大学入試 今年の傾向は?

大学入試、私立は今年も「安全志向」 地方の国公立大目指す動きも

2020.02.03

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斉藤 純江
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本番を迎えている大学の一般入試。全体の受験倍率は年々、下がっているものの、来年度の大学入試改革を前に浪人を避けたい心理や、国の政策により大規模私立大の門戸が狭まっている影響で、受験生の「安全志向」が予想されます。志望校選びのポイントは?

■私立大 「安全志向」が続く
「私立大の定員厳格化は今年の入試でも大きく影響しており、2020年度から始まる大学入学共通テストを避けたい受験生は『安全志向』。受験生のボリュームゾーンは昨年よりさらに難易度の低い大学へと向かう傾向です」

教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務はそう語る。

「定員厳格化」とは、定員に対して一定基準以上の学生を入学させると大学が国からもらえる私学助成金がゼロになる仕組みだ。大都市圏の大学に学生が集中する状況を変えるため、文部科学省が16年度から段階的に進めてきた。定員8千人以上の大学は最も厳しく、4千~8千人の大学はそれに次ぐ厳しさとなっている。

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この政策に対応しようと、大規模大が合格者数を絞った結果、難易度が上昇。確実に合格したい受験生は、より難易度の低い大学を受験するようになった。大学通信のデータを見ると、早大や慶大、関西学院大、同志社大などの難関大は、15年から18年にかけては実質倍率が上がり、厳しい入試になったことがわかる。ただ、19年を見ると落ち着きつつある。一方、受験生が倍率の上がった難関大を敬遠し、より難易度の低い大学へと流れてその群の大学の倍率が上がった。

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こうした大学への進学者が多い高校では進路指導が難しくなっている。4割強の生徒が大学や短大に進学するという埼玉県立草加東高校もその一つ。進路指導主事の篠原秀雄教諭は「一昨年ごろから、模試でA判定の生徒が首都圏の私立大を不合格になることが増えた。偏差値や過去の実績をもとに戦略を立てるこれまでの進路指導が通用しなくなっている」と語る。

一般入試の厳しさと受験生の「安全志向」は、推薦やAO入試の応募増加にもつながった。篠原教諭は大学の入試担当者から「以前よりも学力の高い層の生徒が推薦やAO入試で入ってくる」と言われたという。

推薦やAO入試の合格者が増えれば、一般入試の合格枠が狭くなり、一般入試はいっそう厳しくなる。

では、受験生は何をポイントに大学を選べばいいのか。安田常務は「確実に受かりそうな大学を確保したうえで、必要以上に怖がらず、本当に行きたい大学に挑戦を」と助言する。「昨年の入試結果を分析すると、多くの難関大は前年より志願者が減り、実は狙い目だった。受験人口は1992年をピークに減り、親世代と比べれば大学に入りやすいことは間違いない」

また、ここ数年は3月下旬まで補欠合格を出す大学も多い。「年度末になっても、大学からの電話やメールは確実にチェックを」と、安田常務は呼びかける。

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■国公立大 地方を目指す動きも
英語民間試験の活用や記述式問題の導入の見送り、読解力を問われる問題の増加――。センター試験にかわり2020年度に始まる大学入学共通テストは混迷しており、国公立大の受験生も浪人を避ける「安全志向」の傾向は変わらないようだ。

旺文社の教育情報センターによると、19年の入試では、東大や京大など難関国立大の多くで、志願者数を合格者数で割った倍率が下がった。今年も難関大を敬遠する傾向は続きそうだという。一般入試の実施結果調査では、19年は18年に比べ、国立大が「志願者前年並み、合格者1%減」で、倍率は18、19年ともに4.2倍だった。

一方、公立大は「志願者3%増、合格者2%増」で、倍率は18年の4.7倍から、19年は4.8倍に増えた。国立大と併願可能な大学もあるうえ、私立大の難化を警戒した志願者が少数科目で受けられる公立大を受験した影響もあったとみられる。

月刊誌「蛍雪時代」大学入試分析チーフの小林弘明さんは「昨年は『都内の中堅私立大に落ちたけど、より難易度の高い地方国公立大に合格した』という受験生もいました。都市部の私立大が厳しいなら、視点を変えて地方の国公立大も考えてみては」と話す。「3教科で受けられる国公立大もあり、近年、都市部の高校から地方の国公立大へという流れは広がりつつあります」

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鳥取大学は高校生をもつ保護者向けに、「地方の国立大の魅力」などと題したパンフレットを発行している。

東京都昭島市の都立昭和高校は、地方国公立大の担当者を招いた説明会を開くなど地方への進学も視野に入れる。国公立大合格者は12年度の1人から増え続け、昨年度は55人に。進路指導担当の西村和美先生は地方国公立大の魅力を「そこでしか学べない研究分野があったり、少人数の教育環境が充実していたりする点」と話す。

卒業生は岩手大で獣医師を目指したり、鳥取大で生命科学の研究に励んだりと、充実した学生生活を送っているという。「生徒が何を学びたいかを軸に全国を見渡せば、いろんな選択肢がある。私立大の定員厳格化は、生徒や保護者に、地方の国公立大を含めて進路を柔軟に考えてもらうきっかけにもなった」と語る。

西村先生はセンター試験を終えたこの時期、私立大志望の生徒にも、地方国公立大の情報を提供してきた。センター試験の成績のみ、または少ない科目で出願できる大学や首都圏に試験会場を置く大学などを一覧にして知らせる。「これからの時期は精神面のコントロールが大切。国公立大で1校、合格を確保し、私立大に臨む作戦もあります。最後まで希望の進路を諦めず、努力の成果を生かす方法を考えて」と話す。

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