習い事の選び方

親目線でのメリットも…習い事の王道「水泳」、人気の理由 スクールの選び方は

2020.02.07

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中道 薫
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近年、習い事といえば英語やプログラミングなど、実用性にも結びつくことが重視されつつあるなかで、不動の人気を誇っているのが水泳です。長年、スイミングスクールが支持される理由とは? 日本水泳ドクター会議に所属するスポーツドクターの原光彦さんに、その理由を解説してもらいました。そこには、幼少期に限らない、生涯の財産ともなり得る数々のメリットがあったのです。

話を伺った人

原 光彦さん

小児科医、東京家政学院大学 教授(小児栄養学)

(はら・みつひこ)
1990年、日本大学大学院医学研究科修了。2000年から都立広尾病院小児科医長、2007年から同部長を経て、2015年から現職。小児肥満の問題に長年取り組み、日本肥満学会「小児肥満症診療ガイドライン2017」の策定にも携わる。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本水泳連盟医事委員会の連携組織「日本水泳ドクター会議」所属。

30年前から変わらぬ“王道の習い事”

学研教育総合研究所の「小学生白書Web版(2019年8月調査)」によれば、全体の28.4%が水泳を習っているという結果に。1989年の同調査でも、水泳が「よくやるスポーツ」で第1位となっているほか、厚生労働省や民間各社の習い事に関する調査でも、水泳は常にトップ。 30年以上もの間、人気の習い事であるといえます。

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出典:小学生白書Web版(2019年8月調査)

では、習い事として水泳がこれほど人気を維持し続けているのはなぜなのでしょうか?

「水泳は、医学的に見ても、ほかのスポーツにはないメリットにあふれた種目。身体面でもメンタル面でも、お子さんの成長にとって最適な習い事です」

こう話すのは、東京家政学院大学教授の原光彦さん。小児肥満に詳しい小児科医であるとともに、現場でアスリートたちを支えるスポーツドクターでもあります。

水泳で得られる5つのメリット

原さんが語る“水泳で得られるメリット”は大きく分けて次の5つです。

(1)効率よく全身運動ができる

水泳の最大の特長は、全身の筋肉を効率よく使えること。

「水中では、日常生活で足腰にかかる負担が軽減されます。反対に、水をかいたりバタ足をしたり、普段あまり動かさない腕・肩や体幹の筋肉を使い、運動量が増えるため、短時間で高いエネルギー消費が見込めます」

大人でも、減量目的で水泳を始める人は多いですよね。ちなみに、「水泳で肩幅が広くなる」なんて話もありますが、実際のところは……?

「動かした部分が発達するのが人間の特性。水の抵抗を受けてしっかりと上半身を使う分、たしかに水泳は肩まわりが発達しやすいと言えるでしょう。特に女性は20歳頃に骨密度のピークを迎えます。その後はいくらカルシウムやビタミンDをたくさん取ったところで、それ以上は増えません。子どもの頃からよく体を動かして肩幅がしっかりしているくらいのほうが健康的だと思いますよ(笑)」

(2)ケガをしにくい

「実は、水泳のケガって水中で発生することはほとんどありません。お子さんで特に多いのが、飛び込んでぶつかったりプールサイドを走って転んだりするケース。監視してくれる大人がいれば、大きなケガは防げるはずです」

体が成長過程にある子どもにとって、特定の部分に強い力がかからないのも安全性が高いポイント。

「成長中の子どもの骨の端には軟骨があり、ここから骨が伸びていきます。軟骨は骨よりは弱く、成長期にマシンを使うような高負荷のトレーニングやハードな競技で軟骨を痛めてしまうと、骨が育たなくなったり、変形したりするリスクがあります」

さらに、ケガのリスクを低減する意味で水泳が打ってつけなのは、特に太り気味のお子さんです。

「ランニングや階段昇降は、下半身に大きな負担がかかります。そうでなくても余分な脂肪が重りとなって、普段から膝や足の裏に痛みを覚える子が多い。体を動かそうと頑張っても、痩せる前に足腰を痛めてしまうのです。その点、水泳は有利。水の浮力によって陸上で感じる痛みを軽減しつつ、水の抵抗でエネルギー消費量を無理なく増やせます」

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(3)心肺機能が強くなる

「医学的にも、水泳は気管支の弱い子やぜんそくの子にも推奨されています 」と原さん。病気の治療やリハビリの一環として、スイミングスクールをすすめるケースもあるのだとか。

「水につかった状態は、水圧を受けるため、陸上より呼吸筋が鍛えられます。そして息継ぎのときに、空気を吸い込み、しっかりと吐ききるには横隔膜を使うので、自然と深い呼吸の練習になるのです。また水泳を行う環境は湿度が高く、ほこりが立たないのも、ぜんそく発作が起こりにくい要因です」

