ゼロからわかる! 2020大学入試改革 おさえておきたいポイントを解説

共通テスト、記述式問題も見送りで「センター試験と同じになる」は間違い!?

2019.12.17

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増谷 文生
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2020年度からの大学入試改革について、朝日新聞社会部で大学入試や教育問題を取材する増谷文生記者がポイントを解説します。

大学入学共通テストの国語と数学の記述式問題の導入見送りが17日、発表されました。結局、センター試験と同じようなテストになるということでしょうか?

(増谷) 大学入学共通テストとセンター試験の違いというと、確かに、①英語民間試験を活用して4技能を測る、②国語と数学で一部に記述式の問題を出題する、という2点が大きなものでした。二つとも見送られるということで、センター試験とほぼ同じになると感じる受験生もいることでしょう。

しかし、実はマークシート式問題の出題傾向、つまり問題の中身がかなり違うものになるという方向性が明らかになっています。

共通テストが実施される2021年1月を前にした17年と18年に、大学入試センターは試行調査を行い、問題と正答率などを公表しました。それをみると、日常生活を題材にしたり、複数の資料を読み解いて解答を導き出したりする問題が多く出題されました。それは、記述式だけでなく、マークシート式の設問でも同じ傾向でした。学習指導要領が重視する「思考力、判断力、表現力」を、これまで以上に高校で身につけてもらうことを目指した対応とのことです。

出題傾向が変わるというのはどういうことでしょう?

(増谷) まずは国語について、試行調査でのマークシート部分の出題を振り返ってみましょう。17年に行われた1回目の試行調査では、5ページにわたる長文と二つの表、五つの写真や図を読み解いて解答させる問題が出題されました。18年の2回目も、4ページにわたる文章のほか、ポスターや法律の条文、三つの表を総合的に読み解いて答えさせる問題などが出されました。

センター試験でも近年、資料を読み解かないと正答に至らない問題が出題されていますが、これほど多くの資料を読ませるものではありません。センター試験の過去問と同じだと思って臨むと、戸惑うかもしれません。

数学はどうでしょうか。

(増谷) 試行調査の問題は、国語と同様でした。「身近な題材について数学的に考える」「複数の資料やデータをもとにして質問に答える」といった特徴があります。

1回目の試行調査では、「高校の文化祭でTシャツを販売する」という場面が提示され、生徒へのアンケートを手がかりに、売り上げが最大になる価格を考える問題が出されました。「Tシャツの価格」「販売数」など複数のデータをもとに、売上額について、2次関数の式を立てて解くように求めています。資料を読み解いたうえで、生徒が自分で式を立てて解答するため、同じ式を計算問題として出題された時よりも、かなり時間がかかります。

2回目の試行調査でも、当たりくじを引く確率について太郎さんと花子さんが話し合う会話文をもとにした問題が出題されました。「日常生活や社会の出来事を、数学的な問題として考えることができる」力などが問われました。

Tシャツ

ほかの教科はどうでしょう?

(増谷) 同じ傾向でした。例えば1回目の英語のリスニングでは、けがをした患者と医者の会話を聞き、体のどの部分をけがしているのかを答える問題が出ました。身の回りの出来事について、イラストを参考に必要な情報を聞き取る力を問うものでした。

英語リスニングの選択肢
英語リスニングの選択肢

「授業中にどうやってノートをとればよいのでしょう?」という患者の問いを聞き取って、「手のけが」という情報に結びつけられるかがポイントですが、音声では体の部位を表す直接的な言葉は出てきません。

リーディングでも、ネットのグルメサイトの情報をもとに、海外旅行先で飲食店を探すという設定の問題が出ました。解答するには、三つの店に関する利用者の意見を読んで概要を把握し、必要な情報を読み取る力などが必要でした。

試行調査では地理歴史・公民や理科でも、国語や数学と同様に、日常生活を題材にしたり、複数の資料を読み解いて解答を導き出したりする問題が出題されました。共通テストでも同じ傾向になるはずです。

21年1月の初めての共通テストは、試行調査とまったく同じような問題になるのですか?

(増谷) 数学では正答率がかなり低く、まったく無解答というケースも多く問題視されました。問題文が長すぎて読み解くのに時間がかかったことが、一つの原因と指摘されました。入試センターは数学の時間不足の問題を改善するため、本番では日常生活や社会の出来事などを題材にした問題を減らす考えを示しています。しかし、全体として試行調査の問題と大きくは変わらないと思われます。

記述式問題の見送りで、大学側の対応はどうなるのですか?

(増谷) 国語について、試行調査ではマークシート部分だけで200点の配点でした。記述式問題の成績は、各問の評価を総合して、点数ではなく「A」~「E」の5段階の「総合評価」で大学に提供される予定でした。

この総合評価をどのように入試で活用するかは、各大学の判断に任されています。すでに「Aは40点、Bは30点と得点換算して合否判定に使う」としたり、「合格ラインで同点の受験生が出た時に高評価の方を合格させる」としたりしていた大学は、記述式の見送りによって見直しを迫られます。各大学は対応策を決定しだい、サイトなどで発表しますので、注意して確認してください。

一方、数学の記述式問題は100点満点のうち3問で15点の配点がありました。見送りによって、記述式部分をマークシート式問題に作り替えることになりそうです。記述式部分の点数も一体として合否判定に使う方針を示していた大学が多いため、影響は小さいと思われますが、やはり各大学のサイトで確認をしてください。

受験生は勉強法などを変える必要があるでしょうか?

(増谷) 共通テストで出題される予定だった記述式問題は、多数の答案を大勢の人が採点するため、採点時の判断にずれが生じにくいように、解答する際にいくつもの細かな条件が定められていました。そのように、条件に沿って書かせる「記述式」は、国公立大などが個別試験で出題しているものとはかなり異なります。

大手予備校の担当者に聞くと、こうした特殊な問題に対応するための講座は取りやめるそうです。記述式問題の対策は、国公立大の個別試験などで出される通常の問題だけに集中すればいいでしょう。

 

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