東大卒シングルファーザーの中学受験備忘録

7話 学校説明会の日々

2019.05.13

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堀 杜夫
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  • 6年生で行く学校説明会は志望校を見直すいい機会。併願校も研究できる
  • 説明会ではアクティブ・ラーニングや英語など、その学校が力を入れる「看板授業」を見学・体験できる
  • 公立一貫校の適性検査と似た入試を実施する私立校が増えている。公立受検者にとって、併願しやすいメリットがある

公立一貫と併願できる私立

模試やらゼミやらで土日も忙しいスケジュールの合間を縫って足しげく出かけたのが、学校説明会です。皮切りは、都内の公立一貫校5校が共催する「公立一貫校を知る会」でした。前年は千代田区立九段中等教育学校で開かれましたが、6年生の4月には都立白鷗高校付属中学校が会場になりました。都立の小石川と桜修館に九段を加えた三つの中等教育学校1998年の学校教育法改正で設けられた完全中高一貫校。6年間の前期課程(1~3年生)は中学校、後期課程(4~6年生)は高校に相当する。後期課程からの入学は想定していない。と、白鷗、両国の二つの都立高付属中学校が一堂に会し、体育館で校長が自校の教育理念を語ったり、教室で各校の生徒が寸劇形式で自校の魅力をアピールしたりと、かなり大規模な説明会です。出席した児童や保護者の数も多く、校長の話を聴くのに立ち見の出る学校もありました。

娘や同級生たちは、自宅から最も通いやすい都立一貫校をなんとなく第1志望と考えていました。この会は志望校を見直すいい機会でもあったのですが、結局は自分の「本命」を再確認する結果となったようです。後日、第1志望校を含む公立一貫校の学校説明会が個別に開かれたのですが、そのほとんどが土曜日で、小学校の学校公開や塾の模試と重なることも多く、娘が公立一貫校の説明会に行ったのはこれが最後となりました。初めて訪れたのが4年生の初夏ですから、本人からすればやや食傷気味だったのかもしれません。

講堂の風景

一方、併願先を見極めるための私立一貫校の学校説明会にも、4月から精力的に足を運びました。私が週刊誌の中学受験特集でデスクとして注力した記事の一つが「公立一貫校と併願できる私立」でした。公立一貫校の入学選考に使われる適性検査と似たような入試を行う私立校が増えつつあり、それらの中から魅力を感じた6校を、秋までに訪問したのです。

私立校の体験授業で親が夢中に

私立一貫校で最初に学校説明会に行ったのは、山の手にあるA校です。もともとは女子校でしたが、10年ほど前に共学の中高一貫コースを併設し、いまでは後者が看板になっています。適性検査型入試の導入も早く、しかも試験日が計3日設定されていて受験の機会が多いため、非常に多数の公立一貫校受検者が併願しており、2017年度の入学者の約6割を適性検査型入試の合格者が占めたといいます。

初めて訪れたのは4月下旬とあって出席者はまだ少なく、開校当時からの古い建物にある一室で、校長や入試広報部長の話を聞きました。その後は、増築を重ねて迷路のように入り組んだ校舎内の見学です。中学生から利用できる食堂や、それに続く生徒たちの語らいの場が明るくきれいで、娘はとても気に入ったようでした。

ディスカッション中学生

この学校が看板にしているiPadを使ったアクティブ・ラーニング教員からの一方向的な講義で知識を覚えるのではなく、生徒たちが主体的に参加、仲間と深く考えながら課題を解決する力を養う指導・学習法。議論やグループワークなどが挙げられる。の授業も体験しました。グループワークの課題は、JRの東京近郊区間内で、どんな日帰り旅行をしたいかをiPadで調べて考え、発表するというものです。男子ばかりのグループに放り込まれた娘は少々戸惑い気味です。鉄道好きの間では知られたことですが、東京近郊区間内では、同じ駅を2度通ったり日付をまたいだりしない限り、どんなに遠回りをしても、路線図上の最短経路で運賃を計算するというルールがあります。例えば、山手線で代々木から新宿に行く際、外回り電車ならわずかひと駅ですが、内回り電車に乗ってぐるりとほぼ1周してもひと駅分の最低運賃ですむのです。

不思議な縁

 路線図

はじめは娘がグループ内でどう振る舞うかが気がかりでしたが、「保護者の皆さんもやってみてください」と地図を渡されると、私は夢中で取り組んでしまいました。高崎から一つ隣の倉賀野まで、群馬、栃木、茨城、千葉、東京、神奈川、埼玉の各都県をぐるりと迂回(うかい)する長大なルートを編み出すことに没頭してしまったのです。体験授業終了後、入試広報部の女性の先生に、まるで子どものように「これがきっと最長だと思いますよ!」と自慢げに地図を見せたのを覚えています。

それから約1カ月後の日曜日。有楽町の東京国際フォーラムで都内私立中の合同説明会が開かれました。会社の仕事の一環で行ったのですが、休憩時間中は併願先として考えていた各校のブースを回り、資料を集めたり学校説明会の日程を聞いたりしました。アクティブ・ラーニングの体験授業を受けたA校のブースをのぞいたときです。私が興奮して地図を見せた女性の先生とばったり出会い、「あ、あのときのお父さんですね」と声をかけられました。恥ずかしいやら、うれしいやら……。同時に、不思議な縁のようなものを感じたのでした。(つづく)

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