英字紙記者が読み解く2020大学入試改革

共通テストで存在感増すリスニング 英字紙記者が試行問題に挑戦「難しい」

2020.01.27

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金 漢一
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来年度から始まる大学入学共通テスト(共通テスト)の英語のリスニング問題に焦点を当てます。配点の比重は大学の判断で変えられるとはいえ、センター試験で50点だった「リスニング」が、「リーディング」とともに同じ配点の100点となり、存在感を増してきたのは確かです。2018年の試行調査の出題をもとに傾向と対策を探ってみます。(金漢一)

大学入試センターのサイトに公開されている試行調査の「リスニング」問題に、記者も挑んでみた。試行調査は、共通テストの問題作成方針の決定に必要な分析・検証を行うことが目的で、出題から共通テストの傾向が見えてくる。7万人近い高校2年生と3年生(当時)が試行調査を受けたという。

リスニングの試験時間は、センター試験同様に30分だったが、設問はセンター試験の25問から37問に増えている。センター試験の音声は、教材や参考書の付属CDなどでよく耳にするようなきちんとした英語。しかし試行調査では明らかに非英語圏の話者とわかるような音声も混じっていた。様々な英語を耳にする時代に合わせたものだろう。

試験の前半は2度音声が流れる問題があり、後半は1度だけになる。2度音声が流れる問題はセンター試験と比べると間が短くなっているように感じた。

「特に難しい」と感じたのは、米国の大学で講義を聴いているという設定の問題だ(図1)。テーマは、技術革命と職業の関わりについて。約250語の英語(図2)が一気に耳に流れ込んできた。しかもこの問題の音声が流れるのは一度きりだ。

英字紙記者が読み解く2020大学入試改革
2018年に実施された試行調査のリスニング問題の一例。この「第5問」は3ページにわたっている
英字紙記者が読み解く2020大学入試改革

講義という設定だけあって、学術的というべきか、耳慣れない単語が多い。前もって、状況設定と問題を読む時間を1分間与えられるので、問題から音声の内容は予測できるが、まとまった量の英語を聞く機会がない受験生はとまどうのではないか。記者は近年、長い英語を集中的に聞く機会がなく、この問題には消耗させられた。

この問題は、身近な話題や社会的な話題を扱った報道や講義などを聞いて概略や要点をとらえたり、複数の情報を聞き取って判断したりすることを測ることが狙いだという。

受験生は、環境問題や IT、少子化など、よく報道で取り上げられるような話題に触れておく必要がある。そして、そのような話題に頻出する英単語も前もって学習しておくことだ。リーディングの場合、わからない単語があっても、文章の前後関係や単語の語根や接頭辞などで意味を推測できる場合があるが、リスニングでは、わからない言葉はただ通り過ぎるだけだ。単語がわからないとメモも取れない。聞くことに集中して、メモを取る余裕がない生徒も多いはずだ。

まとまった英文を聞くことに慣れておく必要もあるだろう。AWなどで英文ニュースに慣れたり、ポッドキャストなどを活用して長文に耐えうる耳を作っておいたりすることが肝要になる。読む場合もそうだが、長文の時は文頭にくる副詞や副詞句などで話の流れをつかめる場合が多い。図にある問題の場合、For example と来たらその後に具体例が示され、As I mentioned earlier と来たら、すでに出てきた内容が繰り返される、などと予測できると、心構えもできてくる。

ハイキング・登山の料金を問う問題もとまどった。基本料金の他、時間によって値段が追加される。リスニングに加えて、計算もしなければならない。このように全般的に聞き取ったうえで、そこからさらに思考させる問題が多い。それ以前に聞いたセンター試験のリスニング問題に比べると設問も多くはるかに疲れる。このように共通テストでは、複数の情報を組み合わせ思考を繰り返させるような問題が多くなりそうだ。その他、選択肢を2度以上使ってもいい問題も登場し、選択肢を使ったからと消去できない場合もある。設問がセットになっていて、すべてに正解した場合のみ点を与えられる問題もあった。

大手予備校の河合塾・アセスメント事業推進部の下松淳子(くだまつ・あつこ)部長は、民間試験導入の見送りなど混乱はあるが、英語の4技能が重視される方向性は変わらないと分析。「このような問題に対してどう対応するのか。これはどんな学力を養おうとしているかという出題側のメッセージでもあります。つまり目の前の形式の変更そのものより、受験生は何を求められているのかをきちんと押さえておかないといけません」と話している。

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