重要視しているからなのです。

 論文手元

今回、「順天堂大学」と「横浜市立大学」で2018年度に出題された小論文の問題を入手しました。「何を書いたら合格になるのか」がわからないからこそ不安になる小論文試験。まずは自分の力で解いてみましょう。その後、予備校の名物講師の解説を読み、「自分に足りないのは何か」を知りましょう。必ず、医学部合格への道は開けます。前編は「順天堂大学」です。

※各大学とも入試問題は非公表のため、問題文は取材により構成。解答は、実際に合格した学生のものではなく、予備校講師が例として作成しています。

あなたならどう解答する? 順天堂大学医学部医学科の問題

順天堂問題写真A
この写真はフランス人写真家Henri Cartier-Bresson氏が「VIVE LA FRANCE(フランス万歳)」という本の中で発表したものである。この写真の中の子どものうちの1人になったとしたら何を思うか。800字以内で書きなさい。

河合塾小論文科講師 広川 徹先生の解説

順天堂大学の図版(写真)問題は、何を書いたらいいのか一見戸惑いますが、要求されていることは以下の3点と考えればよいでしょう。

①写真の寓意(ぐうい)の解釈
②他者の視点への移行
③自己の相対化と発見

まず、①写真の寓意を読み解くことが大切です。与えられる写真はさまざまな意味を含んでいますが、その多弁さに付き合い、自分なりに寓意を解釈すること。いわばCT画像を解読するのと同じで、写真の中にある多様な情報を整理して、一つの解釈(診断)にまとめあげるのです。

ct診断

つぎに、②写真の中の他者に寄り添い、その視点で物事を見つめることが大切です。その他者とは①で解釈した寓意の登場人物なので、その支配を受けています。つまり、自分とは違う文脈で生きている存在、いわば患者です。その他者(患者)の気持ちにどこまで共感できるかがポイントなのです。
そして、そこから、③自分の発想や考え方を見つめ返し、新たな発見をすることが大切。②で他者の視点で物事を見つめていくと、それまでの自分の思い込みや一面的な発想があらわになり、新たな発想や多様性に気がつきます。いわば患者との対話を通して自己を再発見するのです。

解答例では、第1段落で①の作業を、第2、3段落で②の共感作業を、第4段落で③の発見の作業を展開しています。①気だるい夏の午後の所在なげな男の子の、②2人でじゃれあうしかないやるせない気持ちを想像しつつ、③しかし、そこには大人びた「退屈」の先取りがあったという展開。〈子どもは活動的〉という思い込みを覆し、子どもの精神的成熟の過程を再発見します。
受験生にはやや難しい内容に見えるかもしれませんが、読んでみて「なるほど」と思えれば、自分でも手の届く領域ということなのです。

 医療小論文出題内容01

解答例

➀寓意の解釈:人・建物・時間ほか、たくさんある情報を自分なりに整理して一つの解釈にします

 壊れたビルなのだろうか、壁も天井もむき出しで、家具も何もないガランとした部屋だ。奥の壁は一面、腰の高さから天井まで打ち抜かれていて、眩しい光が刺すように降りそそいでいる。その光を背に窓辺で談笑する大人が二人、足下に犬が二匹、窓の桟に背中合わせに座る女の子が二人、そして画面の手前にはだらしなく寝そべり座り込む男の子が二人。気だるい夏の午後の情景だ。

②他者への視点への移行:自分とは違う場所で生きている他者(患者)、存在に寄り添い、同じ視点で物事を見つめ、気持ちに共感します

 私は、この手前の男の子だとしよう。どちらなのかはこの際どうでもいい。ともかく私は、夏休みなのに家族旅行の予定もなく、学校のプールも休止で、朝から宿題は?宿題は?と口うるさい母親の声から逃げ出して、溜まり場にしているこの場所にやってきた。案の定、待ち合わせたかのように彼もきた。いつものペアの完成だ。  二人そろったからゲームをやろう!となるかというと、僕らはそうじゃない。ただグダグダと時間を潰すだけだ。それでは子どもらしくない、子どもは活力の塊のはずだと言われるかもしれないが、僕らの知ったことじゃない。僕らには、大人のように談笑するネタがあるわけでも、女の子たちのようにませた精神年齢があるわけでもないから、しかたなく犬のようにじゃれあうことぐらいしかでき ない。僕らは、まだ犬とさほど違わないのだろう。

③自己の相対化と発見:自分の発想や考え方を見つめ返し、自己を再発見することが大切です

 ただ、この無為な時間をやり過ごすには、二人でいることが絶対に必要だった。持て余した時間は一人では抱えきれないが、二人なら何とかしのげる。弛緩した時間が身体に染み込み、全身が怠惰に沈んでいくのを感じながら、それを犬のように嗅ぎあう。それが僕らの精一杯の抵抗だった。その感覚は、家族旅行でもプールの日焼けでも、ましてやゲームなどでは味わうことのできない独特のもの だった。やったことの記憶はすぐに薄れるが、何もやらなかった時間のことは忘れない。恐らく僕らはその時間に、「退屈」という後に学ぶ人間の本質の一端を感じとっていたのだろう。

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