ハイスクールラプソディー

青野慶久さん 愛媛県立今治西高 高3の秋までゲーム三昧 母は放任主義を貫いた

2019.05.16

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古川 雅子
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連載「ハイスクールラプソディー」第2回は、サイボウズ社長の青野慶久さんです。自ら育児休業を取り、働き方改革の先頭にも立っています。唯一無二の存在感を放つ青野さんの高校時代とは? 注目の経営者の原点に迫ります。

話を伺った人

青野 慶久さん

サイボウズ社長

(あおの・よしひさ)1971年生まれ。愛媛県立今治西高等学校、大阪大学工学部情報システム工学科を卒業。サイボウズ社長。育児休業を3回取得。選択的夫婦別姓を求めて訴訟中。

「高校に行かず、ゲーム会社に就職するんだ」

――中高生時代に頭の中を占めていたのは、ゲームとコンピューターだったそうですね?

はい。コンピューターは、「こういうゲームを作ろう」とプログラムを書いたら、それがコンピューターという箱の中で、自在に動くようになる。たまらなく面白いと思いましたね。

僕は小学校のころからコンピューターオタクで、中2で小遣いをはたいて「MSX」というコンピューターを買ったんです。それからは、自作ゲームのプログラムを書く毎日に。「高校なんか行かないで、ゲーム会社に就職するんだ!」と思っていた時期もありました。

僕は興味があることとないこととの差がものすごくあって。変に物知りで、高校の数学の先生から「16進数のFFを10進数に直すと?」と問題を出された時、即座に「255」と答えた。先生もクラスメートも驚いていましたね。毎日コンピューターでプログラムを書いていた僕には、楽勝だったんですが。

一方で古文は全くやる気が出なかった。授業中にプログラムのコードをノートに書きながらサボっていたぐらいです。古文のテストで「10点台」しか取れなかった時、返ってきた答案用紙には先生の赤字で「美しき10代」なんて書かれていたこともありました(笑)。

青野学生時代

――コンピューター以外に、高校時代ならではの思い出は?

先生から「漢字を何回も繰り返し書いて練習しなさい」と宿題を出されても、納得がいかないなら、やらない主義でした。「それは手の運動にすぎない。自分は違う覚え方をする」という僕なりの「行動原理」で動いていた。先生からこっぴどく怒られたこともあったけれど。

高1の冬休みにアルバイトをしたいと申し出た時は、先生と交渉してアルバイトをする権利を勝ち取りました。生徒手帳に「アルバイトは原則禁止」と書いてあったのを、「じゃあ、例外措置があるんだな」と前向きに解釈して。やりたいことは、筋を通してやり通す。そういう手応えを感じることができた経験でもありました。

――高校時代に読んで影響を受けた本はありますか?

高1の時に読んだ、坂村健さんの『電脳社会論――TRONの予言』(飛鳥新社)です。雷が落ちたような衝撃を受けました。人の生活が電脳的になって、家じゅうにセンサーがついて、人が部屋に入ると勝手にカーテンが開く、みたいなことが当たり前になるんだと。これからは、僕の好きなコンピューターが、間違いなく社会を変えるぞ!と確信できたんです。高校に入りたてのころは学校の勉強が実社会につながるイメージを持てなくて、モラトリアムに陥っていた。それがパーッと吹き飛んだというか。僕は世の中を変えたいという願望が人一倍あったのですが、その実現へのロードマップを、この本が具体的に見せてくれた。今でもこの本は手元に置いてあります。

高3の秋に一念発起して阪大に合格

青野さん3
撮影/片山菜緒子(朝日新聞出版写真部)

――大学受験のエンジンがかかるのは、遅かったそうですね。

高3の担任の先生が家庭訪問に来た折、「もう今学期限りでゲーム機はしまってください」と母親に言ったらしいんです。それでも2学期の後半までゲーム三昧の生活はやめませんでした。「点を取るためだけに勉強するのは、意味がない」などと屁理屈をこねて。

うるさいことは何一つ言わない母だけれど、ただ一つの注文は、「私立じゃなくて国立に入ってね」と。国立の場合、1月にはセンター試験があったので、高3の10月末になって「ああ、もうお尻に火がついた」と一念発起。3カ月間だけ勉強に専念しようと決めました。母親にゲーム機を手渡して自ら封印。宣言通りその3カ月間は猛勉強して、大阪大学に合格できました。僕の性格上、「人から言われたのではなく、自分で納得して決めた」からこそ、ギリギリのスタートでも最後まで走り抜けられたんだろうと思います。

――高校時代の経験から得たものは?

アルバイトの経験もそうですが、自分のやりたいことを突き詰め、それをやりきるという経験を積めたことは大きかったですね。

放任主義を貫いてくれた両親にも感謝しています。高2の時、三日三晩部屋にこもって長編のロールプレイングゲームを完遂したことがありました。新しいゲームを入手したばかりのタイミングで3連休を迎えて。部屋から一歩も出ないで夢中になっていた僕に対し、母はついぞ一言も小言を言いませんでした。今思えば、よくぞそこまで放任できたなと。

そんな母も、一向に受験勉強をする気配のない僕を見て呆れ果て、単身赴任中だった父に電話で相談したことがあったらしい。父は、「失敗しても困るのは慶久本人。だから放っておけ」と。僕の個性がスポイルされなかったのは、見守ってくれた両親のおかげだと思っています。

高校生のうちは、「三日三晩やっても飽きないぐらい夢中になること」を、なんでもいいから見つけ、やり抜いてほしい。自分の好きなことに専念できるということは「能力」だと思ってほしい。これからの時代、好きじゃないことはAIやロボットがやってくれるのだから。

愛媛県立今治西高等学校
1901年創立の歴史ある共学校。県下有数の進学校で、文武両道を重んじる。部活動にも積極的に取り組んでおり、全国大会へ出場する部も多数。同校野球部は、春夏通算27回の甲子園出場経験があり、ベスト4進出は5回。
【所在地】愛媛県今治市中日吉町3-5-47
【URL】https://imabarinishi-h.esnet.ed.jp/

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