鉄ちゃんの育て方

「鉄道研究会に入りたくて中学受験」の部員も 駒場東邦中・高の学園祭 運転シミュレーターも

2019.09.13

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葉山 梢
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中学受験の難関校の一つとして知られる駒場東邦中学校・高校(東京都世田谷区)。文化祭で毎年、一、二を争う人気なのが鉄道研究部の展示です。展示に魅せられて受験を決める小学生も多いといいます。

小学生も楽しめる展示

鉄道ジオラマや運転シミュレーター、発車メロディー装置……。同部の文化祭の展示はバラエティー豊かなのが特長です。

 今年は新たに、運転席部分に顔を出して写真を撮れる「顔出しパネル」も作りました。中央線か東海道線、埼京線を選べ、行き先表示も変えられます。担当の村上敦彦さん(高2)は「来てくれる小学生に楽しんでもらいたくて、昨年12月から準備してきました」と話します。

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運転士になった気分で写真が撮れる「顔出しパネル」=9月6日、東京都世田谷区池尻の同校

畳6枚分はある大きなジオラマの今年のテーマは北海道。この夏の合宿で訪れた札幌駅や富良野の花畑などを再現しています。合宿中に撮影した北海道の鉄道の写真も説明を付けて展示する予定です。

 合宿は6班に分かれ、それぞれのコースを決めることから宿・切符の手配まで生徒たち自身がしました。部長の嘉屋秀大さん(高2)は「鉄道好きといっても、『乗り鉄』『撮り鉄』など様々。函館の市電に乗りまくるコースや、小樽で写真を撮るコースなど、班長のやりたいことが反映されています」と話します。帰りの航空券をなくした人がいたり道に迷ったりといったトラブルもありましたが、「他の部活ではできない経験ができます」。

「上からあれこれ言わないのが本校の部活のやり方なのかなと思います」と顧問の小松原孝文先生。「安全面のこと以外であれば失敗することがあっても、成長につなげてほしい」といいます。

 7月の全国高等学校鉄道模型コンテストには別のジオラマを出品。高2の鈴木太郎さんがゴールデンウィークに家族旅行で行った北陸の風景をモデルに、10人ほどの部員が1カ月足らずで完成させました。線路の上を走る高速道路が入り組んだ構造で、紙製のため高低差をつけるのが大変だったといいます。「お客さんが質問してくれたり、写真を撮ってくれたりしたのがうれしかった」と鈴木さん。モジュール部門のベストプレゼンテーション賞を受賞しました。

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高速道路が上下に入り組む凝った作りのジオラマ=9月6日、同校

 発車メロディー装置にはまり「駒東に行く!」

運転シミュレーターには毎年、行列ができるといいます。今年は都営新宿線のシミュレーターを、高2の河合慧祐さんがネット上で公開されているフリーソフトをもとに作りました。各駅に赴いてホームの写真を撮り、背景や新型車両もCGで作製しています。取材の日にはまだ作業中でしたが「文化祭までには本物そっくりに再現できていると思います」と河合さんは自信をのぞかせていました。

 根強い人気があるのが発車メロディーを流す装置。好きな駅名を言ってスイッチを押すと、駅から電車が発車するときに流れるメロディーを聞くことができます。過去の先輩たちから受け継いだ各駅の発車メロディーを使用しています。

高2の堀雅也さんは小2のときから毎年、文化祭を訪れていました。「音鉄」の堀さんはこの発車メロディーの装置にはまって「絶対、駒東に行く!」と決めたといいます。このように「鉄研に入りたくて受験した」という生徒が毎年と言っていいほどいるとか。いくつかの学校の文化祭の展示を見くらべ、同校の鉄研の魅力に気づく小学生も多いそうです。

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一見地味だが大人気の発車メロディー装置=9月6日、同校

「鉄ちゃん」であることが中学受験に役立ったことはあるかと部員たちに聞くと、挙がったのは地理の勉強。「国内の地名は自然に身についているので、勉強しなくてもばっちりだった」と口々に話していました。「電車に乗りたいから、あえて家から遠い塾に通った」など、受験勉強の励みにしていた人も多くいました。

 高2の檜山智成さんは三陸鉄道の復旧イベントに足を運んだことで地方の産業や町づくりに興味がわいたといいます。「受験勉強に役立つという以上に、人生を変える可能性があるのが鉄道の魅力だと思います」

 今年の駒場東邦中学校・高校の文化祭は9月14、15日に開催されます。

同校ホームページはこちら

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文化祭まで残り1週間となり、垂れ幕の準備も大詰め=9月6日、同校



クラスに必ずいる鉄道ファン、通称「鉄ちゃん」。不定期連載「鉄ちゃんの育て方」では、鉄道をこよなく愛する子どもを育てる保護者の方々に向け、子どもの鉄道愛を単なる趣味に終わらせず、学習や人間的成長に生かしていくためのすべを考えます。
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