『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

「知る・学ぶ」のきっかけは楽しさ 歴史学ぶなら「信長の野望」から

2019.12.05

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桜木 建二
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親に子どもへ期待することを聞くと、このところ「好きなことを見つけて取り組んでいってほしい」という声がたいへん増えてきたと、探究学舎代表の宝槻泰伸さんは言う。どういうことなのか。時代の変化も関係ありそうだ。詳しく教えてもらったぞ。

「好きなことを追究」が、自立して生きる力につながる

桜木:「子どもには好きなことを追究してほしい」と話す、親の思いとは?

宝槻:敷かれたレールの上を歩いていくだけではもたない時代だということを、大人の側もすでに認識しています。

クリエイティビティを発揮して道なき道を進むには、好きなことをやっていないと続かないのもわかっている。

ならば子どもには、何か打ち込める好きなものを見つけてほしいと思うのが親心というわけですね。

そうしたニーズに「能力開発」を旨とする教育は答えを与えられない。「興味開発」という新たな領域が誕生するのは必然で、それが私たちのやっていることです。

桜木:つまりはこういうことだな。これからを生きる子どもには、自立して生きる力を身につけること、それに、好きなものを見つけ、それを創造的に続けていくことの双方が期待され、求められている。

探究学舎では、好きなものを見つけ続けていくことという新しいニーズに特化して授業が組まれているのだな。

探究学舎には教科横断的にたくさんの授業がある。そのなかには「戦国英雄編」「戦国合戦編」というものもあり、とかく遠い世界の話と捉えがちな歴史を「自分ごと」として体感できるとして人気らしい。

授業内容は子どもたちの興味を惹くための工夫が詰まっているのだが、そのエッセンスや考え方は?

歴史分野で、たとえば戦国時代を制した織田信長。信長とその時代について学ぶとしたら、探究学舎的メソッドではどうすればいいだろうか?

ゲームや漫画、きっかけは何でもいい。のめり込めば知識はついてくる

宝槻:信長はたくさん材料があるからやりやすいですね。まずは人気の「信長の野望」というゲームがありますね。そこからやってみるのがいいでしょう。

勉強につなげる特別なやり方があるかどうか? いえ、ごくふつうにゲームを楽しめばいい。

それで信長の人となりや、目指したことが手に取るようにわかりますから。

さらには信長を主人公にした大河ドラマがあるのでぜひ視聴を。

文字からも触れたいですね。信長やその時代を題材にした漫画や伝記も読みましょう。漫画で読む歴史のような、楽しくスラスラ読めるものでいいですよ。

桜木:まるで遊びの延長のように思えてしまうが……。

宝槻:それでいいのです。

ただ、信長については本当にいろんな作品があって、どれを手に取ればいいか迷ってしまうかもしれません。

そんなときの選択基準は、エンターテインメントとしてよりおもしろそうなものでかまいませんよ。要は、信長という人物やその時代のことを、いかに生き生きと感じ取れるかどうかです。

彼が命を落とした本能寺の変は何年だったかといった年号や、歴史的出来事の意味が、それで頭に入るかどうか、ですか? 

そんなことは気にしなくていいんです。もしも子どもの興味・好奇心に火がついて、信長のことを身近に感じ、その時代のことをもっと知りたいと思うようになったら、年号のひとつやふたつ、そのうちいやでも頭に入ってくることでしょう。

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ものごとに触れる最初は楽しさ優先。正しい知識である必要はない

桜木:ここでひとつ疑問に思うんじゃないか? 

ゲームやドラマや漫画から歴史にふれるのは、たしかにわかりやすいかもしれない。

ただ、エンターテインメントは話をおもしろくするために、史実を曲げたり人物像をデフォルメしたりするだろう。それでは不正確な知識を身につけてしまうことになりはしないか?

