国語のチカラ ~読解力アップの教科書~

中学入試の国語、読む力をつけるには 「書き言葉の王道」新聞を使った学習法

2020.02.27

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南雲 ゆりか
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中学入試の国語では、「読む力」があることが、何をおいても大切です。子どもたちが国語でつまずく原因は、「読めていない」ことがほとんど。そこで、南雲国語教室では、「読む」指導を重視しています。読む力をつけるにはどうしたらいいのか。今回から2回にわたってご説明します。今回は、新聞を活用した学習法についてお話しします。

子どもたちはなぜ、「読めない」のでしょうか? それは、中学入試で取り上げられる素材文が大人向けで、内容も表現も小学生のレベルを超えているからです。読書を子どもまかせにしていると、子どもレベルにとどまってしまいます。受験が関係なければそれでよいのですが、受験生には相応の練習や慣れが求められています。

「読む力」とは、大人向けに書かれた文章の内容を理解する力のことです。まず字面上の意味が理解でき、さらに常識によって行間を埋められることが求められます。そこで、少し大人が手助けして、ハイレベルなものを読む経験を増やしていく必要があります。経験を積めば、読む力は必ずついてきますので、頑張りましょう!

新聞に親しむ

読む力をつける教材のひとつに「新聞」があります。新聞には、「書き言葉の王道」が学べるというメリットがあります。また、世の中で注目されていることがらにも触れられるので、社会や理科の時事問題対策にもなります。

新聞を読むメリットは?

(1)5W1Hが明確に示されている。

(2)「結論」→「その理由説明」の文章構造が学べる。

(3)新聞記事は複数の人がチェックして出しているので、正しい書き言葉が学べる。

(4)今、世の中で起きていることが学べる。

(5)子ども向け新聞なら、漢字にルビがついているので、上の学年で習う漢字も読める(覚えられる)。写真やイラストが多用されているので、子どもの興味を引く。

どれくらい、どのように読ませるといいか?

※子ども向け新聞、一般紙、いずれも1日20~30分くらいで取り組めるといいでしょう。

子ども向け新聞

3~4年生までにおすすめ。まずは、全ページに目を通してみて、見出しの気になった記事や好きなコラムを1本読ませます。

漫画ばかり読んでしまうという悩みも耳にしますが、それでもかまいません。新聞を広げること自体に興味を持たせることから始めてください。ページをくっているうちに、何かしら興味を引く記事が出てくるでしょう。そうしたら、「今日はこれを読んでみようか」と読み聞かせたり、お子さん自身に読ませたりしてください。ある程度読む力のあるお子さんなら、「どんなことが書いてあるの?」とたずねて説明させるのもよいでしょう。

一般紙

5年生以上におすすめ。1面の記事などを1日1ページ程度読ませます。

特に、1面には情報が凝縮されています。たとえば、「複数のハッカー集団、攻撃か いずれも中国系 三菱電機」(朝日新聞2020年1月22日付、朝刊1面)という見出しがあれば、「ハッカーって何?」「どんなことが起きたのかな?」と問いかけながら、リード文を読みます。これだけでも新しい語句や知識に出合えます。ここで終わりにしてもいいですし、興味があるようなら、先を読み進めてみてください。途中でギブアップしてもかまいません。

次に、ぜひ、チェックしておきたいのが、右側のインデックスです。ここに目を通せば、今、どんなことが起きているのかわかります。おもしろそうなら記事も読んでみましょう。

時間が許せば注目しておきたいのは、「天声人語」です。大学入試にもよく出ますし、ベテラン記者による、大人の書き言葉が学べます。さらに、大人の目から見た社会のありよう、それに対する考え方にも触れることができます。

目を通すだけなら2分もあれば読めるでしょう。それだけでも大人の文章に触れる経験として有効ですが、小学生でも読める内容のときは音読させましょう。要約は無理にさせなくてかまいません。

これは!という内容のときは、視写させるのもいいですね。音読しながら視写すると、耳からも文章が入ってきますから、書き言葉を習得するのに有効です。

ひとつの記事をさらにていねいに読む工夫

自己流にスクラップする

気になる新聞記事を切りぬいて、必要なメモを書き加えれば、自分だけの参考書になります。以前、南雲国語教室に通っていた6年生の保護者の中に、下の写真のようなスクラップブックをつくっていた方がいました。

子どもに読ませたい記事をピックアップしてルーズリーフに貼り、難しそうな言葉に印をつけてノートの余白に意味を書き込んでいました。勉強の合間や移動中に読ませていたそうです。内容が理解できたところで、お子さんに要点をマーカーで線引きさせ、最後に「読んだよ」という印としてシールを貼っていました。

時間が限られている6年生にはちょうどよい効率的な活用法です。

読解教材として使う

新聞記事(コラム)を題材に精読の練習をすることもできます。記事の内容を確かめる問いをつくってお子さんと取り組んでみましょう。

つくりやすく、学習効果が高いのは、①「主語(主部)探しや指示語の内容についての問い」②「文の組み立ての問い」です。以下に具体例を示しますので、参考にしてみてください。

【例文】

「ボール遊びができる場所を増やし、子どもたちに外遊びの楽しさを知ってもらう。ゲームやスマホが広まっている現代だからこそ、そんな対策が求められると思いました」(朝日小学生新聞2020年1月15日付1面「天声こども語」から抜粋)

①  主語(主部)探しや指示語の内容についての問い

  例題:「そんな対策」とは何ですか。記事の言葉を使って答えなさい。

  答え:ボール遊びができる場所を増やし、子どもたちに外遊びの楽しさを知ってもらうという対策

②  文の組み立ての問い

  例題:「現代だからこそ」はどの言葉にかかっていますか。10字以内で書きぬきなさい。

  答え:求められている

要約の練習をする

要約は指定字数によって書き方が変わりますが、できるだけ短めに書く練習をするとよいでしょう。「いつ」「どこで」「だれが」「どうした」を中心に、必要に応じて「なぜ(理由)」「どうやって」も加えます。700字くらいのコラムなら長くて100字くらいに、50字くらいまで縮めるのも文を書く練習になります。

お子さんだけが取り組むのではなく、保護者にも取り組んでいただき、見比べてみるとおもしろいと思います。短くまとめるほどに難度は上がります。親子で相談しながら、意味のとおるぎりぎりの長さに縮める練習をしておくと、記述力につながります。

ここまで、新聞の活用法を挙げました。初めは保護者が、「見て! この記事のフクロウの写真かわいくない?」などと、お子さんに興味を持たせる働きかけでかまいません。気楽に楽しみながら新聞に親しむことが、「自ら読む力」につながると思います。

自分から積極的に読むようになれば、お子さんの方が「これおもしろいよ」と教えてくれるようになるでしょう。その記事を話題に意見交換などができるようになれば、思考力、表現力、判断力も養われていくのではないでしょうか。

読む力をつけるには① 1日30分新聞に親しみ、書き言葉に強くなろう!
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