2020大学入試改革 小中高生が準備すべきこと
「理系科目が苦手… スマホばっかり…」 保護者の4つの悩みに、武内彰・日比谷高校長が回答!
2019.07.02

子どもの学びをめぐる悩みは、小中高生でバラバラで、解決策も違っています。5月のシンポジウムに参加した保護者から、イベント終了後、質問を募集しました。後日、パネリストとして参加したプロ家庭教師の安浪京子さん、都立日比谷高校校長の武内彰さん、早稲田大学前総長の鎌田薫さんに答えてもらいました。
この記事では、校長を務めながら、バドミントンの指導をするなど、いまの高校生を知っている武内彰さんが、高校生活などに関する保護者の悩み4つに答えます。
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スマホの使いすぎで学習に影響が出ています。ルールを設けて、口を出さないようにしていますが、どうしたらいいでしょうか。(40代)

家庭内のルールを設けて守っているのであれば、細かく言わなくてもいいのではないでしょうか。それでも目に余るようでしたら、「スマホに向かう時間が多すぎるのではないか。後悔することにならないように自分で律することも大切では」と保護者の懸念を伝えることが必要です。 我が家では、子どもに言い聞かせても分からなかった時に、一度つまずかせようと見放したことがあります。本人が「これではいけない」と自覚しないと、変われないこともあります。 日比谷高では「『一日の中の文武両道』を365日貫こう」と声をかけています。保護者からは、「それで、上手に切り替えられるようになりました」と言っていただいています。
日比谷高は全科目履修型のカリキュラムということですが、我が子は理系科目が苦手です。理系分野に興味を持たせて伸ばすにはどうしたらいいでしょうか。(40代女性)

誰でも得意科目や苦手科目は持っているものです。大切なことは、「なぜだろう。不思議だな。もっと知りたい」という思いを持つ契機を得られるかどうかだと思います。 科学に関する本や科学雑誌を読んだり、科学者による講演会に参加したり、授業内の実験やトピックス、動植物に触れたりする。あるいは博物館や科学館などで実物に触れる機会を設けてみてはいかがでしょうか。 何かしら一つの自然科学に関するテーマについて関心を持って、仕組みが理解できるようになると、ほかのことに関しても同様に興味を持つことにつながる場合もあると思います。我が家では、小学生の頃に科学マジックを見せたり、果物電池を一緒に作ったりしました。
生徒一人ひとりの総合的な力を公平に評価するのは教師にとって難しい課題だと思いますが、どのように実施しているのでしょうか。(50代女性)

総合的な力を評価するということは、現時点ではできていないのが実情です。教科学習の評価で言えば、知識の量や思考力の高低などのウェートが大きいです。 しかし、これからは三つの観点「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」に基づいて評価していくことになります。おそらく具体的な評価項目や基準を示した「ルーブリック評価表」を生徒に見せて、各観点でどのレベルまで到達すればよいのかを考えながら学習に取り組んでもらうことになるでしょう。 学習以外の学校行事や部活動、その他の活動にどのように取り組み、どのような成果を上げたかが、今後徐々にウェートを上げていき、総合的に評価していくように変わっていきます。
一定の学力がある高校でも、伸びる子とそうでない子がいます。低迷している生徒たちをどうフォローしていますか。(40代女性)

大前提として、学年集団内での相対的な位置を気にしすぎないように伝えています。下位に低迷していたとしても、その集団内でやるべきことを積み重ねていけば、必要な力は必ず身についていきます。 過去の自分と比べて、伸びていく手ごたえを感じること、つまり個人内評価を高めていくことが大切です。あきらめたり、自己肯定感を得られないまま過ごしたりすることのないよう励ましています。 具体的には、年4回の担任による個人面談の実施、定期考査ごとに成績下位層に対する補習・講習など、精神的に支えるとともに、実質的なフォローをしています。
たけうち・あきら 物理教師として都立高の教壇に立ち、2012年から現職。学校改革に取り組み、東大の合格者数は14年から6年連続で全国の公立高で最多。著書に「学ぶ心に火をともす8つの教え」(マガジンハウス)など。