小学校での英語教育

小学校英語、教員向け研修はウェールズ語 英語教育機関に聞いた「教える技術」

2020.03.17

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金 漢一
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いよいよ4月から小学校の英語教育が本格化します。これまでの5、6年生の「外国語活動」は「教科」に格上げされ、3、4年生にも「外国語活動」が導入されます。一方、英語を教える側の小学校教員のなかには、教職課程で外国語の指導法を学んでおらず、不安に感じる人も多いはずです。どのような教え方が求められるのか。英国の公的な国際文化交流機関で英語教育を推進するブリティッシュ・カウンシルで、小学校の教師を対象とした研修を取材しました。

小学校英語、先生もまずはやってみる

昨年末、東京都新宿区にあるブリティッシュ・カウンシル。小学校の教員と、教員志望の大学生の十数人が英語教員向けの研修プログラムを受けていた。担当の英語教員研修トレーナーのトム・レドブリさんが、英語で簡単に自己紹介し研修の目的を周知して始まった。

「Wyt ti'n hoffi cathod neu gwn?」

トム先生の第一声は、参加者にとって耳慣れない言葉で始まった。戸惑う参加者に先生が「実は、ウェールズ語です」と種明かしした。

参加者は、これまで中学や高校、大学などで、学ぶ側として英語に触れてきた。しかし、これから英語を教わる児童には、英語に全く接した経験のない子どもが多いはずだ。このため、未知の言語を学ぶ児童の目線を知ることが、まず大事だという。トム先生が、ウェールズ語で話しかけたのは、それを体験してもらうためだった。

トム先生によるウェールズ語による研修は、冒頭の第一声だけでなく、そのまま続く。順序立てて授業を進めていくと、未知の言語でもわかってくる。「イヌとネコはどちらが好き?」という質問では、スクリーンに映されたイラストや、講師のしぐさなどから dogs が gwn、cats が cathod だとわかる。I like... や I don't like... などの区別もつくようになった。

参加者が学生時代に受けてきたのは英文を訳読するような「受け身」の授業が多かったはずだ。しかし、互いのコミュニケーションを重視し、フレーズを何度も声に出して繰り返すことで、参加者たちはウェールズ語という未知の言語で短い会話までできるようになっていた。

トム先生は、日本の小学校で長く英語を教えた経験があり、児童のモチベーションが英語学習に与える影響を研究している。ブリティッシュ・カウンシルでは、トム先生のように、研修トレーナーが、イタリア語やドイツ語など日英以外の言語を使って教える場合もある。

小学校での英語教育
大きなジェスチャーとイラストを活用して授業を進めるトム先生=2019年12月、東京都新宿区、ブリティッシュ・カウンシル提供

中心は「聞く」と「話す」

小学校で学ぶ英語の主な目的は、中学の英語の足掛かりとなる基礎を身につけること。中心になるのは、「聞く」と「話す」の二つの技能だが、「話す」は、これまで日本の英語教育ではあまり注力されてこなかった。この「話す」は、さらに「やり取り(interaction)」と「発表(presentation)」の二つに分類される。この日の研修の時間割は、午前が「やり取り」と「発表」の指導法、午後が、習った表現や単語を使ってやり取りする「スモールトーク」だった。

トム先生の教え方の特徴は、その日のテーマや課題を提示して、まず、自らがやってみて手本を示し整理して指導する点だ。その後、参加者に発言を促す。次は、隣の席の参加者同士、そして別の参加者同士というように繰り返していく。

河合千尋・シニアマネージャーは「中学の授業では時折、授業ですることを先生が口頭で説明するだけで、そのまま生徒にさせるケースがよく見受けられます。中学の授業でもそうなのですが、特に小学校の場合は、児童が何をしていいのかわからなくなってしまいます。授業で行うことを、まずは先生がきちんと見本を示すことが肝要です」と強調する。「小学生は教室以外で英語を使う機会が少ない。心理的なハードルを下げて、英語にたくさん触れてもらうことが大事です」

トム先生は、やや長めの文を暗記する際には、こんな手法を使っていた。文の後ろから単語を加えるように反復して覚える back-chaining と呼ばれる方法だ。He is good at playing the guitar.という文なら、こんな具合だ。

guitar

the guitar

playing the guitar

good at playing the guitar

He is good at playing the guitar

ここで good at のようなひとかたまりに扱えるものは分けなくてもよい。文の後半部分の単語は、記憶に残りにくい。この方法なら、後ろになるほど何度も繰り返すことになるので、暗記には効果的と言えるだろう。

このように五つ、六つ程度の単語のかたまりの文を上記のように復唱する際に、単語を加える度に指を1本ずつ開いて進み具合を示すフィンガードリルという手法もある。ブリティッシュ・カウンシルによると、こうしたスピーキング指導スキルに関心を示す参加者が多い。

研修の参加者からは、「自分が分からない言語を教わるという子どもたちと同じ立場になって考えることができた」「学んだことを自分でやってみる時間が設けられたので、頭の中だけでなく(実践で)理解することができた」などの意見が出たという。

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