新しい教育のカタチを考える

日々の買い物でSDGs学習 環境・社会貢献への意識を育む「エシカル消費」とは

2020.03.30

author
佐藤智
Main Image

近年、学校ではSDGsに関する学習が広がってきています。なかでも、「エシカル消費」はSDGsの達成に向けた身近で手軽な活動であり、子どもが興味・関心を持ちやすいテーマ。今回は、一般社団法人エシカル協会代表理事・末吉里花さんに、エシカルな考え方の重要性や子どもへの伝え方、家庭でできる実践方法などを聞きました。

話を伺った人

末吉里花さん

一般社団法人エシカル協会代表理事

(すえよし・りか)
慶應義塾大学総合政策学部卒業。日本ユネスコ国内委員会広報大使。TBS系「日立 世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして、世界各地を旅した経験を持つ。日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し、講演を行っている。著書に、「じゅんびはいいかい?〜名もなきこざるとエシカルな冒険〜」「はじめてのエシカル」(以上、山川出版社)などがある。

エシカル消費は誰もが気軽に始められる社会貢献

――現在、学校でも企業でもSDGsが注目されています。SDGsの達成にもつながる、「エシカル」な考え方について教えてください。

エシカルとは、英語で「倫理的な」という意味で、法律の縛りがなくとも多くの人が正しいと思うこと、または、本来人間が持つ良心から発生した社会的規範を指します。そこから派生して、現在では「人や社会、地域、地球環境に配慮した考え方や行動」という意味でも使われています。

中でも、協会が普及に取り組んでいるのが「エシカル消費」です。私たちは日々、食料や衣服など何かしら消費して生きています。その消費の裏側では、環境破壊や貧困、人権侵害、児童労働など、さまざまな問題が発生しています。

こうした問題の解決に貢献するため、日々の買い物の中で、生産者の生活や自然環境などに配慮した製品を選ぶことが、エシカル消費です。

――なぜ、協会では「エシカル消費」に着目したのでしょうか?

さまざまな問題が発生している現代社会では、多くの人が「世の中のために何かしたい」という思いを持っています。しかし、いざ社会貢献をしようと思っても、何をすればいいのか分からず、なかなか一歩踏み出せずにいる人も少なくありません。

そんな人でも始めやすいのが、エシカル消費なのです。日々の買い物を見直し、エシカルな製品選びを少し意識してみる。個人単位では些細なことかもしれませんが、学校や企業、地域が一丸となって取り組めば、大きな社会貢献になります。

日々の買い物からSDGs達成へ 子どもの環境・社会貢献への意識を育む「エシカル消費」とは?

また、エシカル消費はSDGsで掲げるさまざまな目標と関連しています。例えば、フェアトレードの製品を買うことは、主に下記の目標に貢献します。

・目標1「貧困をなくそう」…不当な取引や搾取の禁止、および、原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、生産者や労働者の生活改善と自立を支援する

・目標4「質の高い教育をみんなに」…児童労働の禁止、および、児童労働の原因となる貧困を防ぐために、生産者が正当な対価を得られる取引をすることで、子どもが教育に専念できる環境をつくる

・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」…伝統工芸品などの取引を通じ、貧困や差別により、教育が受けられず、仕事に就けない女性の雇用を生み出し、女性の自立や地位向上を図る

・目標12「つくる責任 つかう責任」…有機栽培や低農薬栽培など環境や人体への負荷が少ない生産方法の原料や製品を選ぶことで、持続可能な生産・消費を目指す

――エシカル消費は誰もが気軽に始められる社会貢献なんですね。協会では、エシカル消費についての講演を行っていますが、教育機関での講演は増えているのでしょうか?

そうですね。特に近年では、エシカル消費とSDGsをひもづけた講演の依頼が増えてきています。学校でSDGsを教えようとしても、範囲が広すぎて実践にまで結びつかないことが多いようです。ですので、具体的なアクションとしてエシカル消費を紹介しています。

加えて、新学習指導要領でも、「持続可能な社会の創り手」の育成を目指すことが明示されています。授業では家庭科を中心としつつ、社会科、国語科、英語科など、教科横断的に「持続可能な社会づくりを考える視点」を学んでいきます。

学校教育が変われば、大人が子どもから学ぶことも多くなるでしょう。そして、子どもたちが学びのその先にある実践に移していける社会を、私たち大人はつくっていかなければいけません。

エシカル消費の第一歩は、「モノの背景」を想像すること

――子どもにエシカル消費について教える際には、どんな風に伝えればいいのでしょうか?

