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教育資金の一括贈与 相続も意識し「争族」にならない配慮を

2020.01.23

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小山 信康
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子育て世代のお金の悩みに、子育て世代のファイナンシャルプランナーがお答えするコラムです。

Q. 教育資金の一括贈与は相続対策になる?

《相談例》

私立高校2年の長男が、「1年間、語学留学したい。さらにできれば、海外の大学に進学したい」と言い出しました。かなえてやりたいのはやまやまですが、私立なので高校の学費捻出も大変です。 この先、長男に準備できるのは300万円が限度。長女(中2)の高校進学も重なり、海外留学・進学の費用には到底足りません。
そう悩んでいたところ、知人が「祖父母から孫へ、教育資金を非課税で贈与できる仕組みがある」と教えてくれました。 実家はある程度の資産家なので、非課税であれば相談してみようかと思っていますが、具体的にはどのような制度なのでしょうか? また、利用する際の注意点やメリット・デメリットなどはありますか?

《相談者はこんな人》

兵庫県在住、会社員50歳。家族は専業主婦の妻(45歳)、私立高校2年の長男(17歳)と公立中学2年の長女(14歳)。持ち家。
収入=年収約800万円、 支出=年間約600万円。
貯蓄/運用=教育資金(長男:学資保険300万円、長女:定期預金150万円)
相談者の父親は80歳、母親は75歳。自営業、持ち家。実家には、妹(40歳)が小学3年の長男と共に同居している。

A. 使い残しは課税対象に 事前に納得を得て「争族」を防ぐ

教育資金の一括贈与の非課税制度の利用は、相続税対策としても有効なのでしょうか?

本来は祖父母→親→孫と、2度の相続(または贈与)が発生し、そのたびに相続税(または贈与税)がかかるところを、親を飛び越して一度で済ますことができます。しかも非課税です。直系尊属が死亡するたびに相続税の支払いに頭を悩ますほど富裕な家庭であれば、積極的にこの制度を利用するメリットがあると考えられます。
しかし、孫本人に勉強する気が薄いなどの理由で教育資金として引き出さなかった「使い残し」は、贈与税の課税対象になります。同じ金額にかかる税率をみると、相続税よりも贈与税の方が高いことが多いので、「この制度を利用せずに相続税を払った方が得だった」という事態はありえます。

教育資金の贈与が「争族」を招くリスクはありませんか?

リスクがゼロとは断言できません。例えば、長男家庭の孫にだけ一括贈与を行い、他のきょうだいの家庭の孫には何もなかったということであれば、心情として「不公平だ」と感じる人も多いでしょう。
財産の相続に関しては民法で一定のルールは示されていますが、結果的には「話し合い」で決定されます。折り合いがつかなければ、裁判で決着をつけるという事態さえ起こりかねません。その結果、時間やお金を浪費するケースも否定できません。
これらのリスクを考慮すると、「こっそり」贈与してもらうよりは、あらかじめ周囲の納得を得た上で制度を活用することも考えられます。

祖父母から孫への教育資金の一括贈与の非課税制度を利用していて相続が発生した場合、教育資金口座の残額は遺産の一部に組み入れられるのでしょうか?

原則として組み入れられません。
ただ、「孫が祖父母の養子になっている」あるいは「祖父母が亡くなった際に、孫に一定割合の相続が行われる」など孫が法定相続人となる場合には、「教育資金の一括贈与分は特別受益にあたるから、生前贈与として相続資産に合算すべきだ!」と、他の相続人から主張されることはありえます。

教育資金の一括贈与の非課税制度は、親から子へ利用することもできますか?

法律上は可能です。ただし、親が子どもの教育費を支払うのはよほど法外な出費でもない限り、贈与税の課税対象にはなりません。この制度を利用する意義はあまりないでしょう。

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