連載・親子で「考える」を動かそう! 「私」を伝える編

「“私”の体験を使って、『ことわざ』を説く」 栄東中学校・国語の入試問題から

2020.01.23

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日能研
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キミってどんな人? 考えを聞かせて?――。中学入試問題は、それぞれの“私”に問いかけてきます。知識だけでなく、身の回りや“私自身”とつなげて考えなければなりません。あらかじめ準備できるような「正解」はありません。子どもたちの数だけ答えがあるはずです。親子でアタマとココロを使って、「考える」を動かしてみませんか?

(問題文の一部を変えている場合があります)


”私”を伝える編の2回目は栄東中学校の国語の問題です。

 栄東中学校 2016年/国語

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

「私が兄とおやつの取り合いをしていたら、そのすきに弟にそのおやつを取られてしまい、あっけにとられた」という体験は、『とんびに油揚(あぶらあ)げをさらわれる』ということわざで言い表すことができます。

また、「サッカーも野球も同時に習っていたが、どちらもあまり上達しなかった」という体験は、『二兎(にと)を追う者は一兎(いっと)をも得ず』ということわざで表すことができます。


(問)次の語群から一つことわざを選び、そのことわざで言い表すことができるあなた自身の体験を自由に記述しなさい。ただし、記述する文章の中に、語群から選んだことわざを使用してはいけません。

栄東

日能研の解説

「知識」は誰もが共有できるもの。だから、獲得した知識の中から、どれを選び、どのように使うかというときにこそ、それぞれの“私”があらわれる――と、前回、お話ししました。

今回はさらにそれぞれの“私”があらわれる、「知識」と “私自身”をつなげて伝える問題です。

獲得した知識を机上にとどめることなく、実際にその知識を使ってみる。「“私”自身の体験」という「具体」を示しながら、相手にわかりやすく伝える――。

ことわざの意味を知っているだけでなく、自分自身の体験と結び付け、それを表現することが求められています。「入試」という状況の中でも、多くの受験生がそれぞれ、これまでの自分自身の体験をふり返り、アタマとココロを動かしながら、この問題に取り組んだことでしょう。まさに「 “私”の数だけ答えがある」という、中学入試問題の魅力を見て取ることができます。

物事を自分自身の体験と結び付けて考える力」は、入試だけにとどまらず、今後生きていくうえで、何度も使うでしょう。相手に、事例として“私自身”を示しながら、納得してもらう力。それは、「ずっと使い続けることのできる力」とも言えます。そんな力を試しているという点に、この問題の魅力を感じます。
この学校へ入学後も、大学などの高等教育へ進んでからも、もちろん社会に出てからも、プレゼンテーションの際の議論や討論の場で、この力を大いに使っていくことでしょう。

また、問題文の中に「ただし、記述する文章の中に、語群から選んだことわざを使用してはいけません」とあるように、ことわざそのものは使わずに説明する必要があります。もちろん、どれを選んでも構いませんが、自分自身をふり返りながら体験と結び付けて選び、自由に記述していきます。これまでの「体験」をふり返り、どう次に生かしていくかを試される問題とも言えるでしょう。

子どもたちにとって、日々の体験はすべて貴重で、成長の糧になります。特に低学年の子どもにとっては、日々の生活そのものが「冒険」のようなものですから。

保護者からすれば、子どもの健康管理や安全の確保はもちろん最優先事項でしょう。でも、それ以外の、ときには、悔しい思いをしたり、悲しいことに出あったり、失敗したり……。それらを、まわりの大人が先回りして端からすべて取り除いたり、すぐに手伝ってしまったりしては、せっかくの「体験」の機会を奪ってしまうことになるのかもしれません。

そして、楽しかったこと、感動したこと――。すべての貴重な「体験」をそのままにしてしまってはもったいないです。何があった? それはなぜ起きた? 次にどう生かす? そうやって「体験」をふり返ってみましょう。うまくいったときも、うまくいかなかったときも「ふり返り」をして、「体験」を次への「力」にしていく。その力は、子どもたちが、問題や課題と向き合うときに、大きな力となるはずです。

さあ、親子で “私”の体験を思い起こし、それを使って、「知識」とつなげ、「考える」を存分に動かしてみてください。保護者の皆さんは「かわいい子には旅をさせよ」を言い表すことができる、ご自身の体験を自由に記述してみましょう。

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