連載・親子で「考える」を動かそう! SDGs編

「心が動くほどの”算数体験“を聞かせて」 駒場東邦中・算数の入試問題から

2019.09.21

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日能研
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中学入試ではときに、大きく深いテーマを扱った問題が出ます。SDGsSDGsSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。2015年9月の国連サミットで採択された。スローガンは「誰一人置き去りにしない」。30年までの達成を目指し、17分野の目標(ゴール)と169の具体的な目標(ターゲット)を設けている。 20年度から順次、実施される新学習指導要領でも、児童・生徒が他者を尊重し、多様な人々と協働しながら「持続可能な社会の創り手」となることを求めている。と深いつながりを持つものも少なくありません。SDGs編では、関連する中学入試問題を紹介します。あらかじめ準備できるような模範的な「正解」はありません。世界の課題を「自分ごと」として考える人になってほしい――。そんな出題校の思いが込められている入試問題に触れて、親子でアタマとココロを使って、「考える」を動かしてみませんか?(問題文の一部を変えている場合があります)

4回目は駒場東邦中学校の算数の問題です。

駒場東邦中学校 2017年/算数

今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活(い)かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい。

日能研の解説

複雑な計算問題を速く正確に解く?それを競う?公式や解法を覚えて……? 
算数にそんなイメージをもっている人は、「これが算数の入試問題なの!?」と驚いたかもしれませんね。実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じたりした出来事について、自由に記述する――のですから。

この問題は、算数に対する学び方の姿勢をダイレクトに問う問題と言えるでしょう。日常生活の中で、算数や数学で学ぶ事柄が使われている場面はたくさんあります。だれでも多かれ少なかれ知っていることでしょう。しかし、この問題では、「感動したり、面白いと感じた出来事」とあるように、心が動いた体験を思い出して記述することが求められています。心が動くほどの出来事や事柄は、普段から算数のすばらしさについて考えたり、語っていたりしないと、なかなか思い浮かばないものです。

「算数は受験のためのもの」という考え方だけでは、算数の問題を解くことに面白さを感じても、世の中との結びつきに面白さを感じる機会はあまりないかもしれません。そのようなスタンスの人にとっては、この入試問題は思った以上にハードルが高くなるはずです。入試問題の先にある「算数(数学)を学ぶ意義とは?」という問いをダイレクトに、かつ、大胆に受験生にぶつけてきたこの入試問題に敬意を表します。

単に問題を解くだけの受け身の学びではなく、驚きや喜び、楽しさや面白さを感じて、自らすすんでアタマもココロも動かす主体的な学び。「そんな授業を実践しているよ!」という出題校からのメッセージが伝わってきませんか?「SDGs(持続可能な開発目標)」の目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」が目指す、「質の高い学び」の本質がこの問題には込められているように思うのです。

さて、数学が科学技術のベースとなっていることは言うまでもありません。そして、その数学も、源流をたどれば算数の世界に行き着きます。このことからも、世の中で便利だと思われる事柄のほとんどは、算数がベースとなって成り立っていると言ってもよいでしょう。ですから、たとえば、この問題に対し、「カードをタッチするだけで電車に乗れる。」「電話を使って遠く離れた人と話をすることができる。」などの答えも、もとをたどると「算数の考え方」のおかげと言えるのでしょうが、算数の何がどのように実生活に活かされているのかを述べたことにはなりません。算数で学んできたことそのものの性質が利用されている事柄をさがして、記述する必要があります。例えば、マンホールのふたの形が円なのは、ふたが外れたとき、どの向きになっても下に落ちないようにするためです。円はどの方向からでも幅が一定であるという性質を利用しているのですね。

「人生100年時代」と言われます。今の小学生は、22世紀を当たり前に迎えるのですね。予測困難な未来。超高齢化社会。人口減少。気候変動……。世の中のあらゆる課題と向き合い、人工知能(AI)と共存しながら、「人間だからこその仕事」をし、仲間とともに、持続可能な未来をつくっていく。自分ごととして考え、行動する〈私〉であってほしい――。受験生一人ひとりの〈私〉に直接問いかける私学の中学入試問題には、「子どもたちとともに未来をつくりたい」という、それぞれの出題校の思いが込められています。

それは、SDGsなど、地球規模の課題について問う問題にも、身のまわりの出来事を題材にした問題にも込められているのです。知識の積み重ねに限らない、「本質」を探究する学び。未来を歩む〈私〉を自分自身で育てる学びです。その入り口たる入試問題は、子どもたち(=未来の大人たち)と、出題校との「対話」と言えるでしょう。だからこそ、〈私〉をしっかり表現して、〈自分の答え〉を返したい。

今回は入試問題を通して、日々の学びと〈私〉と世の中をつなげることについて、「考える」を動かしてもらいました。どうぞ親子で存分に話しあってみてください。

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