経営者の子育て

ココナッツオイルブームの立役者、荻野みどりさん 親としての役目は全力応援と並走

2020.02.21

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野々山 幸
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ココナッツオイルを大ヒットさせた、ブラウンシュガーファースト代表の荻野みどりさん。産後4カ月で創業したという荻野さんに、仕事と育児の両立や葛藤、子どもとのやりとりで大切にしていることなどについて、お話を伺いました。

話を伺った人

荻野みどりさん

株式会社ブラウンシュガーファースト 代表取締役社長

(おぎの・みどり)1982年生まれ。福岡県出身。2011年に第1子を出産。その4カ月後に食材を厳選したお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」を創業。13年から「有機エキストラバージンココナッツオイル」を発売し、大ブレーク。ココナッツオイルブームの立役者として注目される。安心できる食の提案のほか、フードロス問題にも取り組む。また、最近では母乳と食事、ライフスタイルを研究する「BONYU.Lab」の運営も行っている。 https://bonyu.me/

子どもを犠牲にしている? 仕事と家庭の間で生まれた葛藤

――産後4カ月で創業し「会社と子どもをほぼ同時に育ててきた」と話す荻野さん。特にお子さんが小さい頃に、仕事と育児の両立で大変だったことは?

ココナッツオイルの仕入れはフィリピンやタイなどの工場に直接行って交渉していたので、その間は、仕事に理解があった元夫や義母に娘を預かってもらいました。肉体的な大変さはもちろんあったのですが、私自身はそれよりも、気持ちの葛藤の方が大きかったなと思いますね。

わたしの実家側は、どうしても「女性は家事、育児をした上で仕事をするべき」という考え方で、「仕事で子どもを犠牲にしていないか」などと言葉をかけられることが多かったんです。当時は真に受けて「自分のしたいことを優先しすぎて、子どもに無理をさせている悪い母親だ」と自分を責めたことも。フィリピンに仕入れに行っても、子どもが心配でベッドの中でひとりシクシクと泣いたこともありました。

――そのような心の葛藤から抜け出すきっかけになった出来事などはあったんですか?

仕事で海外のお母さんたちと交流する機会が増えて、だんだんと気持ちに変化が生まれたんですよ。当時、商談でよく電話会議をしていたドイツのお母さんは、産後3カ月で、子どもをトントンとあやしながら仕事の話をしていました。また、フィリピンのお母さんは産んですぐに出稼ぎに行くので、おばあちゃんが孫たちをまとめて育てるんですね。母親の仕事で子どもが犠牲になる、という考え方は日本特有のものなんだなと。

大事なのは、子どものことをきちんと考えてめいっぱい愛情をかけること。それは子どもと過ごす時間とは比例しないとわかり、私の育児はこれでいいんだと自分の中ですっと腹落ちしましたね。

【経営者の子育て論】ブラウンシュガーファースト 荻野みどりさんの“自主性を重んじる”子どもとの向き合い方

――お子さんの幼少期に、大切にしていた育児の方針はありますか?

モンテッソーリ教育を参考にしていました。モンテッソーリ教育は、子どもの自発性を養う子育てなんです。個々の発達に合わせた「お仕事」という自己形成をする作業があって、やりたい「お仕事」をこどもが自分のペースでじっくりやっていくんです。また、「自分のことは、自分で」という姿勢が身につくように道具などはすべて手の届くところに置き、子ども自身で選んで食事の準備をしたり、掃除をしたりします。うちでは、おもちゃではなく、本当の包丁とまな板を手の届くところに置くようにしていて、娘は2歳の頃には自分でりんごを切っていましたね。自主性を重んじるところがとてもいいなと思いました。

宿題も習い事も、やるかやらないかは自分で決める

――今現在、お子さんとのやりとりで大切にしていること、言葉がけなどはありますか?