(4)自律神経のバランス調節に役立つ

原さんは「現代の子どもたちは、生活リズムが乱れがち。成長や発達にも影響を及ぼしている」と指摘します。その一因が、親御さんが夜遅くまで起きていること。

経済協力開発機構(OECD)の調査によると、OECD加盟国と中国、インド、南アフリカの1日の平均睡眠時間を比較したところ、日本は最下位という結果に ……。

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出典:Gender Data Portal 2019

「人間には、運動時は交感神経が優位になって鼓動が速くなったり、休息を取ると副交感神経が優位になって血圧が下がったりと、自動的に臓器の動きなどを調整してくれる機能が備わっています。それが自律神経です。自律神経の切り替えがうまくできないお子さんは、体調不良で能率が上がらなかったり、ストレスがたまってキレやすくなったりします」

そのような自律神経のバランスを整えるのにも、水泳が有効なのです。

「一般に、自律神経は自分の意思で調節できないものといわれていますが、自律神経によって働きかけられるのが、呼吸と寒冷による刺激です。先ほど述べた深い呼吸による刺激に加え、水中での皮膚からの寒冷刺激もある水泳は、自律神経を整えるのに効果的です」

(5)赤ちゃんからお年寄りまで、一生続けやすい

水泳は、生まれたばかりの赤ちゃんから、体力が低下してきたお年寄りまで楽しめる“生涯スポーツ”ともいわれています。なかでも、幼児期からの水泳がお子さんにとって効果的なのだとか。

「さまざまな体験を通して発達・発育していく子どもにとって、小さい頃から体を動かすことは非常に大切です。幼児期に体を動かさないと、生活習慣病になりやすくなったりケガをしやすくなったりします。また、大脳は、生まれてから3歳頃までに大人の脳の容量の約7割まで急激に成長します。脳神経のネットワークが構築されるこの大切な時期に、なるべくいろいろな経験・刺激を与えてあげることが重要です」

水泳に限らず、子どもの頃からの趣味やスポーツをずっと続けていくのは難しいですよね。しかし、水泳は一度やめてもまた始められる、親しみやすいスポーツでもあります。

「アーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング)や水球を除けば、水泳は基本的に個人競技。また、日本には町レベルで公営や民間施設などのプールがあり、比較的どこでも水泳に親しめる環境が整っています。小学校中学年になると、習い事をやめて学習塾に切り替える人が多いでしょうが、水泳なら本人の意思でいつでも再開しやすいのです」

このほかに、「用具代があまりかからない」「習い事や大会に付き添う保護者の負担が少ない」といった親目線でのメリットも。「野球のリトルリーグのような場合、試合を見に行く機会があると思いますが、近くにトイレがなかったり、じっと暑さ寒さに耐えたりしなければなりません。水泳は空調の利いたラウンジから、のんびり子どもたちを見守れますよね(笑)」と原さん。

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スイミングスクールを選ぶポイントは?

では、いざスイミングスクールに通わせようというときに、どんなスクールを選べばよいのでしょうか? ポイントは、何が目的で水泳を習うのかをはっきりさせることです。

「まず、ケガや事故がないように監督体制がしっかりした、なるべく少人数のスクールがいいでしょう。その上で、子どもが興味を持ったから習うのか、海で溺れかけたから泳ぐ力を身につけたいのか、競泳選手を目指すのか、医師のすすめなのか……目的によって、スクールの選び方も変わってくるはず。たとえば、肥満の予防・治療の場合は、なるべく高い頻度で泳ぐのが望ましいので、費用を抑えられる公営プールがオススメです」

もしお子さんがアトピー性皮膚炎の場合は、プールの消毒方法にも注目したいところ。原さんによれば、「水泳後にシャワーで塩素をきちんと洗い流さないと、アトピーが悪化する可能性もある」そうです。

まだ数が少なく割高ではありますが、オゾンや紫外線を活用した浄化装置で塩素によるダメージを低減したり、塩素を使わない滅菌方法を採用したりして「肌へのやさしさ」をうたったプールも増えています。

「日本は、水泳に関する情報が充実している国と言えるでしょう。国際水泳連盟の医事委員会が作成した『水泳選手のための栄養』などの貴重な情報がきちんと翻訳され、ウェブサイトに掲載されているなど、正しい情報が得やすく、科学的なトレーニングができるスポーツです。お子さんの心身の健康、一生モノの運動の基礎となることが、水泳が習い事として人気になる大きな理由だと言えます」

(撮影:辰根 東醐 編集:阿部 綾奈/ノオト)

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