発達凸凹の子の中学受験

灘を辞退して、公立中高一貫校に決めた我が家の理由 お金だけではない背景

2020.03.31

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なないお
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発達障害がある子や「グレーゾーン」と言われる子の中には、中学受験を目指す子もいます。今年1月、自閉症スペクトラムの息子が兵庫県の名門・灘中学校に合格したものの、結果として地元の公立中高一貫校への進学を決めたブロガーのなないおさんが、我が子の中学受験を振り返ります。

「灘合格したーーーーー!!!嬉しいーーーーー!!!」。SNSでうっかり息子の中学受験の結果をつぶやいて思わぬ注目を集めてしまったことから始まり、こちらに連載をさせていただくことになりました。

灘中学に合格するお子さんはたくさんいらっしゃいますが、プチ炎上になってしまったのは、「合格したー!」に続けて、「数学が好きな子で、行かせてやりたかったけども行かせてやれない、情けない」、と私がつぶやいてしまったからでした。「行かせられないのになんで受験したの」って疑問に思う方は、そりゃ多くいらっしゃると思います。そしてありがたいことに「お金の面で通えないのであれば、支援する」とお申し出くださった方々もいらっしゃいました。大変心苦しいですが、灘中学に通えない理由はお金の面だけではなかったので、事情を説明し辞退させていただきました。

私は新中学3年生の娘と、新中学1年生の息子を育てるシングルマザーです。子供たちは2人とも発達障害と呼ばれる特徴を持っています。息子は6年間ずっと小学校の特別支援学級に在籍していました。

発達障害を持つお子さんの中学受験を考えていらっしゃる方も多く、体験談の一つとして書かせていただければと思っております。発達障害を持っているから中学受験をしたほうがいいという話ではありません。あくまでも我が家の選択の話です。

塾の特待生 条件は「灘中受験」

さて、タイトルにありますように、息子は灘中学を受験し合格したわけですが、実際に通うのは地元の公立中高一貫校です。ここも受験して合格いたしました。 

実は娘も受験して同じ公立中高一貫校に通っております。

我が家は母子家庭で経済的に余裕がなく、娘は通塾せず季節講習と家庭学習で受験しました。ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持ち、集中力がなく気が散りやすい娘に、家で受験勉強をさせるのは至難の業で、最終的には親子関係が非常にこじれて自ら児童相談所に駆け込む始末となってしまいました(現在は相談は終了しております)。

低学年の頃、子供たちを塾の体験授業や無料のテストなどによく連れて行ったのですが、その中で気に入っていたある中学受験塾が特待制度をやっていると聞きました。娘は特待生になるほどの成績ではなかったのですが、全国テストなどで好成績をあげていた息子の方はいけるかもしれない。これはチャンス!

合格証明書
灘中は合格通知がなく、受験者全員に点数が開示される。後ろは開成中の合格証明書(写真は加工しています)

塾内の成績次第ということでしたので、あまり受講費が高くない3年生から入塾し、灘中模試や塾テストで好成績をあげ、無事特待生となりました。特待を受ける条件として灘中学校を受験することになっていました。

本来なら、我が家にとっては、授業料がお高い中学受験塾も私立中学も高嶺(たかね)の花です。最初から公立中高一貫校が第一志望でした。

それでも算数オリンピックにずっと挑戦していた息子にとっては、歴代の覇者もたくさん通っている灘中学は憧れの学校です。数学研究部に入りたかったようです。

特待の条件と息子も了承していたのですが、親としては合格したらなんとかして通わせてやる方法はないか道を探っていました。

問題はお金の面と遠距離を通う体力。我が家は兵庫県ではありませんので、新幹線通学になってしまいます。私立中学の学費すら厳しいうちにとっては、新幹線代も含めると灘中に通う費用は天文学的金額でした。

そこで学ぶための費用を出してくれる育英財団に申し込み、2次審査の面接まで進みました。結局面接で落ちてしまったのですが、どうも息子自身があまり乗り気ではないようでした。

灘中学に入って数学研究部で学びたい気持ちはある、でも6年間早朝から新幹線で通う体力があるのか自信もない。息子は自閉症スペクトラムを持っていて、とても過敏で疲れやすいタイプなのです。

奨学金はプレッシャーに

もう一点、息子が乗り気でなかった理由がありました。

息子は小さい頃から物をねだることが一切ない子供でした。おもちゃ屋に連れて行って「好きなものを買っていいよ」と言っても、「何もいらない」と言う子でした。

お金にもこだわりがあり、コレクションがお金です。お小遣いもずっとため込んでいます。特待制度のこともそうでしたが、何かお金をかけてもらうということは、それに見合ったリターンがあるべきと考える子です。返済不要の奨学金は払う方になんのメリットがあるのか、それに見合った成果を自分が出せるのか、とぐるぐる考えてプレッシャーとなっていたようでした。

灘中学の学園祭にお邪魔しましたが、自由な校風の中で生徒さんも生き生きとしていらっしゃって本当に素晴らしい学校だと思いました。無理をしてでも通う価値のある学校だということはもちろんわかっています。でも、息子の体力の問題とお金の面でのプレッシャーを考えると、下手をすれば本人をつぶしかねない。そう判断しました。

息子はいわゆる受動型と呼ばれるおとなしいタイプの自閉症スペクトラムで、無理をさせすぎるとうつ病など二次的な精神障害のリスクが高いと言われています。発達障害児を育てる上で、極力避けたいのがこの二次障害です。発達障害自体は生まれつきの特徴なので、不便はあっても良い悪いというものではありません。でも二次障害は起きてしまえば病気として長く付き合っていかなくてはなりません。人間関係や様々な環境の問題で起こりうるので、親の努力だけで避け切れるものではないですが、調整可能なものは避けていきたいと思っています。

塾に通いながら中学受験をするにあたっても、一番注意してきたのは無理をさせすぎないことでした。本人の調子を見ながらの調整に終始していたように思います。

小学校の卒業式で
小学校の卒業式で

上記の理由から、我が家はせっかく合格した灘中学も、ありがたいご支援のお申し出も辞退させていただきました。

息子が通う公立中高一貫校は、既に娘が通っており、学校の中のことは知っています。

娘が入学する時から障害を持つことについて相談していたのですが、学校側にご理解があり、驚くほど手厚くサポートしてくださっています。学力の面でも超難関というほどではないにしろ、地元では一、二を争う人気の難関校です。息子も何度か見学し、気に入っています。

小学校ではいわゆる「浮きこぼれ」だった息子ですが、この学校なら楽しく学べるのではないかと期待しています。

塾でも息子の障害についてはよくご理解いただいて、手厚くサポートしてくださいました。学ぶスピードや難易度が息子に合っていて、授業がとても楽しかったようです。小学校は行き渋ることも多かったのですが、塾に行き渋ることはほとんどありませんでした。学校と違って行事やイレギュラーなことも少なく、落ち着いて勉強していればいい環境は息子に合っていた様子です。受験である程度選抜された環境なら、中学校もこれに近い環境になるかと思います。

私の住む地域は中学入試がシーズンの早くから始まり、最初から最後まで2カ月以上続きます。

特待生で無料で塾に通わせていただいたということもあり、薦められた受験先を断りにくく、結局7校も受験しました。東京の開成中学も含め全て無事合格をいただきました。

もちろん息子本人が頑張ってきた成果ですが、中学受験は親子並走の長い長い戦いです。

発達障害の特性を持ちながら、我が家がどのように中学受験や子供の学習に向き合ってきたか、これから数回にわたってお届けする予定です。どうぞお付き合いくださいませ。

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