「大好きだよ」という言葉をかけることと、ギューッとハグをすること! これだけは娘が8歳になった今でも毎日続けています。私自身、いろいろな経験をしてきたなかで、人生どん底だと悩んでひどく落ち込んだ時、最後の最後は自分自身を信じて応援して、励ましてあげられるかどうかが大切だと思いました。そのベースを作るには、条件なしに娘の存在を認めることが重要だと思うので、「生きていてくれてありがとう」という気持ちを込めてハグ! シンプルだけどすごく大事だと思います。

あとは、ほとんどのことは本人任せです。親である私が、必要以上に口出ししたり、誘導したりすることはしないですね。

――育児をしていると、例えば「なかなか宿題をしない」「習い事が上達しない」など、口出ししたくなる状況はたくさんありますが……。

宿題を忘れても死にはしないので、「宿題しなさい」と強要することは言わないです。「しないと自分が困るんじゃない?」と声かけすることはありますが、自覚すれば自らやりますよ。娘は本を読むことや歴史は大好きなんですが、計算はあまり好きじゃないみたいで、Google Homeに答えを聞いていることもあったりして(笑)。

でも、本人がやる気じゃない時にいくら言っても意味がないかなと思っています。娘にとって、計算が必要なのは今じゃない。大人になって計算がまったくできない人はいないから、本人が必要だと思ってスイッチが入ったら、できるようになるものだと思っています。九九もその気になれば1日で覚えられるはずだと思って見守るようにしていますね。

習い事も何を選ぶかは本人に任せていますが、昨年、3歳からやっていたクラシックバレエをやめると言い出したんですね。やめるのは問題ないけれど、その理由はきちんと確認しました。私が気にしたのは、途中で習い事をやめることによって、挫折感を持ってほしくないということ。バレエに関しては、本人が「面白いと思えないのでやめたい」と意思が固いようでした。教室はいったんやめるけれど、また始めたいと思えばいつでも再開できるように「お休み」という形を取ることにしました。

「やめる」決断って親にとっても子どもにとっても難しいことだと思うのですが、無理強いして続けるのが一番よくないと思うので、そこはしっかりと話し合いましたね。

【経営者の子育て論】ブラウンシュガーファースト 荻野みどりさんの“自主性を重んじる”子どもとの向き合い方

――いろいろなことを本人任せにして、親が押し付けないことで、どんないい効果があると思いますか?

何でも自分で決断するようになりますよ。本を選ぶ時も目次を見て「これおもしろそう!」と自分で決めるし、お金の使い道を決めるのも娘自身です。

お金は、我が家ではお正月にもらうお年玉が娘の全財産なのですが、一昨年は少しずつ細々としたものを買って結局「何に使ったんだっけ?」という状態だったので、昨年はドクターマーチンのブーツを一点買いしていました(笑)。自分で経験して失敗することこそが大切だと思うので、私からは止めないです。一気にお金を使った後は、どうしたらお金が増やせるかに興味が向いたみたいで、「何かを作ったりして、それに価値があれば買ってもらえるよ」と話したんですね。ちょうどその時、私が参加したファーマーズマーケットで娘は手作りのしおりやブローチなどを10円ぐらいで売っていました。同年代の女の子が買ってくれて、すごく喜んでいましたね。自分で決めたことで経験すると、すごく学びがあると思います。

【経営者の子育て論】ブラウンシュガーファースト 荻野みどりさんの“自主性を重んじる”子どもとの向き合い方

子どものスイッチが入ったら、全力で応援、並走する

――お子さんの中学受験や今後について、どのように考えていますか?

娘は自分で行きたい私立の小学校を選んで通っているので、このまま中学、高校と進学するつもりです。

でも、実は、最近娘が転校したいと言い出していて……! 保育園の時の友だちがシンガポールに住んでいて、遊びに行ったついでに学校なども見学したところ、どうしてもシンガポールの学校に行きたい、と。娘の様子を見ていると、かなり本気なんです。

これまで英語教育を一切していないのに、本当に転校するとなると、かなりのレベルの英語が必要なので、「英語が問題だけどどうする?」と言ったら、いま娘は、毎朝5時に起きて、登校前にオンラインの英会話をやって練習しています。娘にとっての英語のスイッチが入ったんだと思いましたね。正直わたしは、寝ていたいんですが(笑)。みるみる上達していて、すごいなぁと感心して眺めています。

――親が何もしなくても、子どもがやる気になると自然に行動が伴うのですね。これから、お子さんのやりたいことをどのように応援していく予定ですか?

正直、私の仕事は日本でしかできないし、現実的にシンガポールに移住して、娘が転校をするのは難しいと思っています。でも、娘が本気なので「無理だよ」と一言では片付けずに、パパ(元夫)と相談しあって、できる限りいろいろなケースをシミュレーションして考えています。できない理由を先に言わずに、娘が本当にやりたいことは全力で応援するし、私も並走する。これだけは絶対に今後もしていきたいし、親としての一番の役目かなと思いますね。

(撮影:辰根東醐 編集:阿部綾奈/ノオト)

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