2020年度中学入試 合格者アンケート

開成合格親子はここが違う! 天才たちの学習法 「塾に行かず自宅学習」「親はノータッチ」

2020.03.24

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庄村 敦子
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今年も東大合格者数ランキング1位の高校は開成だった。39年連続トップという「日本一」の同校は、成績優秀な中学受験生の憧れだ。開成中学には今年、過去5年間で一番多い1266人が志願し、397人が合格した。倍率は3倍だった。最高峰を制した合格者はいったいどんな勉強をしてきたのか。EduA編集部で合格親子にアンケートを実施したところ、「天才」の横顔が見えてきた。塾に通わず自宅学習で合格を手にした親子、あるいは遠路を新幹線で塾に通った親子ら、それぞれの勉強法を紹介する。

都市部を中心に近年は中学受験熱が高まりを見せている。森上教育研究所は、今年2月1日午前に首都圏の私立中学を受験した人数は、過去10年で最も多かった前年より約1550人増え、約4万1300人と試算している。その大部分は、中学受験の進学塾に通っているだろう。今回、EduAのアンケートの回答者32人のうち、31人は塾に通っていた。

アンケート前編 「開成中学で合格親子32組に聞いた! 成功する子の勉強法は? 通っていた塾は? 習い事は?」はこちら

アンケート後編 「開成中学合格者、将来の夢は○○ 親子32組に聞いた子育て法 意外と放任主義?」はこちら

自宅学習のみで合格 勉強時間は一日2時間

その中で、ただ1人、塾通いをせずに、通信教育だけで合格を勝ち取ったのが、鹿児島県の種子島に住む海津花人(かいづはなと)さんだ。東京生まれだが、父親の心平さんの仕事の関係で、3歳から種子島で過ごした。低学年のころは毎日のように、海や川、プール、スケボー、星空観察、昆虫採集などで、よく一緒に遊んだという。

「息子が中学に入学する年には、東京に帰れるだろうと思っていたため、中学受験させることにしました。万が一、タイミングが合わなかったら、東京に私の両親がいますから、私の実家から通わせるつもりでした」と心平さんは話す。

母親の和花さんに、花人さんの幼いころからの学びについて聞いてみた。「2歳半から小6の12月までピアノを習っていました。3歳から市販の算数ドリルも始め、毎日、ピアノの練習とドリルをしていました。最初はどちらも10分、次第に20分、30分とやる時間を延ばしていきました。幼稚園児のころから、スーパーのレジでおつりの計算をする、算数好きの子どもでしたね」

小2からは近所の公文式教室に通い始め、1年間で小6までの算数の課程を終了。小3の2月から小6の8月までは大手進学塾・四谷大塚のテキストで勉強し、テストを受けた。その後、浜学園のテキストで総仕上げを行ったという。

毎日の勉強時間を聞いたところ、四谷大塚のテキストを中心とした勉強を約2時間していた、という。意外に短い! さすが天才、ダラダラとやらずに、集中して取り組む濃密な勉強時間だったのだろう。一日のうち、残りの時間はピアノの練習に1時間をあてた。コンクールの前には日に2時間練習し、南日本ジュニアコンクール本選に出場したほか、種子島コンクールでは優勝した腕前の持ち主だ。加えてスポーツにも取り組み、小3から小6まではフットサルに打ち込んだというから、才能も時間の使い方もずば抜けているのがわかる。

海津さん親子
合格証書を手に、喜ぶ海津さん親子=2020年2月3日、東京都荒川区の開成中学、庄村敦子撮影

将来の夢は数学オリンピック出場と数学者

自宅学習ということで、分からないことや質問が出てきたときは誰に教えてもらっていたのだろうか? 国語、算数、理科は心平さん、社会は和花さんが担当していたという。小2のときには公文で小6の算数を終わらせた花人さんは、それ以降は、独学で中学の数学に取り組んでいた。小6の初めには、関数電卓をほしがり、買ってもらったほど、数学に関心が深い。

通っていた小学校から中学受験するのは花人さんだけで、近所に中学受験塾もない。そうした環境のなか、「ライバル」として切磋琢磨したのは、父親の心平さんだった。

「私が息子のライバルになり、一緒に雑誌『ニュートン』の数学特集で、数学オリンピックの問題を解いていました。でも、小6の初めごろには息子に抜かれてしまいました」と、心平さんは花人さんを優しいまなざしで見ながら笑う。

「夜、一緒に本を読むのは今も続いています。受験勉強を始めてからは、おそらく他のご家庭と同じように、毎日のようにしかりつけ、悩み、問答しました。ただ、『一緒に頑張れば頑張る子』なのは分かっていたので、本当にかまい続けましたね。親子の会話時間はトップクラスだと思います」

志望校は、模試の点数や偏差値を参考にして決めた。

「トップ校に入りたいと思い、開成を目指しました」という花人さん。「開成に入学したら数学研究部に入り、数学オリンピックに出たい。将来は東大に入り、数学者になるのが夢です」

新幹線で塾通い 車内ではWeb講座を受講

群馬県前橋市から埼玉県の大宮にある塾・サピックスまで新幹線で通い、合格したのは、徳島顯眞(てるまさ)さんだ。前橋市の自宅から、サピックスのある大宮まで、片道約1時間半を通った。高崎から大宮までは新幹線。お弁当は授業の終了後、夜9時半ごろに、新幹線の車内や駅のホームで食べたという。

