医学部合格をつかもう!

独自入手!小論文入試問題実践講座(後編)横浜市立大学

2019.05.15

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長谷川 拓美
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  • 2018年度の「順天堂大学」と「横浜市立大学」の出題問題を解いてみよう!後編は横浜市立大学
  • 医学部予備校の人気講師が小論文を解説! 「自分に足りないのは何か」を知ることで道が開ける
  • 「医療系トピックス」「医療以外のテーマ」など医系小論文の出題内容を知ろう

昨今の医学部受験において注目される小論文は、「医師になりたい」という本気度と覚悟を、自分の言葉で伝える試験です。大学側からすれば小論文の採点は大変な労力が必要です。それでも多くの大学が、医学部入試で小論文を実施しているのは、センター試験や一般入試で明らかになる「教科の学力」だけでなく、受験生が「医師にふさわしい資質」をどのくらい持っているかを重要視しているからなのです。

 重篤患者

今回、「順天堂大学」と「横浜市立大学」で2018年度に出題された小論文の問題を入手しました。「何を書いたら合格になるのか」がわからないからこそ不安になる小論文試験。まずは自分の力で解いてみましょう。その後、予備校の名物講師の解説を読み、「自分に足りないのは何か」を知りましょう。必ず、医学部合格への道は開けます。後編は「横浜市立大学」の問題です。

※各大学とも入試問題は非公表のため、問題文は取材により構成。解答は、実際に合格した学生のものではなく、予備校講師が例として作成しています。

あなたならどう解答する? 横浜市立大学(前期)医学部医学科の問題

診療所の待合室での出来事です。ある患者さんが、高熱があると訴えて、先に診察を受けたいと申し出てきました。この日は混雑していて、他の患者さんは2時間以上待っています。あなたがこの診療所の院長であるとしたら、この事例にどのような対応をしますか。理由と共に1千字以内で述べてください。
待合室

河合塾小論文科講師 広川 徹先生の解説

横浜市立大学の問題は、指定された状況下での問題解決能力を試す問題です。入学後のPBL(問題解決型教育)の先取りと考えましょう。
本問でも、

①診療所の待合室という状況で
②診察の優先順位について
③臨機応変の対応策を考える

ことを求めています。

まず、①診療所の待合室で、高熱を訴える患者が診察の順番を繰り上げてほしいと訴えているという状況設定で、何が「解決すべき問題」なのかを確認しておく必要があります。これを〈モンスター・ペイシェント問題〉と捉えたらアウト。正しく〈診察の優先順位の原則は何か〉と受け止めなければいけません。
 
つぎに、②診察の優先順位の原則として何が考えられるのか、論点を整理する必要があります。一般的には「受け付け順」が原則ですが、診療所では、「症状の重篤な順」という別の原則もあり、この両者を状況に応じて使い分けることが求められます。
 
この③使い分けの具体的な考察が本論なのです。軽症の患者だけなら「受け付け順」でいいですが、重症の患者の場合は、一刻を争う必要があり、「重篤順」も採用されます。この〈患者の病状に応じた臨機応変の対応〉を具体的に展開するのです。
 
解答例では、重症患者の例として乳幼児のインフルエンザ脳症、高齢者の肺炎や尿路感染症、成人の重篤な感染症をあげて「重篤順」の必要性を説くとともに、順番を繰り下げられる軽症患者への説明の必要性も指摘し、二つの原則の両立を図っています。これが問題解決なのです。

 医療小論文出題内容01

解答例

①診療所の待合室の状況:この状況で「解決すべき問題」は〈診察の優先順位の原則は何か〉であることを確認します

②診察の優先順位の原則:原則は「受け付け順」だが、患者の病状に応じて臨機応変に「重篤順」に対応すべきだと提題します

 私がこの診療所の院長であれば、申し訳ないが、他の患者と同様、この患者にも順番待ちをするよう求める。それは公平性の観点からの判断だ。もしこの患者を優先すれば、他の患者たちは不満に思うだろう。医療機関に対する信頼性が低下することにもなる。ただし、それは原則論だ。この段階で患者の病態が深刻で緊急を要するならば、臨機応変に対応すべきだろう。

③対応策を考える:重篤な病気の例を挙げながら「重篤順」の必要性を説くとともに、「受け付け順」を飛ばされる軽症患者への説明の必要性も指摘しています

 例えば、冬の時期に乳幼児が高熱を出しているとする。当然インフルエンザの可能性を考慮しなければならない。高熱が長く続き、意識障害の兆候も見られた場合、もしかするとインフルエンザ脳症の危険もあるから、なるべく早めに対応すべきだ。順番待ちを繰り上げることを他の患者に伝え、その患者を先に診察するのが望ましい。

 また、高齢者で発熱しているとすれば、肺炎や尿路感染症の疑いがあり、時間をおけば危険な状態になると予想されるから、これも早急な対応が必要となる。また、成人でも、症状によっては、海外渡航先で感染した特別な感染症の可能性があり、他の患者への感染も防がなければならない。そうした症状がうかがえた場合は、早急に別室に移動してもらい、待合室の順番とは別に、その患者を先に診察すべきである。 

 しかし実際には、地域の診療所にはさまざまな目的をもつ人が集まってくる。急な病気で駆け込んだ患者だけでなく、高血圧の薬など日常の処方を求める人もいれば、健康診断やその結果を知るために立ち寄った人もいる。待合室が混雑するのはそのためで、そうしたさまざまな目的の人への配慮が、診療所には必要である。もし一刻を争う患者が出た場合には、緊急性の高い患者を優先して診察し、重篤なケースでは専門病院へと搬送するなどの処置をとる。緊急性のあまり高くない患者には、もう少し待ってもらうか、他の時間帯や他日の来院を求めるなど、診療の時間を融通してもらう。それでも順番変更に不満を口にする患者には、丁寧に説明して了解を得ていく。そうした重層的な対応が必要である。

④まとめ:医師としての役割や使命とともに、結論を簡潔に述べています

 以上のように、先着順で患者を診ることが原則だが、命の危機が迫っていたり、他の患者への感染拡大が危惧されたりするような場合には、臨機応変に対応したい。患者への説明責任を果たしながら、市民一人ひとりの命を守り、生活に寄り添うことが、診療所の使命だと私は考えるからである。

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