編集長コラム
早生まれは自己肯定感が低い!? 「保護者の関わり方次第」にギクリ
2020.01.20

近ごろ「自己肯定感」という言葉をよく耳にします。「褒められた経験が多いほど、その子の自己肯定感は高まり、前向きになる」などと聞くと、保護者としては居ても立ってもいられなくなります…。幼児期に発育の差が気になりがちな「早生まれ」の子を持つ筆者が、思いを綴りました。
教育や子育ての場面で「自己肯定感」という言葉を聞くことが多くなりました。学校や習い事の保護者会でも、ママ友との会話でも。「お子さんの自己肯定感を高めるような声かけをお願いします」「うちの子、何事にも消極的で。自己肯定感が低いのかも」などといった具合です。
そもそも「自己肯定感」とは、自分自身を肯定的に受け止め、長所も短所も含めて自分を大切に出来ているかどうかである、と幸福学研究者で慶応大大学院教授の前野隆司さんはEduAの記事で述べています。人生の幸福度と強い相関関係があり、自己肯定感が高い人ほど幸せで、自己肯定感が低い人ほど不幸せだと感じているとか。ざっくり言うと「自分のことを好きだ」と思える感情だそう。
それを引き出せるかどうかは、親の接し方が重要と言われると、我が身を振り返り、不安になるやら反省するやら。思い起こせばこんなことがありました。
娘が保育園時代のことです。娘は早生まれでクラスでは最年少。月齢の高い同級生に比べると発達の差は歴然としており、卒乳もオムツが外れたのも最後だったと思われます。本人も何となく「私には、まだまだ出来ないことがたくさん。おともだちはすごい」といつも感じているようでした。お友達にはいつも引っ張ってもらって感謝する一方で、娘の「のんびり」が気になる時もしばしば。まだ生まれて数年の人生、4月や5月生まれの友達とはほぼ1年違うのは大きい、比べるのは酷だ、と私も頭では分かってはいたのですが。
子どもの間でも、「ままごと遊び」の役柄に、その「差」は顕著に表れているようでした。聞くと、人気の高い「お母さん役」や「お姉さん役」は、月齢も高くしっかりしたお友達。娘は妹役や赤ちゃん役でもなく、たいてい「ウサギ役」でした。
人間でもなくペット?! 保育園でのやりとりを娘から耳にする度、こちらの心中は複雑です。さりげなく、「お姉さんとかもやりたい、と言ってみたら?」と促すも、娘は「でも、ウサギちゃんはいいんだって。イチゴ摘みに行く時に、お耳にバスケットをかけられるんだって」。
私の知る限り、娘は在園中にお母さん役やお姉さん役になったことはなかったようです。これは一例で、娘は普段から何となく引っ込み思案なところもあり、それこそ「早生まれだし、自己肯定感が低いのかも……」と、少し気になっていました。

現代版「おままごと」で、一番人気は…?
時は流れ、小学生になって何かの折にママ友とこの話をした時のことです。彼女の娘さんもままごと遊びでは同じような役回りで、ある時、担任の保育士さんに相談したそうです。
「おままごと遊びで、ペット役はいま一番人気なんですよ」。その若い担任の先生は、屈託なくこう話したと言います。たいていペット役には複数の子どもが立候補して、じゃんけんで決まるのだとか。「ペット役が人間以下とか、私はそういう観点で考えたことはありませんでした」と先生。
なるほど、そういう見方もあったのか。これを聞いて、私は自分のステレオタイプな考え方を反省しました。何を良しとするかは、モノの見方次第。案外、娘もあの頃は本当にウサギ役がやりたかったのかもしれません。今から思えば、「そうだね、ウサギちゃんなら足が速いし、ぴょんぴょんとお家にすぐに帰れるね」と、ウサギの良さを強調することも出来たはず。後悔しました。
さきの前野教授も「他の子と比較したり、悪いところを過剰に怒って指摘したりするような行為は、自己肯定感を低めるだけです」と話しています。うちの子は他の子と同じこと(=ここでは役)が出来ないなどという考え方は、まさに比較そのものだったのです。
「自己肯定感」を育むのも、低めるのも親の接し方が大きく影響するという指摘は、私の胸にグサリと突き刺さりました。これを機会に、その日から、その瞬間から、意識して接してみようと思いました。まだまだ遅くはないと信じて。