『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

アクティブラーニングで学びを楽しめ 詰め込み学習より理解と活用重視して

2020.03.18

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桜木 建二
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前回は、教育界のノーベル賞・トップ10に選ばれ、米国で効果的な授業デザインについて学んだ工学院大学附属中学校高等学校・中学教頭の髙橋一也先生に、アクティブラーニングとは何か教えてもらった。今回は、意欲の高め方、先生や生徒の学ぶ姿勢として望ましい姿について話してもらうぞ。

リアルな社会問題を取り上げ意欲を高める

桜木:髙橋さんのアクティブラーニングの授業では、ディベートやグループでの調べ学習などを多く取り入れているが、そのときの題材選びも重要ではないか?

髙橋:はい。

私の授業では、難民問題など、世界中で現実に起きている、喫緊の話題を取り上げるのを基本としています。“This is a pen.”のような意味のない英文を覚えることに、主体的で能動的になれといっても無理でしょうからね。

理解したい、使ってみたいと思える内容で学ばなければ、意欲を保てといわれても難しい。学校の現場ではとかく現実の社会とリンクしている生々しい事象を避ける傾向にありますが、むしろ逆にするべき。できるだけリアルで時代性のある、そして生徒たちが自然に関心を持つ内容を扱ったほうが効果的です。

考えてみてください、教室の内側に閉じこもっている知識なんて、そこから一歩でも外に出たら通用しません。扉を開けて、どんどん積極的に社会とつながってこそ意味がある学びができるはず。学びは常に拡張性を意識しておかなければいけません。

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ドラゴン桜マンガ2知的好奇心
『ドラゴン桜』パート1から (C)三田紀房/コルク 

基礎→応用の流れをあえてくずす

桜木:思えば教育の現場だって社会の一部だ。時代に応じて変化していくのは当然のことだな。教える側も学ぶ側も、昔ながらのやりかたをただ踏襲しているというのではまずい。そんな危機感を抱くべきだということなのだな。

ただ、現実世界でリアルに起きていることを題材するやりかたには反発も伴いそうだ。いきなり応用問題を生徒に押しつけるのはよくない、基礎的な学力を網羅的に押さえてからでないと、浮ついた知識しか習得できないではないか、などと。

髙橋:そうした考えも根強いとは思います。学校ではまずはとにかく基礎をしっかり修めましょうという発想ですね。でも、考えてみれば勉強は「基礎=つまらない反復練習」→「応用=創造力を駆使した実践」という道筋をたどらねばならないというのは、あまり根拠がないのではないでしょうか。

そうした順序を守っていては、基礎ができたあとでいざ創造力を発揮して応用をしようと思っても、そのやりかたすらわからない。応用の方法を学校でまったく学んでいないようでは、そうなってしまうのが必然ですよね。
私は日本の学校をもっと、子どもの創造力がちゃんと重視される場にしていきたいのです。

ドラゴン桜マンガ4社会の疑問
ドラゴン桜マンガ5常に疑問を
『ドラゴン桜』パート1から (C)三田紀房/コルク 

先生はファシリテーター&コーチであるべし

桜木:教える側がしっかりと学び、もっと体制を整えるべきなのだ。そうすれば学校は、浮世離れした基礎だけを教える場から脱却できるはずということなのか?

髙橋:そうです、アクティブラーニングを機能させていくには、先生の側の努力や能力がぜひとも必要です。教えるべき知識をぎゅっと凝縮して伝えるティーチングの力を、まずは研ぎ澄ませる。そのうえで知を「理解する」段階へ進めるための授業内容をデザインしてプロデュースしなければいけない。

生徒たちが自主的に学びを進めていけるよう、うまく導くファシリテーターファシリテーターグループ学習などの進行役。あくまで中立的な立場から活動を支援し、自ら意見を述べたり意思決定に加わったりすることはない。客観的な立場から適切なサポートを行うことで、参加者に主体性を持たせることができるとされる。の役も担わなければいけませんし、授業で生徒たちが進めた思考をフィードバックしてあげるコーチの役割も重要です。

