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保護者会への参加者数No.1関西大学 「そこまでやるかというほど手厚い」

2020.02.12

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西島 博之
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いまの時代、小、中、高校だけでなく、大学に保護者会があるのも珍しくない。関西大学教育後援会は全国にさきがけて創設された保護者会だ。最大の関心事である子どもの就職問題だけでなく、さまざまな活動を通じて大学と保護者のかけ橋の役割を果たす同会は他大学の模範ともなっている。(撮影/MIKIKO)

「わが子の母校は、わが母校!」

2019年5月に開催された関西大学教育後援会の総会には、全国各地から6千人を超える保護者が参加した。学部学生の5人に1人の保護者が出席したことになる。教育後援会は戦後間もない1947年、大学と家庭のかけ橋となる保護者組織として発足。当初は、ベンチや夜間照明の設置、体育会館の寄贈など、戦災で荒廃したキャンパスの再建に精力的に取り組んだ。

教育後援会幹事長や大学の理事長などを歴任した森本靖一郎さん(関西大顧問)が話す。

「1950年代半ばには、大学教育は教員と学生だけで成り立つものではなく、家庭教育が前提になるべきだと考えるようになりました。そこで『教育の礎は家庭にあり』との標語を掲げ、保護者を巻き込んで活動してきました」

保護者会への参加者数No.1関西大学
2019年5月に開催された関西大学教育後援会の総会には全国から6千人を超える保護者が出席した。総会に続く学部別教育懇談会では、各学部の教育方針についての説明などがあり、保護者との個人面談も行われた(写真提供/関西大学教育後援会)

いまでは、①遠隔地に住む保護者のための地方教育懇談会の開催、②就職説明懇談会の開催、③会報「葦」の発行、④セミナーハウスの運営など、多彩な事業を展開する。岡野新会長が語る。

「子どもがちゃんと勉強しているか、就職はどうなるんだろうといったように、保護者はさまざまな不安や悩みを抱えています。教育後援会は、そんな保護者の気持ちに寄り添えるような情報発信、活動に努めています」

全国の主要約30都市で開催する地方教育懇談会には、毎年約1千人の保護者が参加。大学側から理事長、学長、各学部長や教育後援会の役員など約30人が赴く。学生の学業成績や授業の出席状況などを記載した資料を用意し、保護者一人ひとりと面談する。15年度の教育後援会会長を務めた芋縄隆史さんが話す。

「保護者のニーズをきちんと把握した大学と教育後援会の活動は、『そこまでやるか』というほど手厚いものです」

「わが子の母校は、わが母校!」。こうして大学・教育後援会と保護者の間に密接な関係が築かれ、他大学を卒業した保護者も関西大のファンになっていくという。

最新情報を保護者一人ひとりに届ける

関西大学教育後援会が年3回発行している会報「葦」も、全国の保護者一人ひとりにキャンパスの最新情報や話題を届ける「大学と家庭の心のかけ橋」としての役割を果たしている。

1958年、「関大教育後援会報」として創刊。80年発行の第55号から「葦」と改題した。時期に応じて、保護者がどんな情報を求めているのか、大学の教員ともしっかり打ち合わせて編集企画を考えるという。たとえば、2019年夏号には、5月開催の総会の様子や参加した保護者の声、大学院への進学案内などの記事を掲載している。教育後援会で「葦」の編集を担当する広報委員長の箕口昇さんがこう話す。

「総会や地方教育懇談会で、われわれが直接懇談できるのは一部の保護者の方だけです。『葦』はすべての保護者の方に情報発信でき、大学の『いま』を身近に感じてもらえます。これも、教育後援会が発展し続ける理由の一つだと思います」

保護者会への参加者数No.1関西大学
写真左から、川畑一成さん(関西大理事/教育後援会幹事長)、箕口昇さん(広報委員長)、岡野新さん(会長)、森本靖一郎さん(関西大顧問/常任顧問)、芋縄隆史さん(15年度会長)、大嶌征次さん(千寿会〈卒業生父母の会〉幹事長)。他大学の卒業生が役員に就くことも多い

会報だけでなく、教育後援会では実にさまざまな出版物やグッズの制作なども行っている。新入生の保護者に配布している大学ガイドブック「みちしるべ―関西大学の4カ年―」はキャンパスの紹介、学生生活に必要な情報、専任教員全員のプロフィルを紹介する「先生の横顔」などを網羅した約600ページのもの。他大学では大学事務局が発行することが多い就職サポートブックも、大学のキャリアセンター事務局が監修し、教育後援会が発行している。

一方、グッズ関係では、新入生にはモバイルバッテリーを、卒業生には卒業証書ファイルや大学名の入った名刺入れなどを記念品として贈呈している。物心両面で学生や保護者を手厚くサポートする。

保護者会への参加者数No.1関西大学
教育後援会から新入生に贈られるモバイルバッテリー(写真中央)、卒業生に贈られる卒業証書ファイル(左)などのグッズ

「開かれた大学」を具現化する市民講座

関西大学教育後援会は、保護者へのサポートにとどまらず、大学のさまざまな学術研究や文化事業への支援も行っている。代表的なものに1972年、関西大の研究チームによって発見された高松塚古墳(奈良県明日香村)の壁画の発掘調査への支援、関西大100周年記念事業として86年から3次にわたって派遣された日・印共同学術調査団(祇園精舎跡の発掘調査)への支援、2019年7月に世界文化遺産に登録された百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群(大阪府)の学術調査への支援、などがある。

関西大による高松塚古墳の壁画発見を機に創設された「関西大学飛鳥文化研究所・植田記念館」は、教育後援会が実質的に運営するセミナーハウスだ。同研究所と明日香村教育委員会の共催による市民公開講座「飛鳥史学文学講座」は75年に始まり、以来44年にも及ぶ息の長い独自の取り組みとなっている。教育後援会として「開かれた大学」を具体的に支援するもので、ほぼ毎月1回、関西大の教授を中心とする著名な講師を招いて開催されている。18年6月には通算500回を数え、19年12月現在、延べ約10万6千人が受講している。

「大学と家庭との連絡を密にして、教育事業を援助し、併せて会員相互の親睦を図ることを目的とする」。教育後援会の事業は、既存の保護者会の枠を超えて広がる。

保護者会への参加者数No.1関西大学
千里山キャンパスの校友・父母会館にある教育後援会事務局。専従スタッフも充実している

メモ

関西大学 1886年に開校した関西法律学校を前身とし、1922年、法、商学部の2学部を持つ大学として開学。「学理と実際との調和」など「学の実化(がくのじつげ)」を学是(理念)に掲げる。48年、新制大学に移行。2010年に社会安全学部、人間健康学部を設置。現在、13学部を擁する。本部所在地は大阪府吹田市。学部学生数は2万8648人(2019年5月1日現在)。

保護者会への参加者数No.1関西大学

<コラム>「就職活動で親は子どもにどう接したらいいのか」というテーマで保護者会を開くと多数の父母が集まる。ただ、保護者会は学生の就職活動を支援するためだけにあるわけではない。学生生活の有意義な過ごし方、勉強の仕方なども話し合われる。関西大の保護者会「関西大学教育後援会」の趣旨が、多くの大学の保護者会の範となっている。「誰よりもまずご子女を支える皆さま方に大学教育の実情をよく理解していただき、さらに教育研究の充実・発展と、ご子女の実りある学生生活を願いつつ果たしている『かけ橋』としての役割に、大きな期待が寄せられています」(同会ウェブサイト)。

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