変わる英語教育 能力を伸ばすコツ

キリンの色、ほんとは…伝えたいから話したい 小学校の英語教育は「感性と知性に訴える」

2020.04.09

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EduA編集部
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小学校の英語は、単に中学校英語の先取りではありません。
幼稚園児から大学院生までの各課程で指導経験を持つ昭和女子大付属昭和小学校の小泉清裕前校長は、小学生の英語力を伸ばすコツは「感性と知性に訴えること」と「聞くこと」だといいます。

国旗や特産品を話題に……英語なのにまるで社会科

付属昭和小学校の6年生の授業。小泉先生はさまざまな国旗について、次々とクイズを出していきます。葉っぱの形をした赤い紙を取り出して赤白の色紙の中心に貼りました。でも、上下が逆。教室のあちこちから「Upside down! (逆さまだよ)」と笑い声が上がります。「これはなに? うちわ?」「カナダの特産品は?」。先生が英語で問いかけると、「メープルリーフ」「メープルシロップ」と子どもたち。そこで、先生がかばんからメープルシロップの瓶を取り出すと「わぁ」と声が上がりました。

 児童手元
メープルシロップについての質問に英語で答えを書く児童ら

「世界の生産量の85%がカナダ産なんです」。先生の説明を子どもたちは興味深そうに聞いています。やり取りこそ全て英語ですが、内容はまるで社会科の授業のようです。どんな狙いが
あるのでしょうか。小泉先生に聞きました。

「伝えたい」から話したくなる 反復より中身が大切

小学校で英語を教え始めた二十数年前、中学校で学ぶ文章を覚えさせようとしたところ、最初は興味を示していた子どもたちが次第に離れていきました。「How old are you?」という表現を繰り返し覚えさせても、子どもたちは楽しくありませんし、使いたいと思いません。

なぜなら、同級生の年齢を知りたいなんて思っていないから。これではコミュニケーション能力は育ちません。

私はこれまでの英語指導のノウハウを捨て、小学校の全教科書を読み直しました。子どもたちは興味のある内容であれば耳を傾けます。ただ、授業は多くの子を同時に教えるので「みんなが知っている話題」という点も重要です。そこで、他の教科や学びと連動して学ぶメリットに気づいたのです。

 小泉たち

キリンの色は?

例えば、小学生は学校の遠足で動物園に行きますよね。私が授業で「What color is a giraff e?(キリンって何色?)」と聞くと、子どもたちは「Yellow and brown.」と答えます。「でも、キリンに黄色の部分ってないよ」というと、「えー!」とびっくりします。絵本のキリンは全部、黄色に塗られていますが、写真で答え合わせをすると実物は白地に茶色の模様ですね。子どもたちは「へーっ」と目を輝かせます。思わず人に伝えたくなります。小学校の学びを活用して感性と知性に訴えると、子どもに深い印象を与え、同時に英語も身につきます。

3年生で学ぶ地図記号を使うこともあります。郵便局のマークを見せて「What is this mark?」と聞くと、子どもたちは「Post office.」と答えます。消防署はfire stationだと知ると、「だから消防士をfire fighterというんだね!」と気づく子が現れます。自分の生活とつながっていきますし、教える先生も英語で表現しやすい。

まずはたくさん「聞くこと」が重要

これからの小学校の英語教育は、踊ったり歌ったりして「英語を楽しく教える」ことよりも、いかに英語で話す内容を面白く、子どもの身近なものにするかが重要です。

「聞く」「話す」「読む」「書く」という英語の4技能の中で、小学生にとって最も重要なのが「聞くこと」です。

赤ちゃんは文字を読めませんが、突然、言葉を発するようになります。コップに水を注いでいき、いずれあふれ出るのと同様に、言葉を聞いているうちに自然に話すようになります。

逆に、聞いたことがない言葉は話せません。心に届く言葉をたくさん聞くこと。それが自発的に「話す」ことにつながっていきます。

話す言葉は別に文章形式でなくてもいいんです。尋ねられたことに、単純な形で答えることが原点です。「Which do you like better, cake or ice cream? (ケーキとアイス、どっちが好き?)」と聞かれて、普通の人は「I like cake rather than ice cream.(私はアイスよりもケーキが好きです)」とは答えませんよね。単に「Cake.」というはずです。

わざわざ回りくどい表現で答える必要はありません。質問に対して最初は簡単な単語で答える。これも、赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じプロセスですし、言葉として自然な形です。

保護者向けアドバイス

話を伺った人

小泉清裕さん

(こいずみ・きよひろ)
日本私立小学校連合会会長。昭和女子大大学院特任教授。専門は英語教育。付属昭和小で教頭、副校長、校長を歴任。付属幼稚園園長、付属こども園統括園長も兼任した。

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