世界2大教育法から学ぶ

モンテッソーリ教育とシュタイナー教育から学ぶ、子育てのヒント

2019.08.21

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おおたとしまさ
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シュタイナー教育 のびのび息を吐けるように

シュタイナー内観
刺激を弱めるため電灯は淡い桃色の布で覆われている(なのはな園、山本和生撮影)

子育てのヒント

  • 「本物」に囲まれた環境を用意する
  • いかに自分で遊びをつくりだせるか
  • 呼吸のリズムを生活の中に取り入れる
  • 過度な刺激から守ってあげる

科学万能主義や唯物論的な物質主義の台頭によって人間が本来もっている目には見えない価値が損なわれていると訴え、独特な理論をもって新しい教育法を考案したのが思想家ルドルフ・シュタイナーである。1919年にドイツで「自由ヴァルドルフ学校」を設立し、「自由への教育」を標ひょう榜ぼうした。ちなみに海外では「シュタイナー教育」より「ヴァルドルフ教育」の名称で親しまれている。

俳優の斎藤工さんや、ポルシェデザイン創業者、ノルウェーのイェンス・ストルテンベルグ前首相、ノーベル医学生理学賞受賞者などが輩出しており、「はてしない物語」の作者ミヒャエル・エンデもシュタイナー教育の影響を受けているといわれている。

人間は、身体(意志)心(感情)頭(思考)の三つからできており、それらが順番に7年周期で成長するとシュタイナーは考えた。0~7歳は身体を育て、7~14歳は心を育て、14~21歳は思考を育てる時期。たとえば7歳までは、模倣によって手足の使い方を学ぶ。だから大人の役割は手本を見せること。また、この時期はまだ感受性が強すぎるので、強い光や大きな音にはなるべく触れさせないように環境を整える必要があるともいう。知識を詰め込むには早すぎるので、7歳までは文字や計算を教え込んだりはしない。代わりに木片や素朴な人形で遊ばせることを推奨する。

シュタイナーのいう「自由」とは、外側の権威や価値に寄りかからず、自分で考え、自分で感じ、自分の意志を行動と結びつけられるということ。既存の価値観に縛られずに生きる姿勢は、これからの時代にますます重要になるはずだ。「そのためには結局どうしたらいいの?」という声が聞こえてきそうだが、それを自分なりに考え続けることこそがシュタイナーのいう「自由」である。子どもを「自由」な人に育てたければ、まず親が「自由」の意味を理解しなければならない。すなわち大人のモノサシや他人との比較でわが子を評価しないということだ。

密着リポート

ヴァルドルフの森 キンダーガルテン なのはな園(幼稚園型認可外保育施設、東京都三鷹市)

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園庭にブランコや滑り台はない。自然の素材で遊ぶ

古い洋館を園舎として使用している。使い込まれた木材の温かみが感じられる、素朴でどこか懐かしい雰囲気だ。やや薄暗く静かな部屋の壁は淡い桃色に統一され、お母さんの子宮の中にいるような安心感を子どもに与える。

朝、登園してきた子どもたちは、おのおの自由遊びを始める。子どもたちが遊ぶ「おもちゃ」は、単なる小石や小枝、手作りの人形など素朴なものばかり。いわゆるおもちゃ屋さんで売っているようなおもちゃはない。しかし子どもたちは自分自身の想像力を最大限に生かして、電車ごっこやおままごとをして遊ぶ。先生たちは自分たちの手仕事をしながら、そっと子どもたちを見守るだけ。子どもたちといっしょに遊んで盛り上げるようなことはしない。

自由遊びの時間、おやつの時間、外遊びの時間、お昼の時間と、解放と収縮がくり返され、まるで呼吸のリズムのよう。「自立した大人になるためには、幼児期のうちから自分のペースでのびのびと呼吸ができるようにしてあげることが大事」(松浦園・日本シュタイナー幼児教育協会代表理事)という。

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手作りの人形には表情がない。子どもたちの想像力が人形に表情を与える(山本和生撮影)

1日の流れ

8:30~8:45
教師の集まり
8:45~9:00
登園
9:00~10:20
自由遊び(月はスープづくり、火はにじみ絵)
10:20~10:35
ライゲン(輪になって踊る)

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シュタイナーが考案したオイリュトミーや、ライゲンという、芸術的なお遊戯のような時間もある

10:45~11:00
おやつ
11:05~12:00
お庭遊び(木および雨の日は散歩)
12:00~12:20
お片づけ
12:35~12:50
お話または人形劇、お祈り
12:50~13:30
お弁当
13:30~13:35
さようなら
13:35~13:50
お掃除
13:50
降園

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