宝槻:嘘でもまちがっていても、かまいません。その道の研究者の方は、そうしたエンターテインメントを見てここが、あそこがまちがっていると指摘するかもしれませんね。職業柄、そうせざるを得ない面はあるのでしょうが、では最初はどうだっただろうというところに目を向けてみたいところ。

いまは専門家になった方も、最初にその分野の知識に触れたとき、そんなに正確さを重視していただろうか。何これ楽しい、おもしろい!という純粋な興味から入っていったんじゃないでしょうか。

デフォルメされていたり演出されていたりしたほうが、ものごとは絶対おもしろくなりますよね。

興味開発という観点からすれば、正確性のみ重視して読むのが苦痛の書物より、エンターテインメント作品のほうが優れているといっていいのです。

そもそも、信長は最期を迎えた際、燃え上がる本能寺のなかで名言を残したとか舞を踊ったというシーンを私たちは漠然と頭に浮かべますが、それってフィクションですよね。

誰が見てきたわけでもなく、ただ小説やドラマでクライマックスをつくるためにシーンを想像したのでしょう。

ものごとに触れる最初は、正しい知識である必要なんてありません。とにかく興味に火がつけばいいんですよ。

興味の種まきまでが大人の仕事

桜木:なるほど、まずは楽しめ、興味を持てとの教え。そう言われると、学ぶことに対して構えず気楽に臨めるようになるものだな。

では、子どもの興味に火がついたあとは、親としてはどうしたらいいか。

宝槻:種をまく、つまりきっかけづくりをするまでが大人の側の主な仕事。そのあとは基本的には本人に任せる以外はありません。

実際に探究していくのは子どもたち自身なのですし、自分で歩を進められないようでは、自力でワクワクするものを見つけてくる術が身についたとはいえません。

あとはできれば、興味関心を分かち合える仲間がいるといいでしょうね。同じ趣味を持った友だちさえいれば、「おまえあれ見た? ヤバイよね!」などと刺激し合い、どんどん興味が深まっていくはずです。

桜木:興味の種をまいて芽が出たら、大人の側はもう手出ししなくていい。ただ、ときおり水をやるようなことはもちろんしたっていいのだ。

まずは大人の側が「知ること学ぶこと」を楽しめ

宝槻:興味を持った分野の講演会を見つけてきて連れ出してやるとか、博物館などに連れて行く、各地の城めぐりをするというようなこともいいですよね。

博物館なんかに行っても、子どもはたいして喜ばないんじゃないか。そもそも自分だってそんなに関心を持てないし……、などと思ったりしますか? それは興味の種をまいていないからですよ。

たとえば、博物館にはよく元素の立派な標本が陳列されています。何も知らなければ、よくわからぬ石が並んでいるなと思うだけで、立ち止まることもなくスルーしてしまいますよね。

でも、探究学舎には元素編の授業もあります。これを受けてから標本を見たら、「わあ、水銀じゃん!」などとすごく反応しますよ。好奇心や探究心が芽生えていると、ものの見え方が変わり、そのものの価値がちゃんとわかるようになるものです。

子どもにそんな生き生きとした体験をする種を植え付けるには、大人の側だって同じようにものごとに大いに関心を持ち、好奇心に満ちた目で世の中を眺める習慣が必要になります。

まずは大人の側が、知ること学ぶことを楽しむ姿勢を持つ。それが子どもを伸ばすための第一歩になることでしょう。

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『ドラゴン桜2』から(C)三田紀房/コルク

 (ライター・山内 宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

160x宝槻泰伸さん

話を伺った人

宝槻泰伸さん

ほうつき・やすのぶ 1981年5月25日、東京都三鷹市生まれ。高校や塾に行かずに、京都大学に合格した異色の経歴を持つ。東京都三鷹市にある塾「探究学舎」の代表。子どもの好奇心に火をつけるユニークな授業に、年間3000人以上の参加者が全国から集まる。出演番組は「情熱大陸」。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)がある。5人の子どものお父さん。

『ドラゴン桜2』
作者は漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したものの、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。学校理事として加わった弁護士・桜木建二が淡白な「現代っ子」たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに制作されていて、漫画を通じて実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。2018年1月から、雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。2003~07年に同誌で連載したパート1は、廃校寸前の龍山高校に通う偏差値30台の高校生が、1年で東大に合格する姿を描き、話題になった。

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