中学進学 グローバルという選択

教科書半ページに8時間!? 東京学芸大付属国際の思考を深める探求型学習とは

2019.09.27

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柿崎明子
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日本の高校卒業資格に加え、海外の大学への道も開ける。国際バカロレア(IB)認定の中高を選ぶ最大のメリットだ。(写真は小松万姫教諭=右奥=の英語の授業。受講者はみなスラスラ話し、笑いももれる=植田真紗美撮影)

予習前提にディスカッション

テーブルを囲む教員と数人の生徒たち。パソコンの画面には英BBCのネットニュースが映し出され、人種差別について英語で意見を述べ合う。IB認定校の東京学芸大学付属国際中等教育学校(東京都練馬区)で行われているディプロマプログラム(DP)の英語の授業だ。6年間の中高一貫教育を行う同校では、1~4年生全員がIBの中等教育課程(MYP)を履修後、毎年15人程度が2年間のDPに、それ以外は日本の高校の卒業資格のみの一般プログラムに進む

小松万姫(まき)教諭は言う。「一人でできる学習は自宅でやってきてもらい、学校ではディスカッションを中心に進めています。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)できる友達が、せっかく目の前にいるのですから」。5年生の東野玲央(たまお)さんは「実践的な内容が多い。先生も留学を体験しているので、日常的に使う表現を教えてもらえるのがいいですね」と話す。

同校の廊下にはIBが目指す「10の学習者像」がイラスト付きで掲示されている。その一つが「探究する人」。興味を持ったことを自ら調べ、仲間と共有して深めていく探究型学習は、IB教育の特徴だ。DP5年生の大和田怜那さんは、好きな授業に歴史を挙げる。「重点的に調べる学習が面白い。教科書には半ページしか載っていない『戦間期のドイツ』に8時間かけたこともありました」

DPの授業はかつて、英語、スペイン語、フランス語しか使えなかったが、現在は日本語の使用が認められ、同校では英語、数学、美術は英語で、それ以外は日本語で教えている。DP以外でも3年生からは、理科、数学、社会・地理歴史・公民、美術を英語で教える「イマージョン授業・科目」を実施。探究に重点を置く点はDPと同じだ。

1年生の化学では、硬貨の材質を調べる実験を行っていた。傷つけたり溶かしたりできないという条件のもとで、グループごとに実験方法を考えてリポートにまとめる。顕微鏡を持ち出すグループもあれば、パソコンの検索サイトで何やら調べるグループも。

東京学芸大附国際中教の授業
硬貨の材質を調べる実験に取り組む生徒たち。制服はあるが、普段は私服で通学する生徒がほとんどだ

国内進学には制約、保護者も理解を

3年生の数学の授業でも、教師が一方的に教えるのではなく、生徒が黒板に数式や図をかいて発表していた。IBの数学の授業の評価項目には「コミュニケーション」があり、理解したことを表現できるか、相手の言うことを理解しているか、などが問われるという。

IBに詳しい上智大文学部英文学科の池田真教授は「知識を詰め込むのではなく、思考を深めて知識を活用する教育を重視する。得た知識を活用して新たな価値を作れる人材、多様な他者と協働できる人材を育てるのがIBの教育なのです」と評価しつつ、こうも言う。「日本の教育制度とは異なるため、現状ではDPの資格だけで出願できる国内の大学は限られる。保護者が十分理解し、納得したうえで子どもを送り出すことが大切です」

東京学芸大附国際中教の授業
数学の授業で黒板に数式などをかいて発表する生徒

雨宮真一副校長に聞く

 広い知識より深掘りを重視。網羅的な学びではありません

IBと新学習指導要領の理念は似ていますが、ゴールに至るまでのプロセスが違います。IBでは生徒が学んだ知識や獲得したスキルから学習内容の概念的理解をより深めるために、各教科が詳細な単元計画を立てます。探究的な授業が多く、ディスカッションやプレゼンテーションなどが中心です。探究→行動→振り返りを繰り返し、らせん状にステップアップしていくイメージでしょうか。リポートなどの課題も多く、生徒はがんばって取り組んでいます。IBは主体的な学びですから、好奇心旺盛で、何事にも一生懸命にぶつかり、いろいろな経験を積める子が伸びますね。

より深く学べるよう、教員も教材を探します。教科書だけで授業を進めることはありません。教員は膨大な学びのなかから生徒に何を残すべきかを考え、授業を組み立てます。

本校では5年生から、一般プログラムとDPに分かれます。一般プログラムでは世界史を石器時代から現代まで通して学びますが、DPの授業ではピンポイントで深めていきます。知識を網羅する学びではないので、DPの生徒が日本の大学を一般入試で受けるのは難しい。海外の大学か、AOや推薦などの特別入試で国内の大学に入る生徒が多いですね。卒業生が実績を残してくれたおかげで、最近は本校まで説明に訪れる海外の大学も増えてきました。

国際バカロレアとは?

 国際バカロレア(IB)は、国際機関などの駐在員や外交官の子どもに、世界共通の大学入学資格を与える教育プログラムとして発足。153以上の国・地域の約5千校が導入している。3~12歳が対象のPYP、11~16歳のMYP、16~19歳のDPなどのプログラムがある。日本では今年7月現在、PYP38校、MYP18校、DP46校の計75校(複数プログラム認定校があり合計は一致しない)が認定済み。うち学校教育法第1条が定める小学校、中学校、高校など(1条校)が38校、残りはインターナショナルスクールなどだ。IBには日本の学習指導要領にはない独自の学習テーマや教科が設定されている。たとえばDPには「言語と文学」「言語獲得」「個人と社会」「理科」「数学」「芸術」の6教科があり、IB認定の1条校は国語、数学、公民、理科などの教科を当てはめている。「課題論文」「知の理論」「創造性・活動・奉仕」のコア科目も必修だ。DP履修生は高校3年の11月に最終試験を受け、取得したスコアに応じて入学できる大学が決まる。

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