ゼロからわかる! 2020大学入試改革 おさえておきたいポイントを解説

学ぶ姿勢を入試で見る「主体性評価」とは? 活用法や公平性に問題ありとの指摘も

2020.03.27

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増谷 文生
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2020年度からの大学入試改革について、朝日新聞社会部で大学入試や教育問題を取材する増谷文生記者がポイントを解説します。(上の写真はリクルートのスタディサプリのサイト内にあるポートフォリオの画面。学習や部活など学校生活の活動を記録していくためのもの)

2020年度に始まる大学入試改革では、英語などの教科の話が多いですが、「主体的に学ぶ態度」も評価すると聞きました。「態度の評価」とは、どういうことでしょうか?

(増谷)「主体性評価」と呼ばれているものですね。
そもそもの話になりますが、文部科学省は高校卒業までに、(1)知識・技能、(2)思考力・判断力・表現力、(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度、を身につけるよう求めています。(1)と(2)はこれまでも、筆記試験が中心の各大学の一般入試で評価されてきました。しかし、文科省は大学入試改革の一環として、(3)の「主体性」も一般入試(20年度からは一般選抜と呼びます)でしっかり評価するよう各大学に求めています。

受験生のいろいろな力を測ろうということですか?

(増谷)その通りです。ただ、筆記試験で測ることが難しい力をどのような方法で評価するのか、必ずしも文科省の考えは定まっていません。具体的に評価する方法について、いくつかの問題点が指摘されてもいます。このため文科省は協力者会議を作り、「受験生の力を多面的に評価する方法」について意見交換を始めています。これは、英語4技能や記述式問題の入試への活用方法を主に検討している「大学入試のあり方に関する検討会議」とは別に設けられた会議です。

「主体性」「態度」を評価するというと、推薦入試やAO入試のイメージですが?

(増谷)小論文や面接、高校が作る紙の調査書などを見て合否を判断するには、時間や人手がかかります。このため、多くの大学は募集人数が少なく、日程に余裕がある推薦入試やAO入試などに限って活用していました。しかし、文科省は20年度からは一般選抜での主体性評価を求めています。

大学もかなりの負担になりますね。どうするのでしょう?

(増谷)大学の負担を軽くしようと考えられたのが、(1)調査書の電子化、(2)「eポートフォリオ」の活用、です。
eポートフォリオとは、生徒が自分の手で学校内外での活動実績などを記録し、蓄積するツール。そもそもは、生徒がスマートフォンなどを使って記録した日々の学習活動を振り返り、自分の成長を把握したり反省したりして次の学習につなげるためのものです。また、先生がデータを確認して、指導に生かすこともできます。ベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社が運営する「クラッシー」やリクルートの「スタディサプリ」などが、多くの高校で使われています。

文科省は、「主体性」を大学入試で評価する際にこのデータが使えると考え、関西学院大を中心とする9大学で作るグループに補助金を出して、入試で活用できる仕組みづくりを委託。そうして、「Japan e-Portfolio」(JeP=ジェップ)というシステムが作られました。学習活動のほか、「部活動」「ボランティア活動」「留学経験」「資格試験」などの実績を記入できます。
JePにはクラッシーやスタディサプリも参加しており、「入試で使えるなら」と導入する高校は増えています。すでに一部の大学は、JePを入試の合否判定に活用しています。

主体性評価スタディサプリ画面
リクルートのスタディサプリ内にあるポートフォリオのサービスの画面

どのくらいの大学が活用しているのですか?

(増谷)JePを運営する一般社団法人「教育情報管理機構」によると、今春の入試では神戸大や関西学院大、千葉商科大など7大学が一般入試に活用しています。
朝日新聞と河合塾の19年の共同大学調査「ひらく 日本の大学」によると、来春の一般選抜でeポートフォリオを「利用する」(一部の学部・学科も含む)と回答した大学は4%と、まだまだ少数でした。大量の情報を精査する労力や、記載内容に学校間格差が生じる不安などから、多くの大学が利用を尻込みしているようです。

大学は、どのように高校時代の活動の記録を評価するのですか?

(増谷)今春の入試でJePなどのeポートフォリオを合否判定に活用した千葉商科大の例を見てみましょう。
同大の総合評価型入試では、調査書とeポートフォリオが提出書類でした。その中にある部活動や資格試験の結果などを、40点満点で点数化して使いました。例えば、学力試験2科目の得点(満点は200点)との合計点(240点満点)といった形で合否を判定したのです。
ただ、eポートフォリオは調査書に書かれた内容を補足するために、希望者が提出する形です。入試担当者は「主体性や協調性、学ぶ意欲を持った学生に入学してほしいと願って始めた。(総合評価型入試の)志願者も、eポートフォリオの提出者も、年々増えています」と話しています。
一方、佐賀大では、筆記試験での合格ボーダーラインの受験生にしぼって、出願の際に提出させた高校時代の特色ある活動についての資料などをもとに評価し、合否を決めています。

高校側はどう思っているのでしょうか?

(増谷)「ひらく 日本の大学」で19年に高校にも意見を聞いたところ、「eポートフォリオに書かれた内容の確認」といった教員の負担が増える点や、「各大学がどのように活用するのかわからない」という点を心配する声が多く聞かれました。一方、学校外での活動が評価されることや、多様な観点で評価されることを期待する声が目立ちました。
また、国会では野党が、経済的格差が生じる内容を含む点を問題視しています。資格試験や留学などは、どの家庭の子どもも経験できるものではない、という指摘です。
JePを使うために、教員が生徒の個人情報を入力してベネッセコーポレーションにIDを発行してもらう必要がある、という点も批判があります。私企業に生徒の個人情報が収集、集積される仕組みについては、文科省が教育情報管理機構に改善を求めました。機構は来年4月にシステムを改善するとしています。

今後はどうなるのでしょう。

(増谷)文科省の協力者会議で、「主体性」をどのような方法で評価すればいいのか、議論が続きます。3月19日の会議では、PTAの代表から「不真面目な高校生は、友達の情報をコピーするのではないか」「大学入試で評価される情報を入力するために、自由な高校生活を送れない生徒がいるのではないか」といった意見も出されました。

議論の結果は、いつごろ、どのように生かされるのですか?

(増谷)文科省の担当者によると、会議の結論は、英語4技能や記述式問題と同じように、2024年度に実施される入試に生かす考えで、そのために今年のうちに結論を出したいとしています。国会などで問題にされているJePの取り扱いについても議論します。その結果次第では、各大学に対して、来春の入試では使わないように求める可能性もあるそうです。

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