「疲れていて乗り越してしまい、高崎を通過して上毛高原、燕三条にまで行ってしまったこともありました。高崎へ戻る上り新幹線の終電がなくなり、ホームが真っ暗で、不安で泣きそうになったことも……」と、顯眞さんは新幹線通塾時の思い出を語る。

乗り越して終電が終わってしまったときには、駅員や車掌に相談し、母親の伽尚子(かなこ)さんがネットでホテルを手配し、翌朝、鉄道警察が高崎駅まで送ってくれたこともあったという。

「新幹線の車内では、乗り物酔いをしてしまうため、書く勉強はできなかったので、浜学園のWeb講座で勉強しました。サピックスで習った内容を違う角度から復習することができて、記憶に残りました」と顯眞さん。サピックスのプリントは数が多く、似た内容が繰り返し出題されるので、理解したものは捨てて、最後の1ケ月間で社会と理科を総復習し、丸暗記したという。

通塾はおなかの中にいるときから開始

伽尚子さんは、顯眞さんがおなかにいるころから教育熱心だった。

「七田式教室の胎教コースに通いました。生まれてから5歳まではその教室に、5歳から小3までは幼児教室のヘーグルに通わせました。へーグルで右脳に刺激が入って、記憶容量が増えたからか、幼稚園の年長のときに円周率を500桁まで記憶できました」

七田式とヘーグルで右脳を刺激し、左脳教育としては年中から小2まで地元の学習塾に通い、小3から駿台・浜学園に。途中からWeb受講へと変更し、小4から、新幹線でサピックスに通い始めた。

徳島さん親子
合格証書を手に、喜ぶ徳島さん親子=2020年2月3日、東京都荒川区の開成中学、庄村敦子撮影

共働き家庭の徳島家。付きっきりにはできない分、伽尚子さんは、食事や睡眠環境などに工夫を凝らしたという。

「学校から駅まで送る10分間の車の中で、おにぎり、フルーツなど、脳のエネルギーになる軽食を食べさせました。帰宅時間が23時なので、睡眠の質が良くなるように、アロマセラピーを取り入れ、ディフューザーでラベンダーやオレンジの香りを拡散したり、マッサージをしてあげたり、照明の光量を調節したりして、眠りの環境を整えました」

お弁当には布製の手拭きをつけて、消毒作用や免疫賦活効果のあるとされるエッセンシャルオイルを1滴たらし、感染症対策にも気をつけたそうだ。

「息子は本当によく頑張ったと思います。『あなたは日本の小6で一番頑張っているじゃない!』など、いつもあえて超ポジティブ発言で励ましてきました」と伽尚子さんはほほ笑む。

目指すは東大理三

顯眞さんが開成を目指した理由は、「通学可能圏内で一番偏差値が高く、東大合格者数や高校生クイズで有名だから」だそう。サピックスのクラスメートはみんな仲がいい戦友で、一緒に開成を目指したという。「入学後も、話の合う友達がたくさんいそうで、楽しみです」

スキーが好きで、受験勉強中には運動ができなかったため、入学後は運動系の部活動に入りたいと楽しみにしている。

「父が内科医、母が鍼灸師のため、幼いころから洋の東西を超え、医学に触れてきました。ずっと医師になりたいと思っています」

目指すのは、ズバリ最難関の東大の理科三類の医学部だ。中1から、東大理三に多くの合格者を出している大学受験予備校・鉄緑会に通う予定だ。

顯眞さんからの、これから受験を迎える親子に向けたアドバイスを紹介する。

「僕の母は仕事が忙しくて、受験のサポートは年が明けた1月8日から。『受験は母親力』と言われることもありますが、甘えないで自分でも最大限の努力をし続けることが大事だと思います」

子どもを信じ、親はノータッチ派も

離島、新幹線通塾とレアなケースを紹介したが、「親はノータッチ」「塾にお任せ」と答えた親も少なくなかった。その一人、合格者Aさんの母親は、「私はお弁当作りをするだけで、すべて塾にお任せでした。私は結構心配してしまいましたが、塾と子どもを信じて、あまり心配しないでいいと思います」と話す。

Aさんが中学受験塾に通い始めたのは小3の2月。今回、アンケートに回答した合格者32人の中で、通塾開始の時期は小3からが14人と最も多く、小4からが11人で次いだ。

「幼稚園の年中から塾に通うまで、そろばんを習わせました。暗算力が鍛えられたと思います」という。

そろばんは今回の合格者に多かった習い事の一つで、32人中6人が経験しており、習い事トップ3に入っている。

「塾でしっかりと授業を受け、宿題はきちんとやっていました。ずっと塾にお任せでしたが、直前期には私がSiri(スマホの音声検索機能)になり、息子が調べたいことを代わりに調べました」と笑う。Aさんの今後の目標は、東大に入って、将来、宇宙飛行士になることだ。

今回、開成合格親子について、様々な切り口からシリーズで紹介してきた。彼らに共通するのは、東大入学なり、将来の夢なり、これから歩んで行く人生の目標が明確にあることで、保護者はそれを後押しする姿勢が定まっている印象を受けた。

これから中学受験を経験する親子には、これらの体験談を一例にして、各家庭の方針を定め、目標に向かって頑張ってほしい。

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