2020教育改革

2020入試が変わる 逆転はある? AO・推薦方式はいま

2019.06.19

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水野 雅恵
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大学のAO入試や推薦入試に、どんなイメージがありますか。大学入学者の半数近く、私立大学では半数以上が今、AO・推薦入試を経て入学しています。「学力不問」「一発逆転」それとも「海外経験や全国レベルの受賞歴のある人のファストパス」? ひと昔前のイメージは今も通用するのでしょうか。


AO入試アドミッション・オフィス入試の略。大学の入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)に従い、面接や討論、小論文などで人物を評価して合否を判定する。国内では、1990年度に慶応義塾大湘南藤沢キャンパスが初めて導入した。推薦入試出身高校の校長の推薦にもとづき、原則として学力検査を免除して調査書を主な資料として合否判定を行う入試。大学から指定された高校の生徒だけが応募できる指定校制と、大学が決めた出願資格を満たしたうえで高校の推薦書をもらえれば誰でも受験できる公募制がある。はどのように変わっているのでしょう。下の問いに答えてみてください。

いまのAO・推薦入試 正しいのは?

□ (1)学力は不要
□ (2)海外経験や全国レベルの受賞歴があると圧倒的に有利
□ (3)併願できない
□ (4)一般入試との両立は非常に難しい
□ (5)表現力やコミュニケーション力が飛び抜けた人しか通過できない
(予備校「早稲田塾」への取材をもとに作成)

では答え合わせから。すべて×が正解です。

二次選考の面接や口頭試問では、大学で学ぶ前提となる学力があるかが必ず問われるので、(1)は間違いです。有力校は、出願要件として一定以上の評定平均を求めたり、センター試験を課したりもしている。AO(アドミッション・オフィス)入試などでは、経験を通して何を得たか、志望動機とどう結びついているかが問われるので、(2)も違う。(3)は、指定校推薦や公募制推薦は原則として併願できませんが、AO・自己推薦は一般的に併願できます」

早稲田塾・中島慎治さん
早稲田塾・第2事業部長を務める中島慎治さん

現役高校生を専門とした首都圏の予備校で、AO入試や推薦入試に詳しい「早稲田塾」の中島慎治・第2事業部長は、こう解説します。

「(4)の両立が難しいのは、高3の夏から急にやろうとする場合。付け焼き刃的な対策では入試は乗りきれません。細く長く取り組めばチャンスは広がります。(5)の表現力やコミュニケーション力は当然必要ですが、これは鍛えることができます。それ以上に大切なのが『内容』で、基礎学力をベースに思考や議論ができるかが問われます」

文部科学省によると、2018年度の大学入学者614243人のうち、AO・推薦経由の入学者は過去最高の45.2%。私立大では10年ほど前からAO・推薦入学者が一般入試を上回り、半数以上を占める。親世代がイメージする「特別な経験や技能を持つ人の入試」ではなくなっています。

大学入学者数の入試方法別の推移

AO・推薦記事中

国立大も、難関私大も、AO・推薦を拡大する?

この先もさらに増えそうです。

国立大学協会は21年度までに、国立大のAO・推薦入試の入学者を現在の15%台から、30%に引き上げる目標を掲げています。一般入試の定員数を減らし、AO・推薦募集に振り向ける難関私大もあります。

一般入試はますます「狭き門」となりそうで、AO・推薦入試は「第1志望大学の現役合格の可能性を高める有力な選択肢です。志望理由を突き詰める中で、より目的意識が強まり、一般入試を乗り切る学力もつきます。AO・推薦入試は、誰にでも可能性がある入試です。正しく理解し、挑戦してほしいと思います」(中島さん)。

20年度からの大学入試改革では、AO入試は「総合型選抜」、推薦入試は「学校推薦型選抜」と名前が変わります。

AO・推薦入試はこう変わる

AO・推薦入試はこう変わる

文科省は、どの入試方式でも「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という学力の3要素を評価するよう求めています。AO・推薦入試の一部で「学力が問われていない」と批判があったため、小論文や共通テストなどで学力を問うことを必須にしました。

選考スケジュールも変わります。総合型選抜(AO入試)の出願開始は現在の8月以降から9月以降になります。「早すぎる選考や合格発表は授業の支障になっている」という高校側の懸念に応じました。

全国高校長協会で大学入試対策委員長を務める石崎規生・都立世田谷泉高校長は「生徒の個性を丁寧に見極めてくれる改革には期待している。大学の偏差値や入試方法で評価するような考え方も、変わっていく必要があるのではないでしょうか」と話しています。

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