国語のチカラ ~読解力アップの教科書~

「読解力」をつけるには(2)―物語文への取り組み方

2019.06.20

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南雲 ゆりか
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中学入試の国語の素材文として、さまざまな種類の文章が取り上げられますが、最も多いのが「物語文」。全体の出題の半分近くを占めます。

大手中学受験塾・四谷大塚によると、2019年の首都圏の難関校103校199文章の種類の内訳は、物語文44.7%、説明文38.1%、随筆文14.9%、詩は3校のみ。一昔前は出題されることもあった脚本や伝記は、ここ10年くらいほぼ目にしていません。

出題する学校側からすると、解釈が求められる物語文では、より深い問いが作成できます。受験生の「考える力」や「読書経験」、「語彙力」をみるねらいがあるのでしょう。

1校あたりの出題として、物語文と説明文の2題構成がスタンダードの中で、あえて物語文1題を長文で出題する学校もあります。男子校では、麻布中、駒場東邦中、城北中、暁星中、武蔵中、明治大学付属中野中など、女子校では、学習院女子中等科、東洋英和女学院中学部、三輪田学園中などですね。思春期女子の微妙な心情の読み取りを課する、難しい問いを出す男子校も少なくありません。                   

今回は、その物語文の取り組み方についてご説明したいと思います。

まず、しっかり準備しておきたいのが、「心情」について聞く問いへの対策です。物語文の問いの中でも半数強を占めるうえ、語彙力だけでは補えない部分があり、一定の訓練が必要だからです。心情について聞く問いとは、行動や表情などを表している部分に線が引かれ、どういう気持ちかを答えさせるようなものですね。南雲国語教室では、〈1できごと(ことがら、背景)〉〈2心情〉〈3反応(行動、表情、態度など)〉の「三位一体」で考えるのが定石と教えています。

それでは、ここで「三位一体」の考え方を伝授しましょう。

下図の【例1】を見てください。「テストで90点を取った」という同じ〈1できごと〉でも、「Aさんはがっくりと肩を落とした」と、「Bさんはガッツポーズをした」という〈3反応〉では、〈2心情〉が違います。Aさんは「気落ちしている」し、Bさんは「喜んで」いますね。また、【例2】の「涙が出てきた」という〈3反応〉も、「『強そうな上級生に取り囲まれ』て涙が出てきた」のと、「『すばらしい映画だった』ので涙が出てきた」では、やはり〈2心情〉が異なっています。

読解力2

物語文では、本文に書かれている状況、できごと、人物の言動をもとに分析しながら、一歩踏み込んで行間を読まなければなりません。上記の1~3に着目することで、そのことが見えやすくなります。

心情について問う問題の対策として、語彙を増やすことも忘れてはいけません。その気持ちを表すぴったりした言葉を探り当てられるかどうかで勝負が決まるからです。特に記述問題では、適切な心情語が入っていなければ大きく減点されてしまいます。

「嬉しい、悲しい」といった基本的な言葉はもちろん、「切ない、後ろめたい、いじらしい」など、子どもの日常会話だけでは学べないものも使えるようにしましょう。小学校では「楽しい、喜ぶ、苦しい、悲しい、困る、愛しい、快い」といった漢字は習うものの、「悔やむ、嬉しい、憂える、怒る、嫌い、緊〈張〉する、〈反〉抗する、怖い、恐れる」などは習いません(山カッコ内の漢字は習います)。でも、漢字を学ぶことは概念を手に入れることでもありますから、覚えて使いこなせるようにしておくといいでしょう。また、「ほおをふくらませる」→不満、「肩を落とす」→落胆、「くちびるをかむ」→悔しさや怒りをこらえるなど、気持ちを表す慣用句も覚えられると、なおいいですね。

気持ちを表す言葉の引き出しを増やしたら、それらの言葉がどのように使われているのかをつかむことが大切で、知識の定着にもつながります。その方法として有効なのが「読書」です。いつもお伝えしていますが、文章を読むこと自体が国語の基礎学習です。なかなか物語を読もうとしないお子さんには、その子が興味を持っていることをモチーフにしたタイトルを一緒に探して、本を手に取るきっかけを与えてあげてください。たとえば、スポーツが好きなお子さんなら、吉野万里子さんの「チーム」シリーズ(学研プラス)がおすすめ。読解力が発展途上にあっても楽しく読めますし、中学入試でもよく取り上げられます。

物語文において、「心情」のほかに問われることとしては、次のようなものがあります。

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(1)空欄に副詞などを補充する問い

→ 状態の副詞がよく出るので、決まった言い回しを覚えましょう。

(2)内容を言い換えたり説明したりする問い

→ 「できごと」の説明がよく出ます。だれが何をしたか整理しながら読む練習をしましょう。

(3)場面や情景を聞く問い

→ 「時」「場所」「登場人物」「できごと」の変化で場面分けをします。情景が暗示することがらを考えるくせをつけるとよいでしょう。

(4)人物の性格を聞く問い

 → 人物の言動、まわりからの評価から性格を読み取ります。「性格を表す言葉」を意味とともに蓄えておきましょう。

(5)主題を問うもの

  → 「クライマックス」「人物の言動」「変化をもたらしたことがら」に注目します。

(6)比喩や象徴表現の説明

 → たとえているもの、たとえられているものの共通点を探します。色、天気、食べ物など、ちょっとしたことが何かを象徴している場合があるので、意識してみましょう。

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(1)~(4)は語彙力で補える部分があります。(5)(6)は、家で映画やドラマを見たときに、「この作品は何が言いたかったのかな」とか、「あの場面は何のたとえなのかな」などと親子で話すことが、いい練習になります。

感覚で解けてしまうのではと思いがちな物語文ですが、ていねいに見ていくと注意しておきたいポイントはしっかりとあるのですね。

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