エシカル消費の第一歩は、「自分たちが使っているモノの背景」を想像すること。

私たちが小学校で講演をする際には、「今、みんなが着ている服は誰が作っているか知っている?」とまず問いかけます。そうすると、タグを見ながら「メイド・イン・チャイナって書いてある!」などと教えてくれます。

次に、「じゃあ、原材料の綿(コットン)はどこで作られているか知っている?」と尋ねると、大半の子どもたちは答えに詰まります。

多くの場合、綿の生産は発展途上国の過酷な労働環境の中で行われています。特にインドでは、約48万人もの子どもたちが働かされており、そのうちの7〜8割が女の子と言われています。また、農薬の影響で労働者が病気になったり、土地が痩せて収穫量が減少したりと、人にも環境にも被害が及ぶ悪循環も発生しています。

こういったことを話すと、子どもたちはすごく驚き、身の回りにあるモノの背景に何があるのかを考え始めます。

――お店では当たり前に完成したモノが置かれているので、誰が・どこで・どうやって作ったのか想像しにくいのかもしれません。

そうですね。実際にモノの背景に関心を持った子どもたちの中には、「問題を引き起こす製品を使いたくない」と声を上げる子もいます。

そうした声を受け、売店に生産の背景がわかる製品を置き始めた学校や、卒業証書の紙を環境に優しいバナナペーパーに切り替えた学校もあります。

何も意識せずに購入し続ければ、知らぬ間に社会問題に加担してしまうことになる。それは、悲しいですよね。特に未来を生きる子どもたちにとって、資源や環境の問題は避けられません。世界の問題と自分たちの生活がつながっていることを知った子どもたちは、続々とアクションを起こしています。

日々の買い物からSDGs達成へ 子どもの環境・社会貢献への意識を育む「エシカル消費」とは?

小さな行動の積み重ねが、地域と社会を変える

――家庭でエシカル消費を実践する際には、どのようなことができるでしょうか?

まずは日々の暮らしでどんなものを消費しているか、子どもと一緒に振り返ってみましょう。例えばチョコレートを買う機会が多ければ、エシカルなチョコレートに替えてみる。全部を替えるのが難しい場合は週に1回だけにするなど、ルールを決めてみてもいいと思います。

オーガニックやフェアトレードなどエシカルな製品の目印として、認証ラベルがあります。子どもにエシカルな製品を教える際には、スーパーで認証ラベルが付いた商品を探してみると良いでしょう。

エシカルな製品の認証ラベルの例
エシカルな製品の認証ラベルの例

北欧は日本と比べると、20〜25年エシカル消費が進んでいると言われ、ほとんどの製品にこの認証ラベルが付いています。認証ラベルは、第三者機関が製品をきちんとチェックしている証拠です。そのため、「取得した方が安全性を担保でき、リスクヘッジになる」と考えるメーカーが多いのです。

日本でも、認証ラベルが付いていない製品と値段が変わらない認証ラベル付きの製品が増えています。どちらを買おうか悩んだら、認証ラベルがある方にしてみるという小さな変化からエシカルの活動を始めてみてください。

ただし、認証のプロセスを行うのも人間ですので、エラーが起こらないとも限りません。大切なのは、認証ラベルを通じて、私たち一人ひとりがモノの背景を意識することです。

――認証ラベルが付いた商品が見つからない場合、どうしたらいいでしょう?

これは重要なアクションなのですが、お店の人に「このスーパーではフェアトレードのコーヒーやチョコレートは置いていないのですか? 私はできれば環境や生産者に配慮した安全性の高い製品を買いたいです」と伝えてみてほしいです。

企業は消費者の声には耳を傾けます。なぜなら、消費者のニーズを満たす製品を販売しないと、商売が成り立たないからです。大手スーパーのイオンはエシカル活動のリーディングカンパニーとも言えますが、実は「フェアトレードを活用して、イオンの店舗をより多くの人が気軽に社会貢献に参加できる場にしてもらえませんか?」というたった一人の主婦の声から取り組みが始まりました。

子どもも大人も一緒になって、“ボイコット”ならぬ、地球や人に優しい商品を選択し応援していく“バイコット”をする。自分にできる小さな行動の積み重ねが、地域と社会を変えていくことを知ってもらえるといいですね。

(撮影:辰根東醐 編集:野阪拓海/ノオト)

新着記事