2020年度 新学期特集

開成・柳沢校長が退任 4月から女子校の学園長に その転身理由とは?

2020.03.27

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柏木 友紀
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開成中学・高校の柳沢幸雄校長(72)が3月31日で同校を退任し、4月1日付で神奈川県鎌倉市の北鎌倉女子学園・学園長に就任する。同学園が24日、発表した。退任に合わせてEduA編集部は25日、柳沢校長にインタビューし、偏差値トップの男子校から女子校へ、都心から郊外へと、環境をがらりと変えた転身の理由や抱負などを聞いた。

自身も開成出身の柳沢校長が母校の校長に就任したのは2011年4月。東日本大震災直後で、同校は同年3月31日まで休校措置を取っていた。着任後、最初に手がけた仕事は学校を再開することだった。「開成での初仕事が学校再開で、最後の仕事が今回の新型コロナウイルスによる休校になった」と柳沢校長は感慨深げに話す。その後も巨大地震による津波被害に備えようと、一度は中止になった水泳学校を、避難訓練の要素を入れて復活させるなど、「危機管理対策」に力を注いできた。

「名物の激しい運動会もそうですが、リスクとのバランスを考えながら、学校行事や生活を通して子供たちが成長する機会を大事にしてきました」と柳沢校長。毎年5月の第2日曜日に開かれる運動会は、コロナ騒動で実施が危ぶまれる状況だが、生徒たちが自主運営や先輩後輩との交わりの中で大きく成長できるチャンスであることから、延期を含めて検討しているという。

開成運動会の様子。米「ニューヨーク・タイムズ」で「注意深く準備された荒々しいゲーム」という表題で紹介されたことも。(柳沢幸雄校長提供)
開成運動会の様子。米「ニューヨーク・タイムズ」で「注意深く準備された荒々しいゲーム」という表題で紹介されたことも。(柳沢幸雄校長提供)

9年間の在任中には、開成で学びたいけれども経済的理由で断念せざるを得ない受験生向けに奨学金制度「開成会 道灌山奨学金」を設けた。また高校卒業後に直接海外の大学を目指す生徒たちに対し、海外の有名大学からOBや入試担当者を招いて模擬授業や学校説明会、個別相談などを行う「カレッジフェア」も始めた。2019年には13人が米コーネル大や英ロンドン大などに合格、5人が進学している。

学習や子育てに関する著作も多く、教育界のご意見番としても広く知られた存在だ。近著の「男の子の『自己肯定感』を高める育て方」では、日本の高校生は世界一の能力を持つが、これから自己肯定感の高い他の国々の人々と肩を並べていくには、思春期の保護者の接し方に工夫が必要であることなどを述べている。

中高時代は、男女別学がベター

今回、退任を決めた理由については、「そもそも組織は8年ぐらいでトップが入れ替わるのがいい。アメリカの大統領の任期が2期8年と決まっていることもその表れ」と話す。

転身を決意させた一番の要因はなにか。

「生徒の素質を花開かせようとする私自身の教育法が、開成以外でも適応可能かどうかみてみたいという気持ちがありました。それが男子でも女子でも構いません。今回、縁あって女子校で教えることになりますが、私は中高時代というのは、男女別学がよいと思っています。

男女は大人になった後、社会学的に見れば違いはない。しかし生物学的には違います。身体的な成長の速さが異なる中高時代に、それぞれが最大限能力を発揮するには、別学で学ぶのがよい。そして、身体的・精神的な成長が完成した大学以降は、共に学ぶというのがよいと思っています」

教育とは、繭玉から絹糸を引き出すがごとし

新たに学園長に就任する北鎌倉女子学園は、今年創立80年を迎える中高一貫の女子校だ(高校からの募集も実施)。今後は教諭陣や保護者らへのアドバイザーを務めるほか、カリキュラムの構築やイベント、新しい教育体制の整備なども手がける予定という。同学園の広井修教頭は「本校は現在、ICTを活用したモデル校に選ばれるなど改革の真っ最中です。経験豊富でグローバルな視野をお持ちの柳沢先生に、新たな視点からアドバイスいただけることで大きく飛躍できると思っています。日々の授業にもどんどん入って来ていただきたい」と期待を込める。

柳沢校長いわく、教育とは、一定の型にはめることではなく、蚕の繭玉から糸を引き出すことであるというのが持論。引き出すのが遅すぎると糸はこんがらがってしまい、逆に早すぎると糸が切れてしまうが、適切な時に引っ張り出すと美しい絹糸になる、というわけだ。

北鎌倉女子学園でも開成の時と同じように適切なタイミング、やり方で生徒たちに接していきたいという。生徒たちが自らの好きなこと、得意なことに積極的になれば、勉学との向き合い方も変わってくると信じている。

「たとえ科目によって苦手意識があっても、勉強そのものすべてが嫌いという子は少ない。得意なことをいかに伸ばすか、いかに自信をつけてあげられるかにチャレンジしていきたい。その結果、好きなことを人生の軸にして、社会に貢献してくれたらいい」と話す。まさに「開成」の校名の語源ともなった中国の古典「易経」にある、「素質を開花させ(開物)、人としての務めを果たす(成務)」の精神である。

今後、教育界で取り組みたい課題としては、グローバル時代にますます多くなる海外で学んだ子どもたちの受け入れ態勢を充実させることを挙げる。柳沢校長自身も米ハーバード大の教員を終えて帰国した際、2人の息子の受け入れ先に戸惑い、現在学齢期の孫たちも同じような状況にあるという。帰国生やその保護者が最も心配する、異文化で育ったことによる疎外感やいじめなどを考慮すると、帰国生用のクラスや入試の機会を増やす必要があると感じている。

なお、後任の開成中学・高校の校長には、やはり開成OBで名古屋大学国際機構・国際教育交流センターの副センター長、野水勉氏が就任する。

 

話を伺った人

柳沢 幸雄

開成中学校・高等学校校長

(やなぎさわ・ゆきお) 東大名誉教授。ハーバード大大学院准教授・併任教授などを務める。研究テーマは、空気汚染と健康の関係。2011年度から現職。1947年生まれ。開成高校、東京大学工学部卒業。豊島区で育つ。趣味はゴルフ。

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