国語のチカラ ~「読み、書き、表現」アップの鉄則~

「考えを発展させる力」をみる問題、中学入試で増加 ふだんから説明する練習を

2020.03.26

author
南雲 ゆりか
Main Image

すべての学力のベースとなる国語力。その力をのばす方法を、「国語のチカラ~読解力アップの教科書~」では保護者向けに紹介してきました。今回から、コンセプトはそのままに、副題を『~「読み、書き、表現」アップの鉄則~』と変え、さらなる国語力アップのための有益な情報を提供していきたいと思います。今回は、2020年度中学入試のトピックをご紹介します。

今年も、南雲国語教室の生徒たちの受験指導をしながら、首都圏を中心に国私立中学校の入試問題に目を通しました。例年に引き続き、大人向けで難しい内容の素材文や、深く考えさせる問題、正確に読んで正しく書くことが求められる問題が多く出題されました。

そんな中、今年ならではの変化として目にとまったのは、「自分の考えを発展させる力」をみる問題が複数の学校で出題されたことです。こうした問題は、これまでそう多くは見られませんでした。

「自分の考えを発展させる力」をみる問題とは、例えば、①絵や図、グラフから読み取った情報を文章化させる問題②自分の意見や考えを説明させる問題などです。

こうした問題が増えた背景として、新学習指導要領(小学校は2020年度、中学校は2021年度から全面実施。高校は22年度から年次進行)が、「思考、判断、表現」を重視していることが考えられます。この3つは国語において、「言語で理解し、伝えること」「論理的に思考し、想像すること」「新たな発想、思考を創造すること」につながります。

今後、中学、高校でも新しい学習指導要領に即して教育活動が行われるわけですから、自分の考えを深めながら学習をしてきた生徒が望まれるのも当然の流れといえるでしょう。

情報を読み取って文章化する問題の例

それでは、「自分の考えを発展させる力」をみる問題が、中学入試ではどのように出されたのか、具体的にみていきましょう。

上記①のパターンの代表例が、淑徳与野中学校(第1回)です。

次の問いに答えなさい。

Aさん(小学校六年生)の祖父が上京してくるので、Aさんは駅に迎えに行くことにしました。祖父はAさんの家に持って行くお菓子を一緒に選びたいと伝えてきました。そこで、祖父に次のようなメールを返信しました。

明日、駅にお菓子屋さんがあるので、改札の右に階段があるから、そこの前に午後一時。遅れないで。

問一 Aさんのメールの文章にはいくつか問題点があります。それを二点指摘しなさい。
問二 実際には、祖父は図Aに示した場所に行ってしまいました。祖父がAさんのいた所に行くためには、どのようなメールの文章をAさんは書けばよかったのですか。駅のお菓子屋さんに寄ることも伝えるように文章を書きなさい。

<2020年度 淑徳与野中学校(第1回) 一部抜粋・改題>

【答え】

問一 (一つ目)西改札と中央改札のどちらで待つか指示していない。(二つ目)「そこ」の指す場所がどこなのか、はっきりしない。

問二 明日の午後一時、西改札を出た右側で待っています。駅にあるお菓子屋さんにも一緒に行きますので、気をつけて来てくださいね。

短い語句や絵文字で伝えるLINEやメールでの伝達が主流となった世相を反映しての出題でしょう。目的や状況に応じて文章を書く力に加え、図からポイントを見つけて言語化する力が求められます。読み手が理解しやすいように、曖昧さを排除して言葉の順序を工夫し、文章を組み立てなければなりません。

Aさんの文章は、一文の中で「~ので」「~から」と順接の言葉を2度繰り返していて大事な点が見えづらくなっている、「そこ」がどこを指すのか明確でない、という問題点があります。この2点は、教室の生徒の答案でもよく見られるまちがいです。さらに、祖父は目上の存在ですから、「遅れないで。」という言い方は修正した方がよいでしょう。

