東大卒シングルファーザーの中学受験備忘録
10話 新たなものさし「本命率」
2019.06.03

- 「本命率」からわかること。国公立大学への「進学率」が高い高校では、私立大学の合格の多くは「すべり止め」の位置づけで、進学者は少ない
- 私立大学では慶応義塾大や早稲田大でも「本命率」は4割強にとどまり、関関同立の中には3割を切るところもある
- 進学実績は、上位層の生徒の成果だけでなく、中堅層以下の進学先を知ることも大事
「進学率」と「本命率」
2007年、東大と京大に合格者を出した全国の約650高校に、大学合格者数だけでなく進学者数も尋ねるアンケートを送りました。進学者数の調査をお願いするのは初めてで、回答を渋る学校もありました。現役の進学先はわかるが、浪人までは把握しきれないという声も聞かれました。各校は毎年5月に行われる学校基本調査学校基本調査統計法が規定する学校基本統計を作成するための調査。学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを目的とし、文部科学省に学生の入学、卒業及び転出入の状況を報告している。で卒業生の進路などを役所に報告していますが、浪人生の進学先は対象外だからです。それでも、進路指導担当の先生に目的を説明し、かなりの学校から回答を得ることができました。

集めたデータをまず高校ごとにミクロで見ると、高校の大学進学力を測ることができます。まずは大学進学者数を卒業生数で割り、「進学率」と定義しました。国公立大学への進学率が高い高校では、私立大学の合格者数の多くは「すべり止め」で、実際に進学している生徒は少ないことが裏付けられました。そこで、合格者数に占める進学者数の割合を「本命率」と名付けて算出してみました。本当は第1志望ではなかった可能性もありますが、結果的に進学したのだから「本命」とみなそうと考えたのです。はたして、私立大学の本命率は軒並み低いことがわかりました。
その傾向は、データを大学ごとに集計してマクロで見ると、さらにはっきりします。私立大学では慶応義塾や早稲田でも本命率は4割強にとどまり、関関同立の中には3割を切るところもあったのです。各大学に延べ合格者数に対する入学者数の割合を聞いたところ、回答を得られた大学ではほぼ符合する結果となりました。ちなみに、この調査では「東大に受かったけど蹴った人」も浮かび上がります。ある女子御三家の卒業生は、東大理科1類に合格したものの、慶応医学部に進んだとの話でした。
志望校の「進学率」をはじきだす
私が進学者数調査を初めて行ってから10年――。調査は現役に絞って毎年続けられ、回答を寄せる学校の数も増えています。私は10年前の編集部での作業を思い返しながら、娘が第1志望としている都立一貫校と併願先候補の私立を対象に、最近の現役進学者数調査の結果をエクセルに打ち込み、グラフ化してみました。どの学校も、「今年は東大に〇人合格しました」などと、上位層の生徒の成果を強調しがちですが、中堅層以下の進路を知ることも大事だと考えたからです。

結果は末尾の図のとおりです。