連載・親子で「考える」を動かそう! 「私」を伝える編

「その構造・機能に感動した“私”がつくる製品」 共栄学園中学校・理科の入試問題から

2020.03.31

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日能研
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キミってどんな人? 考えを聞かせて?――。中学入試問題は、それぞれの“私”に問いかけてきます。知識だけでなく、身の回りや“私自身”とつなげて考えなければなりません。あらかじめ準備できるような「正解」はありません。子どもたちの数だけ答えがあるはずです。親子でアタマとココロを使って、「考える」を動かしてみませんか?

(問題文の一部を変えている場合があります)


”私”を伝える編の6回目は共栄学園中学校の理科の問題です。

 共栄学園中学校 2018年/理科

私たちの住む地球には、ヒト以外にも多くの種類の生物が存在しています。自然界では、陸や水中、海洋、森林、地中などそれぞれの環境(かんきょう)で生きていくために、生物は様々な部分や機能を発達させています。最近の飛行機の翼(つばさ)部分は、鳥類のタカの翼の構造をヒントに空気抵抗(ていこう)が以前より小さくなるように改良されました。このように、生物のからだの構造や機能を参考に技術を開発することを「バイオミメティクス(生物模倣〈もほう〉)」といいます。


(問1)下線部のようなバイオミメティクスのもととなった生物は、どの様な製品に利用されているでしょうか。下図の生物①~③をもとにした製品を、下の(ア)~(オ)からそれぞれ選び、記号で答えなさい。

日能研⑥につく図表

【製品】
(ア)包丁 (イ)新幹線 (ウ)マジックテープ (エ)家のかべ (オ)水着



(問2)あなたの考えるバイオミメティクスを、【生物名、その生物のどの構造・機能を応用するか、製品の例】の3点を合わせて、一つ紹介してください。絵を使った説明をしてもかまいません。

日能研の解説

たとえば、蚊と注射針。
さまざまな製品に生物の構造が利用されていることを知っている、聞いたことがある受験生もいることでしょう。

この問題では、すでに実用化されているバイオミメティクスの例を参考にしながら、これまでに理科で学んできた生物のからだの構造や機能をとらえる視点を使います。生物、そして道具の特徴を思い起こし、そのふたつを結びつけていきます。「生物名」「どのような構造・機能を応用するか」「製品の例」の3点を合わせて紹介する設定になっていることで、科学的な根拠をもとに考える流れになっています。

生物のからだの構造や機能と、製品の特徴を結びつけながら、“私”ならではのバイオミメティクスの製品を考えていくのです。

中学入試問題がおもしろい! 問題と向き合うのが楽しい!――と、子どもたちはよく言います。「入試なのに?」と思う大人もいるでしょう。しかしながら事実、入試を受けた帰り道、日能研の教室に立ち寄り、「ねえ、見て、見て!」「聞いて、聞いて!」と、入試問題を紹介してくれる子どもたちがいます。

この問題もそのひとつでした。その場で精いっぱい“私”の答えを、つくってきたよ!という誇らしい笑顔。大人があらかじめ用意していた答えをさぐったり、当たり障りのない答えを記したりするような、「予定調和的テスト問題」とはちがう、出題者と受験生それぞれの“私”の対話がはじまるようなテスト問題。子どもたちがアタマとココロを存分に使って、「考える」を動かす、私学の中学入試問題の魅力、すごさ。現にいま、大人のみなさんも、「考える」を動かしはじめていませんか――?

さて。
オナモミの実の表面には、先端がフックのように曲がったとげが多数あり、動物の毛などにつきやすくなっています。動物のからだにつくことで、さまざまな場所に運ばれ、運ばれた先で子孫を残すことができます。マジックテープには、このとげの構造が利用されています。

カワセミは、高速で空気中から水中に飛び込みます。飛び込む際にあげる水しぶきが極めて少ないことから、カワセミのくちばしの構造をヒントに、トンネルに入るときに空気抵抗や騒音の少ない新幹線が開発されました。

サメのうろこは、つき方や形が水中での抵抗を小さくする構造になっています。この構造を参考にした水着が開発され、その結果、競泳では次々に新記録が打ち出されました。

オナモミ、カワセミ、サメの例のように、生物のからだの構造には、生活のための工夫がさまざまあります。自分が知っている生物のからだの構造を、どのような道具のつくりに生かせそうか、結びつけて考えてみてください。

この問題と出あった子どもたちは、生物のからだの構造にあらためて目を向け、それぞれの製品の特徴、そして機能の結びつきに、「感動」したかもしれませんね。
また、子どもたちは、日常と理科での学びが結びついていることに気づき、より快適な生活をするための知恵が自然の中にたくさん隠れていることを感じるきっかけになったことでしょう。

どの生物の、どの部分が、何に使えるか?」と考えてみる。

長い年月を経て進化した生物は、優れた構造や機能を持っています。これらを模倣し、技術開発やものづくりに活用しようという技術が「バイオミメティクス(生物模倣)」です。バイオミメティクスは、素材、機械、医療、環境、エネルギー、交通システムなど多様な分野に貢献するものとして期待されています。

その“私”の答え――。大きな発見、発明かもしれません。

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