このような問題に対応していくには、ふだんから意識的に親子間のメールを書き言葉にしてみたり、道順などを言葉で説明したりする練習をしておくとよいでしょう。

市川中学校(第1回)も、絵を使った読解問題を出題しました。

次の問いに答えなさい。

小学校六年生の市川さんは、学校の課題で身近な動物を「写生」することになり、自宅で飼っているネコの眠っている姿【A】を描くことにした。市川さんはネコを上手に描こうとし、できあがったのが【B】の絵である。【B】の絵では、ネコの描き方にどのようなことが起きていると考えられるか、本文の内容にしたがって70字以内で説明しなさい。ただし、絵の中から具体的な例を一つあげること。

<2020年度 市川中学校(第1回) 一部抜粋・改題>

【答え】

ネコの顔の左下の部分は実際には見えないが絵には描かれている。視覚情報を既知のネコとして概念的に認知してしまい、記号的な表現になっている。(解答例は南雲国語教室作成)

実はこの問題は、大問の中の問5で、素材文があります。素材文は齋藤亜矢氏の「上手い、おもしろい」の一部で、「目で見えていることを描こうとしても、言葉におきかえて概念的に認知してしまったり、細かいところまで描ききれなかったりして、記号的に表現しがちになること」「上手に描こうとした結果こぢんまりした絵になってしまったこと」などが説明されています。それらが【B】のどのようなところに表れているかを探して説明します。

例えば、【A】では隠れている顔の左下の部分が、【B】では描かれているところに、ネコという概念の記号化が見て取れます。見たままを描いたのではなく、ネコという、知っているもののかたちを描いたということです。ネコの模様が【B】では描き切れていないことなどを挙げてもよいでしょう。

こうした問題では、本文の理解に加え、出題の意図を鋭くとらえる力も必要です。期待される解答がイメージできないと、絵のどこに目をつければよいのかわかりません。題意がよくわからないままに記述答案を書いてしまうのは子どもたちにとってよくありがちなことですが、設問文を慎重に読み、何を答えさせたいのか考える習慣をつけたいものです。

ほかにも、女子学院中学校では、素材文の内容と一致する絵を4つの選択肢から選ばせる問題が出されました。本文から注意深く絵の特徴を表す言葉を拾い、実際の絵と照合する力が求められました。

自分の意見や考えを説明させる問題の例

次に、上記②のパターンの代表的な入試問題をご紹介します。

世田谷学園中学校(第1次)では、岡田美智男氏の『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』からの約7000字の部分を出題し、「ロボットの「〈不完結さ〉や〈弱さ〉」はどのような状況をもたらし、人との関わりの中でどのような役割を果たすことが期待できるか」について自分の考えを説明させる問題が出題されました。

ロボットの不完全さや弱さゆえ、人間が手助けしたり協力したりすることで、自分も役割を果たしているという達成感や満足感をもたらすという内容でもよいですし、ロボットに任せるところは任せて、人間はロボットにはできない仕事に専念できること、などを書いてもよいでしょう。

文章を読んで理解したら、そこから想像を働かせたり、経験と結びつけたりして、自分の考えを広げて欲しい、社会の出来事にも関心を持って欲しい、という出題意図があると考えられます。日ごろから、世の中で話題になっていることにアンテナを張って、解答の素材となるようなことがらを集めておくとよいでしょう。また、例や経験を具体的に述べる練習もしておきましょう。

こうした類の問題は、灘中(「自分で想像して答えなさい」)、桜蔭中学校(「この題名にこめた筆者の思いを考えて説明しなさい」)でも出されていました。

「自分の考えを発展させる力」をみる問題は今後も、増えていくことでしょう。ただただ問題演習をしておしまいにするのではなく、自身の経験や世の中で起きていることとどう関係しているか書き出したり、ニュースや新聞で知ったことや日常的なできごとについて親子間で意見を交わしたり、といったことをプラスしてみてください。そうした親子の対話が、お子さんの考える力を育て、表現する力を養うことに役立ちます。

Latest Articles新着記事