連載・親子で「考える」を動かそう! 「私」を伝える編

「“私”のことばで、その『当たり前』を崩す」 渋谷教育学園渋谷中学校・算数の入試問題から

2020.02.06

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日能研
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キミってどんな人? 考えを聞かせて?――。中学入試問題は、それぞれの“私”に問いかけてきます。知識だけでなく、身の回りや“私自身”とつなげて考えなければなりません。あらかじめ準備できるような「正解」はありません。子どもたちの数だけ答えがあるはずです。親子でアタマとココロを使って、「考える」を動かしてみませんか?

(問題文の一部を変えている場合があります)


”私”を伝える編の3回目は渋谷教育学園渋谷中学校の算数の問題です。

 渋谷教育学園渋谷中学校 2018年/算数

渋男君は、算数のテストでクラスの上位半分に入ったら、ごほうびをもらう約束をお母さんとしました。テストが終わり返却されたところ、渋男君はクラスの平均点よりも低い点数でした。

それを見たお母さんは「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていないわね。」と言いました。


(問)「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていない。」とは限りません。その理由を、お母さんが納得するように説明しなさい。

日能研の解説

小学生の子どもたちにとっては、世界でいちばん優しい人、でも、説得するのが最も難しい相手……。それは「お母さん」かもしれません。そんな「強者(つわもの)」に、クラスの平均点よりも低い点数の自分の答案を見せながら、「平均が必ず真ん中の位置にくるとは限らない……」なんてこと、どう納得させましょう!?

自分が理解していることであっても、相手の状況に合わせて、わかりやすく伝える――。

「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていない」というお母さんの発言は、一見、当たり前のように思われます。ところが実際は、「平均点よりも下なのに、上位半分に入る」ということがあり得るのです。

この入試問題からは、二つのメッセージが読み取れます。

一つは、「当たり前を疑う」ということ。当たり前のように感じることでも、感覚ではなく、理屈をもって正しいか否かを判断することが大切だというメッセージ。本当にどんな場合についても正しいといえることなのかどうかを、極端な場合を想定して突き詰めて考えることで、その真偽は明らかになっていきます。

そして、もう一つは、どのように話せば、簡潔に説得力がある説明ができるのか、「わかりやすく伝える」を考えてほしい、というメッセージです。

問題文の設定では、「お母さんが納得するように説明しなさい」とあります。「平均点よりも下だから、上位半分には絶対に入っていない」と考えているお母さんに伝えるには、どのような具体例を用いればよいか、一目瞭然の反例をどのように設定して提示すればよいかなど、伝えたいことは決まっていても、それをどれだけ明確に渡してあげることができるのかを考えるには、また別のアタマやココロを使うはずです。「絶対に入っていない」と言っている相手に、ひるむことなく、“私”を伝えたいものですね。

この問題の答案からは、受験生一人ひとりの“私”が持っている「わかりやすく伝える」ための様々な工夫や技術を見ることができたのではないでしょうか。一人ひとりの“私”と出会いたい、という私学の中学入試問題の思いを感じることができる問題です。

さて。
普通、テストを行うと、平均点よりも高ければ、上位半分に入っていることがほとんどです。ところが、極端な場合を考えてみると、必ずしもそうとは限りません。

例えば、「誰か1人だけが圧倒的に点数が高く、その他の人は、ドングリの背くらべのとき」を考えてみましょう。

ここでは、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん、Fさんの6人がテストを受けて、Aさんだけが100点を取り、残りの5人は、順に12点、11点、10点、10点、7点だったとします。
このときの平均点は、(100+12+11+10+10+7)÷6=25(点)になります。

日能研(3)グラフ

この場合、上位半分に入っている人は、AさんとBさんとCさんですが、平均点よりも上だった人は、Aさんただ1人です。つまり、BさんとCさんは、「平均点よりも下なのに、上位半分に入っている人」となり、問題でお母さんが言っていた場合にはあてはまらないことがわかります。
お母さんの「当たり前」は崩せるようですね。

子どものみなさん。「でもね、お母さん」と、“私”の考え、思いを、大いに語って、納得させてください。

保護者の皆さん。どうぞ、お子さんの説明を遮(さえぎ)ることなく、まずは最後まで耳を傾けてみてください。

さあ、親子で「考える」を動かして、納得がいくまで話し合ってみてください。

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