桜木:つまりこれからは、先生がひとりで何役もこなさなければいけないのだ。

確かにそこまでできなければ、AIによって配信される画像を見せておいたほうが、能率も効率もいいということになってしまいかねないな。

髙橋:アクティブラーニングにしっかり取り組むといいのは、先生も大いに成長できるからです。これからの先生という存在は、相対的にものを知っている人というだけにとどまっていては務まりません。「学びの共同体」とでもいうべき場をつくり上げ、そこに生徒たちを楽しく参入させて、同時に自分もその場に飛び込んでいく姿勢が求められるんじゃないでしょうか。

桜木:教師という職業のイメージがずいぶん変わってしまいそうだ。けれど、髙橋さんが示すこれからの教師像のほうが、やりがいも感じられて楽しそうにも思えるじゃないか。

髙橋:もちろんここで使った先生という言葉を、親と置き換えることも可能ですね。ぜひ一考していただければと思います。

詰め込み学習は効果なし

桜木:あるべきアクティブラーニングのかたちを教えてもらってきたが、ここでひとつ疑問に思う。ではアクティブラーニングに注力したほうが、本当に学力は伸びるのかどうかという点だ。英語でいえば、脇目もふらず単語を覚え文法を身に染み込ませたほうが、受験には有効なのではないか……。

髙橋:そう考えてしまうのもわかりますが、人がどう学習するのかという最新の研究によると、詰め込み式がさほど効率的ではないという知見もいまは多く出ています。むしろコンテンツ込みで学ぶ「内容統合型学習」の効用が注目されていますよ。

それにこれからは、単に受験に通りさえすれば本当にいいだろうかという問題もある。知識を一時的に詰め込んで、たとえ東大に受かったとしても、そのままでは論文ひとつまともに書けないようなことになってしまう恐れがあります。

大学に入ってからも、卒業して社会に出てからも、これからの時代は自分で学び続けることが必要です。そういう社会になっていくと予想されるからこそ、主体的かつ能動的な学びを唱えた教育改革がおこなわれる予定なのですよね。ならば小・中・高校で学ぶうちから、知識を仕入れるだけじゃなく理解し活用できる学びを積み重ねていかなければ。

正解を求めるのをやめよう

桜木:学ぶ側の生徒としては、学校の授業の進歩を待たず、みずからアクティブラーニングへと踏み出していく方策はあるだろうか。

髙橋:ひとつは、何事もすぐに正解を求めないようにすることです。マークシート式のテストには答えがひとつしかありませんが、現実には問いに対する答えは常にいろいろ用意されている。

数学の単純な計算問題だって、解に至るプロセスはたくさんあるものですよね。そこに目を向けて、一応の答えが出てもそこで考えることをやめず、あれこれ思考を巡らせてみるような姿勢が重要です。

英語なら、構文を丸ごと覚え込むのもいいですが、たとえば漫画の吹き出しの中のセリフを英語にしてみたり、好きな英語の曲を覚えて人前で歌ってみたりすると、状況に応じた生きた英語を考える練習になります。

アクティブラーニングという言葉とともに、プレイフルラーニングにすることも意識するといいのではないでしょうか。つまりは、楽しく学ぶことを心がける。そのほうがモチベーションが高まるのは明らかですし、無理やり知識を詰め込むよりも、じつはかなり効率的だったりするものですよ。

桜木:学びを楽しんでしまえという考え、ぜひ実践してみたいところだ。

ドラゴン桜高橋先生2創造力を駆使して知を

(ライター・山内宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

話を伺った人

髙橋一也さん

1980年1月1日、秋田県生まれ。工学院大学附属中学校高等学校・中学教頭。慶應義塾大学・大学院で中世英文学、米国・ジョージア大学教育大学院でインストラクショナル・デザイン、オランダ・ユトレヒト大学大学院にて応用認知心理学を修める。2016年、グローバル・ティーチャー賞のトップ10に日本人として初めて選出される。現在、一般社団法人グローバル・ティーチャー・プライズ・ジャパンの代表理事も務める。

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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