『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

英語の授業でレゴの家作り!? 「世界の教師トップ10」髙橋さんが語るアクティブラーニング

2020.03.05

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桜木 建二
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教育改革の一環としてこのごろ盛んに聞く言葉が「アクティブラーニング」だ。従来の一方的な詰め込み式授業ではなくて、学ぶ側が主体性を持って能動的に学習へと取り組めるカリキュラムや授業形態をとるべし、というものだな。実践例も増えてきているようだが、これをいち早く、本来の意味合いにおいて、高いレベルで取り入れてきた先生がいるぞ。工学院大学附属中学校・高等学校の中学教頭で、教科としては英語を教えている髙橋一也さんだ。

日本でいち早く授業に取り入れた

桜木:このところ、「アクティブラーニング」が注目されているな。

髙橋:そうですね、確かにアクティブラーニングとは昨今、よく耳にするようになりました。でもこの言葉、横文字だから海外では浸透しているのかといえば、じつはそうじゃありません。ほぼ日本でしか聞かないものなんです。というのも、多くの国ではこれが当たり前のものだから。わざわざ唱えることでもないので、言葉としてもほとんど使われないのが実状です。
それに、アクティブラーニングとは何らかのスキルやメソッドを指すものではありません。考え方、思想のことです。ですから「こういう方法に則ってやればアクティブラーニングが完成する」といった確立した方法なんてありません。教える側や学校を運営する側がそれぞれに創意工夫して、主体的で能動的に学べる場をつくっていかないといけないのです。

教育界のノーベル賞、トップ10に選出

桜木:なるほど、ならばアクティブラーニングを成立させるには、どういうやり方があるのか。どんな授業ならアクティブラーニングになり得るのか。留意点はどこかなど、ぜひ教えてもらいたい。
なにしろ、髙橋さんは2016年に、教育界のノーベル賞といわれることもある「グローバル・ティーチャー賞」で、トップ10に選出された経歴を持つのだから。

髙橋:もともと私は米国で、学習科学理論やインストラクショナル・デザイン(最適な学習効果が上がるための計画)などを学んで帰国し、教職に就きました。主に英語の授業を通して、アクティブラーニングの実践をしてきましたので、その様子をお話ししましょう。

ICTを駆使して活用の時間を確保

桜木:うむ。さらに、先生の授業では、ICT(情報通信技術)を活用したデジタルツールを取り入れるのはもちろん、社会との結びつきも重視して授業が組み立てられていると聞く。そのあたりも、加えて聞かせてもらいたい。

髙橋:はい。それでは、順を追ってお話ししましょう。
まず、主体的・能動的に学ぶアクティブラーニングの目的を言い換えておきましょう。従来の知識偏重の教育は「知っている」状態になることを評価していましたが、その目標を「理解する」状態へと変える必要があります。知っているだけじゃなくて理解したというには、ものごとをより具体的にとらえて、自在に使いこなせるようにならなければいけません。
そこで私はまず、ICTをフル活用します。
たとえば通常の授業でよく見られる板書の書き写し、これは時間短縮のために省略します。覚えなければいけない事項は、事前に生徒へデジタルツールを通じて配布しておけばいいので。授業でもタブレットを活用して、共有する知識のやりとりは手間をかけずにおこないます。
そうして文法や英単語など最低限覚えなければならない事柄は、通常なら50分かけて解説などするところを20分ほどに凝縮。残りの30分を覚えた知識を理解し活用するためのグループ学習やディベートにあてます。

英語の時間に気候の調べ学習!?

桜木:日本全国どこでも見られる英語の授業風景、先生が板書をして生徒がそれを書き写したり、生徒を順に指名して長文を一文ずつ訳していったりというような様子とは、ずいぶん異なる授業風景だ。

髙橋:そうですね。
文法、単語、長文読解などに取り組むのは授業の一部であって、メーンはどちらかといえば話し合いや発表の時間となります。たとえば、中学の英語でブリザードをテーマにした文章が出てくれば、世界の気候について生徒たちが調べる課題を出す。そうしてある気候の土地ではどんな住居がふさわしいか、レゴブロックを使って表現してもらうのです。
生徒は自分たちがつくり上げたレゴ作品をもとに、なぜこの形態にしたのか、どこに着目したかを英作文で発表します。その過程で、英語の運用能力を身につけていくのです。

桜木:確かにそれなら、英語で必要なことを伝えようという意欲が、生徒の側からごく自然に湧いてきそうに思えるな。レゴを持ち出すというのも、何も奇をてらうとか、遊び心からというだけじゃないのだろう。

レゴを使っていいたいことを見える化する

髙橋:レゴでいったんいいたいことをかたちにするというのは、英語は、いえ言葉そのものは、自分の考えを表現する道具であるということを明確に感じさせる過程でもあるのです。
言葉とは何かを伝えるためにうまく使うものであり、それがときに日本語、場合によっては英語だということ。そう実感できれば、語学を学ぶ意味も深く理解できるはずです。

桜木:そうだ、意義や意味を納得できればこそ、主体的な学習意欲も湧くというものだろう。次回も引き続き、髙橋さんの指導法について聞いていくぞ。 

ドラゴン桜高橋先生1知っているだけじゃなく

(ライター・山内宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

話を伺った人

髙橋一也さん

1980年1月1日、秋田県生まれ。工学院大学附属中学校高等学校・中学教頭。慶應義塾大学・大学院で中世英文学、米国・ジョージア大学教育大学院でインストラクショナル・デザイン、オランダ・ユトレヒト大学大学院にて応用認知心理学を修める。2016年、グローバル・ティーチャー賞のトップ10に日本人として初めて選出される。現在、一般社団法人グローバル・ティーチャー・プライズ・ジャパンの代表理事も務める。

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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