ゼロからわかる! 2020大学入試改革 おさえておきたいポイントを解説
英語が変わる!大学入試改革で始まる民間試験を徹底分析 共通ID、申請受け付けは11月から
2019.07.10

2020年度から大学入試は大きく変わります。何がどう変わり、どんな準備が必要なのか。新しい入試制度で受験することになる中高生や保護者のみなさんの疑問に、朝日新聞社会部で大学入試や教育問題を取材する増谷文生記者がお答えします!
2020年度からの大学入試改革で、英語は英検やGTEC(ジーテック)といった民間試験が使われます。なぜですか?

文部科学省などは、「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る試験を導入することで、高校の授業を、4技能をバランスよく教えるものに変えたいと考えています。大学入試センター試験では、ほぼ「読む・聞く」の力しか測れません。ただ、「話す・書く」力を測る試験は、採点に時間と手間がかかります。特に「話す」は、試験の面接担当者や質問・録音する機器を用意する必要もあります。文科省などは、毎年50万人以上が受験するセンター試験に組み込んで、一斉に実施するのは難しいと判断しました。そこで、すでに多くの大学で入試に使われている民間試験に白羽の矢が立ちました。
どんな民間試験を使うことができるのでしょう?

大学入試センターは、初年度の2020年度に使える試験として、日本の英検やGTECのほか、ビジネスの場面で必要な英語力を測るTOEIC(トーイック)、英語圏の大学に留学する際の英語力を測るTOEFL(トフル)なども含め、8種類を認定しました。このうちTOEICは、7月2日に参加をとりやめました。
ただし、英検で認められたのは「新型英検」です。学校でも受験できたこれまでの英検の成績は認められないので、注意が必要です。3タイプある新型英検は、「話す」の試験のみをコンピューター上で受験する「S-CBT」がメインになる見込みです。GTECも、新たに始まる「大学入学共通テスト版」がメインとなります。
大学入学共通テストで使える英語民間試験
試験の名称 (実施団体) |
日程や会場などの発表状況 |
---|---|
ケンブリッジ英語検定 (ケンブリッジ大学英語検定機構) |
11月までに発表 |
英検(新型) (日本英語検定協会) |
「S-CBT」は4~11月に約260会場で毎月実施。4~7月、8~11月で各1回受験可能 |
GTEC (ベネッセコーポレーション) |
共通テスト版は年4回実施。試験会場を置く地域は秋に発表 |
IELTS (ブリティッシュ・カウンシル/IDP) |
16都道府県で最大24回実施/23都道府県で最大22回実施 |
TEAP (日本英語検定協会) |
全国10ブロックで年3回実施 |
TEAP CBT (日本英語検定協会) |
全国10ブロックで年3回実施 |
TOEFL iBT (ETS) |
11月に試験日程を発表、試験会場はその後に発表 |
TOEIC (国際ビジネスコミュニケーション協会) |
★参加取り下げ |
(2019年7月5日時点。IELTSは同じ試験を二つの団体が実施し、日程や会場が異なる)
色々な種類の試験の異なる成績を、どのように評価するのでしょう?

すべての試験の成績は「欧州言語共通参照枠(CFER)」、日本ではよく「セファール」と呼ばれる指標に当てはめて、最高の「C2」から「A1」までの6段階に分類されます。文科省が、全試験の点数とCEFRの対応関係を一覧にした対照表を作っています。
いつ、何回受験できるのでしょうか?

新制度では、原則として高校3年生の4~12月に受けた2回までの試験の成績しか認められません。ただし、高3の4~12月に90日以上入院していたり、海外に120日以上暮らしていたりして受験できる期間が短かった人などには例外措置があります。細かく決まっていますので、文科省が今年3月28日に発表した「大学入学共通テスト実施方針(追加分)ガイドライン」で確認してください。
英語民間試験の例外措置
使える試験 | |
---|---|
経済的に困難な生徒 | 高2の1回 ※ただし、CEFRのB2レベル以上が必要 |
離島・へき地の生徒 | 高2の1回 ※ただし、CEFRのB2レベル以上が必要 |
病気などの生徒 | 高2の1回+高3の1回まで |
海外在住の生徒 | 高3の2回まで(海外で受けた試験を含む) |
既卒者 | 受験前年度の2回+受験年度の2回の計4回まで(ただし、前年度の成績利用は大学の判断) |
病気などの既卒者 | 受験前年度の2回まで+受験年度の1回まで(最大計2回まで) |
海外在住の既卒者 | 受験前年度の2回+受験年度の2回の計4回まで(海外で受けた試験を含む。ただし、前年度の成績利用は大学の判断) |
具体的にどのように受験するのですか?

今年11月に、認定された民間試験を受験するのに必要な共通IDの申請受け付けが始まります。高校2年生は、高校がとりまとめて入試センターに申請します。浪人生などの既卒者は、本人であることを確認する住民票などを添えて、個人で入試センターに申請します。共通IDは来年1月ごろ、受験生に届きます。「この試験の成績を使ってほしい」と狙った試験に申し込む際に、IDを書き込みます。
2020年度の英語民間試験の成績活用の流れ
2019年11月 | 2020年度に民間試験を受験する可能性がある高校2年生らが高校を通じて大学入試センターに共通IDを申し込む |
---|---|
2020年1月ごろ | センターから2年生らにIDを発行 |
2020年4月 | センターに成績を提出する民間試験の受験が可能に。IDを登録して受験(12月までの2回分まで) |
2020年9月以降 | 総合型選抜(現在のAO入試) |
2020年11月以降 | 学校推薦型選抜(同推薦入試) |
2021年1月 | 最初の大学入学共通テスト |
2021年1月以降 | 国公私立大の個別試験 |
いつ、どこで受験できるのですか?

受験生が多いと見込まれる二つの試験について紹介しましょう。新型英検のうち、メインの「S-CBT」は4~11月に約260会場で毎月実施され、4~7月、8~11月に1回ずつ受験できます。申込者が集中した際には、試験を1日に複数回実施したり、連日実施したりすることを目指しています。一方、共通テスト版GTECは、20年度は6月14日、7月19日、10月4日、11月1日の4回実施され、2回まで受験できます。試験会場は大学や民間施設のほか、高校も使う予定です。どちらのテストも、なるべく多くの人が受験できるように、受験者を高校3年生と既卒者にしぼります。
高校生の英語の力が不十分ということでしょうか?

国際化が進むなか、文科省はこれまでも、高校までの英語の授業は「読む・聞く・話す・書く」の4技能をバランスよく教えるように求めていました。しかし、文科省の高校3年生を対象とした調査では、「読む・聞く」力に比べて、「話す・書く」力が身についていないとする結果が出ています。英語はほぼ「読む・聞く」の力しか測っていないセンター試験に引きずられ、「読む・聞く」を重視する高校が多いと指摘されてきました。