経営者の子育て

「小1起業家」の父親佐藤ねじさんに聞く ググる力をわが子に求める理由

2020.03.18

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藤田 佳奈美
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我が子の成長の軌跡を題材にユニークな作品を展開する、「ブルーパドル」代表の佐藤ねじさん。これまでに「1歳児がつくるWEB」「2歳児が語る日本の社会問題」など、等身大の子どもの視点をコンテンツ化した「息子シリーズ」を展開。なかでも、子どもにお金を稼ぐノウハウを教え、家庭内起業へ導いた「小1起業家」は話題を呼びました。子どもの興味・関心を学びに結びつけるには? 子ども作品を通して見えてきた、知性や教養の育み方について、佐藤さんにお話を伺いました。

話を伺った人

佐藤 ねじさん

アートディレクター・株式会社ブルーパドル代表

(さとう・ねじ)1982年生まれ。面白法人カヤックを経て、株式会社ブルーパドルを設立。2016年に「超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方」(日経BP)を出版。主な受賞歴に、文化庁メディア芸術祭・審査委員会推薦作品、「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード」グランプリ、東京TDC賞など。

 “遊び”の延長線上に“学び”がある

――「小1起業家」 では、大好きなポケモンカードをもっと集めたいお子さんが、おこづかいから投資をしてコーヒー屋を家庭内起業し、利益を出すまでの過程が記録されていました。どういう経緯で生まれたのですか?

もともと僕と長男で、お互いが先生になって問題を出し合う遊びをしていて、その延長線上に生まれたものなんです。先生になって教えると学びにもなるじゃないですか。長男が先生の場合は最近覚えた算数やポケモンの名前当てなどを出題するのですが、その流れでポケモンカードがもっと欲しい長男に、稼ぎ方を有料で教えたのが始まりです。彼は月のおこづかいである100円を投資して学びを得た。今までと全然違う100円の使い方を知ったことがとても大きかったと思います。

――目先の損得にとらわれず、月のおこづかいを全額かけてチャレンジできたのはすごいことだと思います。小1起業家という名前もキャッチーだし、こんな風に日常の中で知識や教養を育む方法は斬新ですよね。

そのあたりは日常的に意識して行っています。たとえば、一緒にテレビを見ているときにカレーの特集をやっていたら、関連情報を教えてあげますね。スパイスの種類とか、おいしいカレーの作り方とか。

最近はブレストにハマっています。お題を決めて、それに対してアイデアを出し合うんですけど、僕が最初に例を出してあげると、「じゃあこんなのはどうなの?」と彼からも意見が出てくる。そうやって知識を得る手段や方法はひとつだけじゃなくて、たくさんあるということを知ってもらうようにしています。

佐藤 ねじさん

――日常生活の中でもひと工夫するだけで、学びに落とし込めることは多そうですね。ほかにも息子さんに影響を与えた「息子シリーズ」作品はありますか?

長男が作った紙工作を自分で値段を決めて販売する作品「5歳児が値段を決める美術館」ですね。ペーパークラフトの本を見てハマり、展開図の構造を覚えていました。作りたいものを作れる下地がそこでできたので、何か欲しいと思ったときに「じゃあ作ってみよう」という思考が生まれるようになりました。工作をする過程が今の息子のベースになっていると感じます。

――作品を介してたくさんのことを学んでらっしゃるのですね。そういったユニークな体験をしていることに対して、クラスメートや大人たちはどんな反応をしているのでしょうか?

クラスでは何かあったら聞かれる、アドバイザー的な存在みたいです。自主的にいろいろと取り組むのは得意なので。だけど学校という集団行動の中では、個人プレーだけじゃうまくいかないものですよね。チームプレーをするために、みんなを巻き込んでいかなきゃいけないのにうまくいかなくて、いろいろな挫折を味わっているみたいです。

――まるで部下を持つ上司の悩みですね……。

自分がおもしろいと思ったことでも、相手には3割くらいしかおもしろさは伝わらないから、きちんと相手にかみ砕いて説明しなきゃダメだよ、と教えています。あと、調子に乗るなよって(笑)。

子どものやる気を自然と引き出す方法

――息子シリーズはどれも自然にお子さんのやる気を引き出しているように見受けられます。何かコツがあるのでしょうか?

子ども全員に適用されるわけではないと思うんですが、僕が大切にしているのは「大人扱いすること」。そうすると子どもがのってくるんですよ。子どもって複雑なゲームでもいつの間にかできていたりするじゃないですか。モチベーションさえあれば、かなりのポテンシャルを発揮することができると思います。だから子ども扱いせず、難しい言葉もそのまま使って接することが大事。

――なるほど。やる気を引き出した上で、学びへとつなげるにはどうしたらよいでしょうか?

知識を詰め込むだけの座学だけではダメですね。移り気な子どもにとってモチベーションが保てない。だからその子が興味を持っているものと掛け合わせると学びが促進すると思います。学びはゲーム感覚でやることが大切なんじゃないかなと。だから子どもが興味を持ったことに対して全力で投資してあげることが、結果的に学びにつながる気がしますね。

佐藤 ねじさん

将来のために身につけたいスキルは「ググる力」と「モチベーションを自動生成する力」

――クラスでは頼れる存在の息子さんですが、息子さん世代の子どもたちが将来活躍するには、今何をしておくべきだと佐藤さんは考えますか?

ちょっと前までは英語力と言われていましたが、今はリアルタイム翻訳がありますからね。逆に「これを学んでおけば大丈夫」みたいな思想は危険だと思います。それは単なる思考停止ですよね。今必要なスキルは「ググる力」と「モチベーションを自動生成する力」。この二つがとても大事だと思って、息子とのコミュニケーションでも意識しているところですね。

――ググる力とは、自分で検索して答えを探し出す力ということでしょうか?

1個の情報で完結せずに、そこから枝葉を広げてたくさんの情報を結びつけること。一つのやり方以外にもたくさんあることを知ること。ググる力がつけば、おのずと楽しむ力につながっていくんです。先日、息子と一緒に電車に乗っているとき、「どういう原理で電車は走るの?」とお題を出してみました。息子はすぐにググって電車の仕組みを理解した。お題を出す、ググる、その繰り返しの回数が多いほどいいと思います。

――モチベーションを自動生成する力というのは、自分で楽しむ力ということでしょうか?

そうですね。つまらないものを面白くすることで発展性が生まれるので。例えば算数の先にはプログラミングがあって、その先にゲームがある。発展性について教えてあげると、毎日の算数の授業が、実は大好きなゲームにつながっているということを理解して、楽しむ力に変わっていくものだと思うんです。息子にも算数のその先を教えてあげています。

――学びが楽しいことにつながっていたら、持続的に学ぶ姿勢が生まれそうですね。

楽しくないと継続して学べないですから。例えば学校の宿題で音読が出されることがありますが、それを親が聞いて丸をつけるというやり方は、タスク化してしまっていると思います。形骸化されて、学ぶ意味や楽しむことを忘れてしまっていますよね。ただスラスラ読むのではなく、たとえば役になりきって読むなど工夫してみる。音読とは何のためにやるのか考えてみる。そうすると、演劇や映画、ドラマ、アニメなどにつながって、将来はエンターテインメントの世界を夢見るかもしれない。そう考えると、可能性を感じますよね。親としては子どもが学ぶ意味を明確にして、きちんと伝えてあげることが大事だと思います。

(撮影:辰根 東醐 編集:阿部 綾奈/ノオト)

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